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世界一しょぼいタイムスリップ

 友人であるS博士がぼくに連絡を寄こした。彼の専攻は宇宙物理学なのだが、タイムマシンの研究をしたりしている。
ーあのさ。世紀の大発明をしたんだが、しょぼいんだ。世界一しょぼいといっていい。
ー落ち着いてくれ。何を発明したんだ?
ー相手をダイムスリップさせることができるマシンだよ。ただね、タイムスリップできる時間がしょぼいんだ。
ー何時間ぐらい?
ー3000分の1秒。
ーそれはまたしょぼいな。過去のいつにタイムスリップするかは指定できるのか?
ーそれはもう、正確に。
ーおい。そのマシン、貸してくれないか。
ーいいよ。でも悪いことには使うなよ。

由美子がぼくのプロポーズを受け入れてくれたのはその三か月後だった。
みんな、よく彼女が承諾したなと驚いた。

ーサブリミナル効果って、あるんだな。
ぼくはS博士にマシンを返しながらお礼を言う。
そう、ぼくは彼女を、ぼくらの楽しかった時にタイムスリップさせて、サブリミナル効果で好意を抱くよう導いたのだ。
                            了
(本文410字)
注)サブリミナル効果については諸説ありますが、あることとしています。
  サブリミナル効果について興味を持たれた方は、刑事コロンボ『意識
  の下の映像』をご覧ください。
  コロンボついでに、懐かしの「ショートショートnoteの昔のお題の
  作品」のリメイクを。



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