第42話『特別な油』

 ある時期に収穫された松笠で作られた油に、更に手を加えて作られる、不思議な緑色の炎を出す油がありました。
 その油は非常に粘りがあり、容器を縦にしても横にしても器の半分を縦に割る形で収まる、不思議な性質を持っています。
 この油の炎には様々な効果があり、一度灯せばとても長い間燃えて、光を放ち続けます。
 高台にしかけておいても、不思議と遠くからその光が見えることはありません。そのため戦場で重宝されていたこともあります。
 なぜか鳥避けに使えることがわかっていますが、同時に虫も寄せ付けないため蜂などが居た方が良い作物を作る時には使わない方が良いとされていました。
 海底にしかけておいても火は消えることがなく、そこに多くのサザエやアワビが集まってきて豊漁にはなるものの、気をつけないと根こそぎ採り尽くしてしまうことにもなるので、漁師たちも好んで使うことはしませんでした。
 何に使ってもこんな調子で、はっきりと面倒なことがついてまわり、あまりに普通の使い方ができない上に、作り方も難し過ぎるので、この油の製法はすっかり失われてしまいました。
 ある時、未使用の油が発見され、一時期イギリスの大学や研究機関でこの油の研究が進められましたが、結局はなにもわからないまま、研究も取りやめとなった様です。

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