接吻代行
技術というのは、進歩するものだ。ほかの人が感じている感覚を、たとえわずかとはいえ、伝えることができるようになったというのだから。
最初の導入は、医療。表現できない患者の苦しみを、医師が感じことで治療が進んだ。
となると、応用分野である。
あそがれの人と、接吻をしたい。一度でいいから、キスの味を。そういう需要に応える商売が現れる。
タカシはカホに憧れ続けていたが、高嶺の花。しかし、なんとカホはダイスケと付き合っている。ダイスケは中学からの親友だ。
ーなあ、頼むよ。一度だけでいい。絶対、二度とはいわない。
ーそんなこと言ったって、お前にはミユキがいるだろう。キスはしたんだろ?
ー一度でいいんだ。な、頼む。
ということで、最新技術が使われる。
ーどうだった?
ーいや、もう思い残すことはない。しかし、接吻というものの感覚は、同じなんだな。
そのころ。
ーキスの味って、同じようなものなのね。
ダイスケを密かに思い焦がれてきた、ミユキがつぶやいていた。