ラストマイルネタバレあり感想

評判が良かったのでアンナチュラルとMIU404を観てから観に行きました。

映像作品をあまり観る習慣がないのですが、ベルトコンベアとランニングマシンを重ねる演出のような、象徴的なシーンの使い方がとても丁寧で勉強になりました。また、ドラマでは連作短編的な物語の作りだったのが、映画では緩急をつけつつノンストップで物語が進む作り方がされているのも面白かったです。法則を見つけて緩み、例外を見つけて緊張し、あっという間でした。

ドラマシリーズの人物が不自然に出たら興ざめだと思っていたものの、捜査や解剖、病院での患者についての証言など、物語に必要なパートを前作メンバーで埋めていた形で、自然な絡み兼ファンサービスで良かったです。
ただ、備品が足りないとあたふたするくだりは、普通なら最後の一箱空けたタイミングで発注するだろうから足りなくはならないだろう!という気持ちにはなったけど、そういうこともあるよね。人間だから。

歯車に過ぎない人間がシステムに反抗する物語なわけですが、結局人間は歯車に過ぎないわけで、システムに反抗せず見て見ぬふりをすることが悪だとは自分は思わないです。ひっそりと逃げて自分の身を守ることが唯一できることで、歯車に立ち向かうことを要求するのは無理難題がすぎる。なので、どんな過去があろうと、エレナも五十嵐も運送会社の社長も消費者も、誰も悪くないと思います。そこに一人で立ち向かおうとした筧は凄まじい行動力の持ち主だけれど、賞賛できる行動ではない。

強感情が好きなので、恋人の死の原因を取り除くため、もしくは意志を継ぐために行動した筧には好感を持ってもいいはずなのですが、あまりそうはなりませんでした。それはおそらく、彼女が死を選んだからだと思います。罪を贖うためなんでしょうが、植物状態の恋人を置いていくことや、最後まで事件を見届けなかったこと、最初で最後の自分の言い分を世界に発信できる機会を逃したことが引っかかる。あまりに大きな復讐で一人の歯車では抱えきれず、筧も崩れたということなのでしょう。

そんな歯車な人間でも、その仕事が無価値なわけではない。それを示したのが元洗濯機メーカー社員の亘だと思います。頑丈で耐熱性に優れた洗濯機。それはもちろん亘一人が作ったものではないけれど、歯車として関わっていたのは確かで、最後に用途とは違うけれど人命を救った。それはとても美しいことだと思います。一人の人間が世界を救うのは非現実的だけど、一人が関わった仕事が誰かを笑顔にするのは、とても現実的で希望のある話だと思います。

配信された映画を観る時はながら見になってしまい、内容があまり頭に入らないのですが、言葉はなく映像のみのシーンや爆発を劇場でじっくり見ることができてよかったです。

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