見出し画像

朗読劇タツノオトシゴの感想とか

 去る10月23日、推しの駒形友梨さんが出演された朗読劇『タツノオトシゴ』を観劇してきました。

 思い返すと、推しが出演する朗読劇に馳せ参じるのは『四月の花嫁(2023年4月)』以来……舞台『あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない(2023年8月)』をカウントしても、声優としての駒形友梨さんの演技を生で浴びることができるのは14ヶ月ぶりのこと。

 否応なしに高まる期待を胸に東京行きの新幹線に飛び乗ったわけですが、結果として今回もとても楽しい……と言うと劇の内容的にちょっと違うな……とても有意義な、そう有意義な推し活でございました。


1.今回の駒形さん


 今回、駒形さんが演じた役どころは、三つ子の長女で、しっかり者のお姉ちゃんである春ちゃん。

 ふむ。ご本人も二人姉妹の姉だし、お姉ちゃん気質あるからピッタリの役どkそれよりビジュアル良過ぎでは!!?

 ……といった感じで、設定そっちのけでビジュアルに心奪われ、それ以上のことは調べずに観劇に臨んだ仲谷。

 蓋を開けて見れば、しっかり者のレベルが、こちらが想定したのとは別ベクトルのしっかり具合でした。勿論良い意味で。

 春はクール系で男性寄りの口調のキャラクター、ということもあってか、全体的に低めのトーンでの演技されていたのがとても印象的。

 一人"置き去り"にしてしまった末妹への罪悪感を胸に抱きつつ、残った妹弟を守るため、強くあろうとする長女"春"の姿は、全体的なストーリーの雰囲気と相まって胸が痛くなりました。

 一方で、これまでにない雰囲気のキャラクターを演じる姿に、駒形さんの新たな可能性を垣間見ることができたのが嬉しくて、終始心中穏やかではいられませんでしたね、はい。

 あとこれは完全に余談ですが、千秋楽のマチネ公演での座席がね、偶然駒形さんのほぼほぼ真正面でして。
 事前に公開されていたビジュアル通りの凝ったお衣装や、声以外の、表情や動きで魅せる演技もしっかりと堪能することができた大満足で御座いました。特に膝小僧とか。
 ……勿論朗読劇の中身にもしっかり傾注してましたよ??? 

2.朗読劇自体の感想 

以下あらすじ

-天国か地獄か。
死んだ人はその先、どこにいくのか。
閻魔大王の采配で決まる、最大にして最高と最悪を担う究極の二択。

ボックスと呼ばれる不思議な場所に迷い込んだ記憶喪失の男、リュウタ。
そこで出会ったのは、水鉄砲で何者かと戦う子供だった。
彼らは、この世に生まれおちることのなかった「オトシゴ」だと言う。
リーダーであるミナトをはじめ、個性豊かな子供たちと共にボックスでの生活を始めるリュウタ。
しかし、その近くに怪しい人影が…。

全ての記憶を取り戻したリュウタに待っている運命は、天国か地獄か。

公式HPあらすじより引用

2ー1.リュウタが背負った罪と罰

 脚本を担当された吉岡茉祐さんについては、某ご当地アイドルアニメを観ていた身としては声優さんとしてのイメージが強く、「ほー脚本も書くんか……多芸なのね」くらいの認識でした。
 ただ、同じく脚本を担当されていた『朗読劇あの星に願いを再演(2023年)』(こちらにも駒形さん出演)にて、観終わったフォロワー達の感想がなんかもう……阿鼻叫喚だったもんですから、ひょっとすると今回もそういう、所謂"尖った"感じの作品がくるか? と身構えてはおりましたが……正解でしたね。

 仏教では、親より先に亡くなった子供は三途の川の河原(賽の河原)で、石積みをして罪を償うが、積み上げた石は定期的に鬼に崩される。なので贖罪に終わりはない……かと思いきや、やがて地蔵菩薩が河原に現れ、子供達を救ってくれる、とされております。また、地蔵菩薩と閻魔大王は同一のものであるとされており、タツノオトシゴの世界観はこの辺に基づいたものなのかなぁと。

 善行も悪行も為さないまま、この世に産まれる前に命を落とした"オトシゴ"達が暮らす世界"ボックス"に、突如現れた大人である主人公、リュウタ。
 本来であれば死者は閻魔大王の裁きによって、天国か地獄かのいずれかに送られるにも関わらず、何故彼はボックスへと文字通り"落ちて"きたのか。
 その理由は、リュウタが失っている生前の記憶に深く関わっていたわけですがこれがまたなんとも健やかに悲惨というか……ひとまず時系列としては、以下の感じかな。

大学時代に知り合ったリュウタとソラがデキ婚
→が、間もなく夫婦仲が険悪に。中絶する、と言っていたが結局生むことを決意していたソラは第一子を出産(これがマナカ)。
→復縁し、ソラは第二子を妊娠(これがウミカ=後のミナト)
→リュウタ、会社での横領の濡れ衣を着せられ、再び夫婦仲険悪に。浮気メール?がトドメとなって破局。
→復縁を迫るも警察を呼ばれ、会うことができない状態に。追い詰められたリュウタはマダムの甘言に乗って産まれたばかりのウミカを殺害。
→そのまま死神の銃で自殺。死神に殺される予定ではない人間が死神の銃で死ぬ、というイレギュラーによってリュウタ(とマダム)がボックスへ。

 ……やー、死神に唆されたからとは言え、実の子の殺害までやってしまっていた、というのは流石に想定外。
 回想シーンが記憶を失っているリュウタの追体験、という形だった関係で、実際リュウタの記憶はどうだったのか、によって情状酌量の余地が生まれる……か? と思って少し整理してみると以下の通り。

  1. 最初の回想、駅でソラに助けられた時点で本来のリュウタとソラに面識があったのは間違いないはず。ただこの時はリュウタの中身が記憶喪失のリュウタになってるせいか、若干会話が噛み合わない。この後も同様の状態と思われる。

  2. ソラの両親への結婚報告。ここで初めてリュウタが妊娠を知ったように見えたけど、前述したようにリュウタの中身が入れ替わっているので、実際は前以て知っていた可能性はある。

  3. マダム曰く、横領は濡れ衣。ただし浮気メールに関しては「知らない」と言っているものの、中身が以下略なので、こちらの真偽に関しては恐らくクロ?

  4. この時点でマダム→リュウタの面識はないけれど、リュウタはマダムのことを知っている。これも中身が違うことを意味しているものと思われる。

 ……あれむしろ情状酌量の余地消えた???
 ハグ待ちのソラをスルーした時点で「リュウタくんさぁ……」と、内心くそでかいため息吐いてました。妊娠中で不安定な時期、ってこともあったとは言え、ソラが不安になるのも仕方ない……。
 というかマダムに乗せられた勢いは言え、自分の現状の責任を、産まれて間もない我が子に押し付けるのはあかんて……産まれて間もなく、実の父親から“憤怒”や“憎悪”といった負の感情を向けられたウミカが流石に気の毒すぎる……そらシンちゃんもなんとかしてあげたくなるわ。
 ちなみに、善行も悪行も積まずに亡くなった子、という意味では要件を満たしているとは言え、正確にはオトシゴではないミナト(=ウミカ)がボックス入りしたのは、シンちゃんのはからいだった模様(振り返り配信より)。

 ひょっとしたら有り得たかもしれない、自分で壊してしまった"幸せな悪夢"に毎夜苛まれながら、99歳でその生涯を終えることとなるリュウタの悲痛な懇願で、物語は幕を閉じます。
 これは確かにリュウタにとっては地獄行きよりも辛い、まさに生き地獄……。
 とは言え、これで例えばアブラカタブラ的な力で、リュウタとソラが出会った頃まで時間が巻き戻って、「今度は間違えるんじゃないわよ……byシンちゃん」とかやられたら多分しらけてたと思うんですよね。
 時間は巻き戻らないし、罪は消えない。
 閻魔様のはからいで己が殺した娘に謝罪する機会を与えられ、その子から優しい言葉をかけられたからといって、リュウタが犯した罪は決してなくならないわけで。
 観劇後、胸に重いものが残るエンディングではあったけれども、罪に対する罰を物語の中でしっかり描ききった点は好感持てました。

2−2.四きょうだいに幸あれ……

 ハル、ナツ、アキの三姉妹の結末に関しても中々に悲惨……ただ、“オトシゴ”として見れば悲惨な結末、というだけで、未来には希望が残されているようにも思われます。
 リュウタが落ちたボックスのメンバーであるオトシゴ三姉弟には、実は“フユ”という末妹がいました。彼女の行方は、ハル達がオトシゴとなった経緯から察することができます。
 孕った我が子に対して怨嗟の念を向ける母親に、この世での未来を悲観したハルは、ナツとアキを道連れにして生まれることを拒否。が、アキがフユの手を離してしまったことで、フユと離れ離れに。春は、妹弟を道連れにしたこと、フユを置き去りにしてしまったことに対する罪悪感を抱え続けることになりました。
 一方、置いてけぼりにされたフユは母親の胎内に留まったわけですから、恐らくそのままこの世に生を受けることとなったと思われます。

 ……が、実はメロは三きょうだいと離れてしまったフユでした! ……という可能性もなくはないなと。
 半ばゴリ押しで根拠らしいものを探してみると、

  1. メロにはボックスにくるまでの記憶がない

  2. 三兄姉の母親は子供を産むことに対してかなり否定的だったわけですが、そんな母親がフユをまともに出産するのか……? という。つまり時間差でフユも中絶により命を落とし、ボックス入りしたという可能性。

  3. 物語終盤、アキがハルとナツを探しに行く際、メロからの激励に対して"フユに言われた気がした"と述べている。気がするじゃなくて本物でした!的な……。

 深読みにしてはちょっと根拠が薄いな……と自分でも思っておりましたが、振り返り配信にてメロ=フユは公式に否定されました。ただこっちは予想通りというか、育児放棄気味の母親のもとに残されたフユも、産まれて間もなく亡くなった模様……つらい……。

 物語終盤、ジャックに撃たれて二度目の生を終えたハルとアキがどうなったのかについても名言はされませんでしたが、これに関しても振り返り配信にて言及されておりました。
 曰く、ジャックが語る“排除”というのは、オトシゴの魂を輪廻の輪に帰すことなのだそうで。
 生の喜び、生への羨望、死への恐怖、死への覚悟。
 オトシゴはこれら四つを知ることで生まれ変わる準備が整うようで、それがジャックが度々口にする“時間切れ”なのだそうです。
 ナツはまだ準備が整っておらず、それもあってジャックから赤い本と役目を受け継ぎましたが、オトシゴは“例外なく“排除対象である、との言葉通り、彼女もいつか輪廻の輪に帰るのでしょう。

「次会う時は、四人仲良く、幸せに生まれてこようね」
 ハルが死に際に口にしたこの願いが、実現するのを願ってやみません……。

2ー3.オトシモノの時間とはなんだったのか

 これも明言はされませんでしたが、各人宛ての手紙やおもちゃ、お花といったラインナップから、オトシゴにお供えされたもの、水子供養のお供物の類かな、と予想していましたが、この解釈は当たりだったようです。触れると心が暖かくなる、というのも、その中にはオトシゴ達への想いが詰まっているからなんでしょうね。
 オトシモノキャッチに失敗したらどうなるのか、という疑問に関しても、振り返り配信で判明しました。
 曰く”オトシモノの時間“自体が、何もない世界で過ごす中で、オトシゴ達が作り出したエンターテイメントなのだそうです。なので恐らく、キャッチできなかったとしても何かが起こるわけではない。失敗したね、と悔しがりながら、オトシゴ達は笑い合うのでしょう。
 ……下校時間、道路の白線を断崖絶壁の一本橋に見立ててふらふら歩いた小学生時代が思い起こされましたね。

⒊個人的にまだ消化されていないあれこれ

 なかなかに考察しがいのある作品だった朗読劇『タツノオトシゴ』。
 振り返り配信にて大体の疑問じゃ解消できたものの、未だにいくつか消化できていない疑問がありました。

3−1.時間軸について

 描写的に、リュウタはウミカの殺害直後に死神の銃で自殺を図ったと考えると、ウミカとリュウタがボックス入りするタイミングはかなり近いはず。
 なのに、実際はリュウタが落ちてきた時点で、ウミカは他のメンバーとある程度の関係性を構築できるくらいの間隔は空いていました。
 ボックス入りしたリュウタのモノローグにて"体内時計がどんどん狂っていく""俺のいた世界と違いすぎる"と語っています。
 マダムに撃たれて意識を失ってからの回想シーンでも似たようなことを述べているあたり、現実世界と死後の世界では時間の流れが違う、ということなんでしょうかね?

3ー2.ソラが自殺したタイミング

 ラストのマダム曰く、ソラは享年28歳。ウミカ殺害前の時点で竜太も28歳(これもマダム曰く)。ソラと竜太は先輩後輩の関係。となるとソラはどのタイミングで自殺したのか、という疑問。シンちゃんの伝言を聴いた感じだとウミカ殺害から間を置いていないような気はするけどそうすると年齢が……いやというかマナカはどうなった???

4.何はともあれ

 推しさんの新たな演技の引き出しを覗くことができたし、お話自体も考察しがいのある内容で、とても有意義な推し事となりました。
 何やら、本作品の振り返りイベントの開催について前向きに検討したい、とも語られておりましたので、楽しみにその機会を待っていようと思います。

 では今回はこの辺で。

いいなと思ったら応援しよう!