逢いたい菜
あいたいな、ではない。あいたいさい、と読む。
大学で言霊を研究して十年、言葉にこもる潜在的な力の法則を見出し、ベンチャーを立ち上げた。新しい野菜のネーミングを依頼され授けたのがこれである。
ご承知のように、バカ売れしている。都市伝説がささやかれているほどだ。
いわく、恋人に料理して出すと、カレシが会いたくなって寄ってくる。
いわく、栽培した農家の人に会いたくなって人が来るから地方振興になる。
実は、ネーミングに売れる秘訣が隠されているのだ。
あいたいさい、はあ段の音と「い」の組み合わせである。あ、さ、た と来ると、足りないのがある。か、であり、な、も気になる。つまり、サブリミナル効果として隠されている言葉があるのだ。
それが、「かいないさい」である。
あいたいさい かいないさい
あいたいさい かいないさい
あいたいさい 買いなさい!
これに対抗できるのはただ一言、「まいらいない」だけである。
まいらいない。
まいらいない。
いまいらない。
漢字を除くと「いたい」話ではある。