12-コミュニケーションのデザイン(構造編)。大人数の場合。
ワークショップ当日をどれだけ豊かにバリエーションを持ったふくらみのあるコミュニケーションするか、といった構造デザインの話をしたい。特に数時間〜1日のワークショップの場合は、作り込みの密度をかなり高めなければならないため、バリエーションを持って考えることが求められる。今回のコラムはそんなプログラムの流れを作り出す話題。
・3つの構成要素
ワークショップには流れが重要だ。一番の狙いに向けて階段をのぼるよう段階的に構成し、頂きに到達すれば終わりに向かって徐々に降りていく。そんな流れを作るためにも「グループのカタチ」「言葉の方向」「行動のカタチ」の3要素の組み合わせから、飽きのこない時間を作る。同じようなワークショップでも3つの構成要素を意識するかしないかで、コミュニケーションのバリエーションは大きく変わる。「ワークショップに参加したのに、同じ島(テーブル)の人だけとしか喋らなかった」なんてことがない工夫が求められる。今回はnoteでも過去に紹介している事例をベースに「大人数」「少人数」の2パターンを解説するようなカタチで進めていきたい。
・大人数ワークショップの場合
例)ふじのくに文化情報フォーラム2019「創造思考のイロハを学ぶ」
参加者数80人。最初に講演で「地域の課題との特性を掛け合わせながらアイデアをいかに生み出し、実行するか」というテーマを喋り、後ほど「参加者の悩みを地域の名所と掛け合わせて、いかに”こじつけて遊ぶか”(珍解決するか)」という追体験のワークショップを行なった。演劇を用いたワークショップを経てグループ発表を行う。講演も交えての5時間をいかに間延びさせず、集中力も維持し、学びも持ち帰ってもらう一方、参加者同士で交流がちゃんと生まれるかが問われた。
開演前(プチ・チェックイン)
簡単なアイスブレイクを実施したもの。まだ開演前なので「仲間あつめ」というゲームでキーワードに合うもの同士、緩やかにグループを組んで、自己紹介しあう、というもの。参加の是非は任意。
レクチャー
講師の話を一方通行できくことは長丁場の場合は、行動のカタチが伴わないため、参加者にとってかなり負荷が高い。しかし、マインドセットにもなるため、しっかりと伝えるべきは伝えないといけないのが難しいところ。この時は登壇者二人でやり取りし合うことで、一方通行の印象をいかに薄くするかにこだわった。
チェックイン
これからワークに入るので、ちょっと体を動かす意味も込めて「悩み」を書き、くしゃくしゃにして箱に入れる(悩みを忘れるために捨てよう、という発言で促し、実は後でそれを使うという仕掛け)。
アイスブレイク
「歩く&「止まる」「ステータス」ゲームともに自由に歩き、偶発的にグループを組み自己紹介し合うもの(内容は割愛)。歩いて喋る、という簡単なアクション&コミュニケーションを行なった後は、身体をよりほぐすため、即興的に複数人でテーマに応じたカタチを作る、という演劇的要素を強めたワークを。グループで一つのことを手がける、というこれからの演劇的発表への布石。
アクティビティ前のプチチェックイン
アイスブレイクでかなり身体と声を使ったので、長丁場を考慮し、一旦休憩してクールダウンを狙う。仕切り直しで再度のチェックインとして、全員にこれからの時間の狙いを伝え直し、改めてのマインドセット。
※ここまでは偶発性の高いグループ編成によって多くの人と交流することと、勢いで声と身体を使うことを目的としていた。ここからは少し頭をじっくり使いつつ、前半の勢いの余韻で身体も付いてくる、という時間にすることが狙い。
アクティビティ①
自分の意思で興味のあるグループリーダーを選び、グループになった後、少しのアイスブレイクを経て、演劇的グループ発表のためのディスカッション。時間が限られている中でミーティングやテストプレイなどを経ながら各チームのやり方で進めてもらう。休憩までの時間では、”話し合って決める”というワークは一切しないことで、”話し合い”という体験を鮮度を保って挑めた点がツボと言えばツボ。
アクティビティ②
グループワークで練ったものを全員の前で演劇として発表する。ワークショップの山場といえば山場であるのだが、ここに至るまでの今までの工夫の数々だったため、流れに乗った状態でいけるので、実は下山的山場。ただしグループの発表をそのままやり続けると間延びしていくため、1グループの発表が終わるたびに、”どこに着目してこの発表のカタチになったか”といった解説をファシリテーターが挟むことで”発表を観ているだけ”という他参加者の意識を”気づき”や”学び”に変換させ、メリハリをつける。
チェックアウト
下山の下山。改めて今日の狙いを棚卸しし、それに応じたいろんな手法を実体験してきたがどうだったか、という問いかけをしてグループごとに感想を述べあい、それを全体で共有する。その発言も一つ一つ解説をつけながら普遍的な学びや気づきに変換させつつ、最後はいわゆる全体に講師としてメッセージを投げて、場を閉じる。
・まとめ
大人数でのワークショップの場合は、組み合わせが多用にできるので、いかにテンポよくバラエティに富んだ組み合わせからグルーヴを作っていくか、というのがポイントになる。それに加えて、発散と収束、インプットアウトプットというような対照的な要素を混ぜないよう、繰り返しながら徐々に大きくして山場を目指し、後は徐々に小さくしていき日常へ戻る、という流れを意識する。
では次回は参加者が少人数(5名程度)の場合でのワークショップの実例を元に、コミュニケーションの構造をいかに豊かにするか、という点を解説していきたい。グループのカタチが限定される中で、言葉の方向と行動のカタチだけでも工夫次第に、飽きのこないコミュニケーションの構造ができるか、といったことを伝えていきたい。