第44話『治水のこと』

 大雨がくると、どうしても堤防が決壊してしまう川がありました。
王様が多額の懸賞金をかけて、多くの工人がこの川の治水に当たりましたが、なかなかうまくいくことはありませんでした。
 治水がうまくいかない理由は、その時々様々で、人々はいっそこの場所が呪われているということなら、諦めもつくのにとまで考える様になりました。
 事実、様々な方法で祈りが捧げられもし、この土地が水難から救われる様にと誰もが懸命に当たりましたが、結局は解決を見ませんでした。
 多くの王の時代を経て、この土地で起こったことも、記録されたり忘れられたりしていきましたが、本当の原因が突き止められたのは、ずっと後になってのことです。
 ひとりの占い師が、偶然この川の治水がうまくいかない理由が、この場所で作られている作物が売られていく先の運命に影響していることを発見しました。
 その街で、食物に関わる凶の兆しが出れば、川が氾濫して作物の収穫に影響し、吉の兆しがあれば何事もおきません。
 離れた場所との出来事の関係のため、これが原因だと断言する人はこれまで居なかったのですが、占い師はこれの他に原因は無いと王に進言し、作物を別の場所に運ぶ様にしたところ、川の氾濫はぴたりとやんだということです。

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