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物理的な制約のある仕事
2016年から約3年間という短い期間でしたが、森林再生PJを現地で統括する経験をしました。
森林管理と、他のビジネス分野を比較した時、大きな違いは「空間の広がり」「時間の長さ」の2つだと思います。
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①空間の広がり
森林は面積が広いです。
海外では10万haといった広大な面積を管理しているケースもあります(私の場合は数百haでした)。
広い場所の隅々まで神経を行き渡らせることは簡単ではありません。
単純に現場を行ったり来たりするだけで時間がかかるので、自動車のような移動手段は重要です。
スムーズに通行できるように道を整備する必要もあります。
別々に行動している班が通信できることも重要です。
携帯電話の電波が届くだけで、仕事環境が大きく変わります。
人工衛星の画像やドローン空撮も、非常に有効です。
地図と写真を重ね合わせることで、現場の理解が深まります。
でも、こういった技術を駆使しても、「山の事が良く分かって管理できている」という実感は、なかなか得られませんでした。
例えばですが、利害が対立する人がこっそり侵入してきたとしても、まったく気づけないのが正直なところです。
②時間の長さ
樹木は植栽して成長するまでに、長い時間がかかります。
通常、日本の林業では植栽から伐採まで50年ほど、熱帯の成長が早い木でも伐採まで5年以上は必要です。
木管楽器に使われるような固い木を得るには100年かかります。
こうした長い年月で、働き手は入れ替わっていきます。
働いていると「前の担当者に質問したい」という場面があると思います。
普通は聞きたい話が長くて数カ月の事で、改めて聞き直すことができますが、樹木を相手にすると、数年~数十年前の作業が今の仕事にモロに影響します。
例えば「植えた人はもう亡くなっている」とか、そういったことが容易に想像できる状況です。
また、長い年月で経済状況は変わりますし、嵐も干ばつもあります。
働き手だけでなく、山主(投資家)の方も、1世代だけの判断では追いつかないということです。
伝統的なの方法は一族で代々承継する形だと思いますが、より近代的な工夫としては、様々な形で法人化してみたり、最近は「森林ファンド」といった方法もあるようです。
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こうした難しさを実感するにつれて、こう思うようになりました。
「森林管理は難しい。面積は広く、時間は長く、物理的な制約が強い。」
「物理的制約を乗り越えるための解決策は、常に業界の外から来ている」
「業界の外をもっとよく見たい」
森林管理者としては未熟で、成長余地もあったと思いますが、当時の私は転職すべきだと考えるようになりました。
その後、2019年にいろんな経緯とご縁により転職した先は、物理的な空間をインターネットで飛び越え、超短期にトライ&エラーを繰り返している、IT業界でした。