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鴉のクー

小学生の頃、帰り道、


駐車場に、不自然なビニール袋がポツンと放置されていた。

近付くと、モゴモゴと動いている。


気になって袋を破くと、真っ赤な血が流れてきた。




中にいたのは。




1羽の鴉だった。


彼は血を流しクチバシを針金で巻かれ、羽根をむしられていた。


荒く息をしており、もう長くもたない。と思った。


友人「…どうする?」

僕「…助けよう」


持ち帰り、近所の人に助けを求め、看病した。


名前は「クー」と名付けた。


針金を外し、血を拭き包帯を巻き、

木に紐を付けて足に繋いだ。


クーは怯えていた。


震える姿が、とても悲しかった。

ご飯も食べなかった。


人間が、彼を傷付けた。


それが、申し訳なくて。凄く悲しかった。


毎日クーの元へ通い続けた。


やがて掌に乗せたご飯を食べてくれるようになり、

腕に乗って懐いた。

なんて可愛いことか。


包帯が取れた頃、別れの日が来た。


空へ放すとき、

何故か、向こう側の家の屋根の上に、

30羽は超えるだろう鴉達が、

ギャアギャアと、けたたましく鳴いていた。


迎えに来た仲間達と一緒になったクーは、

遠くの空へ、飛び立って行った。

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