Ever 17の話をしたいんだけどしたくない話


ある日の不愉快な仲谷家


 つい先日のこと。
 悠々自適の年金生活を送っている仲谷父が、現在絶賛公開中の『室井慎次 破れざる者/生き続ける者』を観に行きたい、と言い出しまして。
 スマホでのチケットの買い方を教えたところ、その翌日に二作連続で観に行きました。

 んで、その日の夜ですよ。
 仕事が終わって仲谷が帰宅しましてね。
 かつて『踊る大捜査線』シリーズのファンだった身としても、多少ストーリーは気になっていたもんでね、訊いたんですよ。「映画どうだったん?」って。
 そしたらうちの父が一言。

「いやー〇〇〇〇〇〇ってのは予想外だったわ(特大のネタバレ)」

 というわけでドーモ、ネタバレ死すべし仲谷さんです。
 ネタバレは悪。悪即斬です。
 そん時飯作ってて包丁持ってたら父の眉間に牙突を繰り出してたかもしれません。命拾いしたな。
 ……そう言えば昔、仲谷の姉にも漫画『キングダム』のでかいネタバレ食らったこともありましたや。
 なんなんですかね、愉快なネタバレ家族なんですかね。いや不愉快だわマジで許せん。
 でも僕は仕返しにネタバレしたりはしません。
 悲しみの連鎖はどこかで止めなければいけませんからね。

ここからが本題

 とまぁ、愚痴吐きがてらに記事を書いていたら、先日見かけたコチラのニュースを思い出しまして。

 Ever17 -the out of infinity-リマスター版発売ですって!

 ゲーマーに限らず、何かしらの物語の類に触れたことのある人間であれば、「記憶をなくしてもっかいあの感動やら衝撃やらを味わいたい……!」と思う作品が一つや二つあると思います。
 このEver 17も、仲谷さんが記憶を消してもう一度プレイしたい作品の一つ。
 現状、DL版での購入はできず(以前は確かDMMあたりで買えたはず)、今ではプレイするなら、PS2版を購入するしかなかったこの名作が!

 現行機でプレイ可能になったというこの衝撃!!

 これを機に未プレイの方には是非手に取ってプレイを!!!

 ……と思っているものの、この作品厄介なことに、人に薦めるのがかなーり難しい。

 どういうことか、というお話の前に、Ever17がどんな作品なのかと軽く紹介しておきます。

当たり障りのない作品紹介

 2017年の日本から、物語は始まります。……発売当時(2002年)は、だいぶ未来のお話だなと思ってたけど既に7年も過ぎてるのか……うわぁ……。
 海の中に建てられた海洋テーマパーク『LeMU』ってのがありまして、そこにたまたま時を同じくして訪れた一人の大学生と、記憶喪失の少年が物語の主人公。
 二人はそこで起きた事故に巻き込まれ、逃げ遅れた結果、テーマパーク内に閉じ込められてしまいます。
 どうにか一命をとりとめたものの、施設は海中に沈み、脱出用通路や非常階段、エレベーターも使用不可。
 外部への通信手段はなく、しかもあと五日ほどで施設全体が水圧によって完全に圧壊してしまうというなかなかに詰んでいる状況。
 主人公二人と、同じく施設に取り残された少女達は、この絶望的な状況から生還を果たせるのか……!

 っていう感じ
 ゲームシステムとしてはオーソドックスなテキストアドベンチャーで、分岐によって物語が変化していきます。
 最序盤の選択肢によって、どちらか一方の主人公(大学生/少年)の視点で物語が進行。
 主人公は他の生存者たちと力を合わせ、海上への脱出の道を模索する中で、時に対立し、時に協力し、その中で他のメンバーと絆を深めていきます。
 選択肢によっては、他の生存者と恋仲に発展したりしなかったり……いわゆるギャルゲー的側面がありまして、攻略可能なヒロインは、選んだ主人公によって異なります。 

 ……とまぁ、ここまで読んでも何がそんなに凄いのか、ってのは伝わらないと思います。
 だって仲谷はネタバレを憎む男。
 上のあらすじにしたって、「ここまでだったらまぁ、言ってもいいかな……?」とだいぶ気を遣いながら書いてます。
 この作品、下手に魅力を語ろうとして、ポロリとネタバレなんかしちゃうのが怖いんですよね。
 要はキモになる"ある仕掛け"があって、それに気付かされた時の衝撃に吹っ飛ばされるタイプでして。
 可能ならば、受け手にはこの衝撃を余すとこなく全身で味わって欲しい、と思うのがお節介焼きなヲタク心というもの。
 逆に言うなら、この"ある仕掛け"ってのがこの作品の魅力の大きい部分を占めているので、それを知ってしまうとだいぶ面白さが損なわれます。

 正直言うならこれ以上の情報は頭に入れずにプレイして欲しいくらいですので、この時点で「やってみるかなぁ」と少しでも思って下さったのなら、ここでブラウザバック推奨です。
 そして発売日の来年3月25日まで、Ever 17のことは頭の片隅にしまっておいて下さい。

 ……あ、でも一つだけ注意点、というかお願いです。
 プレイすると、人によっては中盤の展開に中弛みを感じてしまうと思います。
 ですがそこをどうにか乗り越えて、是非最後までプレイして下さい……。
 
シュタインズゲートをプレイした方には伝わると思いますが、オカリンの厨二病的言動みたいなもんです。やってりゃ慣れますので何卒。

 まだピンと来ない、という方には、もう少し魅力を書き連ねますので、ここまで来たなら最後までお付き合いの程をば。

もう少し踏み込んだ作品紹介

 物語の主な登場人物、生存者は主人公の二人を合わせて六人。

  • テーマパークのアルバイト係員、田中優美清春香菜(たなか ゆうびせいはるかな。苗字が田中で以下は名前です)

  • 謎の女、小町つぐみ

  • 自称忍者のJK、松永沙羅(まつなが さら)

  • テーマパークの専属スタッフ、茜ヶ崎空(あかねがさき そら)

  •  ちょっと電波受信してる感じのJC、八神ココ

 なかなかエキセントリックな面子でしょ?
 
 ……主人公合わせたら七人じゃね? と思った方、大丈夫合ってます。合ってますし、仲谷が間違えてるわけでもありません。

 前述したように、ストーリーは大学生──倉成武(くらなり たけし)視点と少年(こっちは記憶喪失なので呼び名も少年です)視点へと最初に分岐するんですが、視点によって状況が少しだけ異なるんですよ。
 差異の一つとして、生存者の面子が違います。
 武の視点では、ココはいるけど沙羅がいない。逆に少年の視点では、沙羅はいるけどココがいない。それ以外のメンバーは一緒なので、生存者は六人と、そういうわけです。

 で、それぞれ攻略可能なヒロインが二人おります。
 武視点ではつぐみと空が、少年視点では優美清(以下略)と沙羅が攻略可能。
 ココはちょっと特殊な立ち位置というか、それぞれのヒロインとのグッドエンドを迎えると、物語の核心に迫るココルートへ、という仕組みになっています。

 他にも状況の違いはいくつかあるんですがこれ以上は仲谷の口からはちょっと……ねえ?

 こういった、物語中に散りばめられている違和感やら伏線やらを、最終ルートで軒並み鮮やかに回収していく様は爽快の一言に尽きます。

 勿論言及は避けますが、『テキストアドベンチャー』という形態を、ここまで上手くストーリーに絡めた作品はそうそうありません。
 ただこれが諸刃の剣と言いますか、当時の人気と知名度が釣り合ってない原因がここにありまして。
 物語の構造上、どうしても漫画やアニメといった別の形態にしづらいんですよね……いやコミカライズとノベライズはあったかな? ただ確か一ルートのみで、物語の核心には触れない感じだったはず。
 で、かと言って布教しようにもネタバレが怖くて下手なことが言えないもんだから、オタク達は「いいからプレイしよ? な?」という、不審者まがいのダイレクトマーケティングに徹するしかなかったと。

 更に言うと、よしんば触れてくれても途中で脱落……っていうパターンもそれなりに多いんですわ。

 この作品、あらすじを読む限りでは、極限状態に置かれた登場人物達によるパニック映画みたいな雰囲気があるんですが、実際のところ、序盤から中盤にかけてはそこまで切迫した雰囲気じゃないんですよ。
 流石に終盤ともなると色々とヤバい状況になってくるんですが、そこに至るまでの主人公達の行動がね。
 人によっては「いや君らそんなことしとる場合か???」と戸惑うことになります。
 これが、前述した中弛み部分というやつでして……物語の核心部分に触れられるのが最終盤なもんで、そこに辿り着く前に挫折してしまう方もいるんですよね。
 かと言って下手なことが言えないもんだから、オタク達は「そこ乗り切ったら面白いからさ。もう少し頑張ろ? な?」という、不審者まがいのダイレクトマーケティングに徹するしかなかった、っていうね。

 とまぁ、少しマイナスポイントにも触れましたが、それを打ち消して余りあるくらいの衝撃と感動がある作品なんですよね。

 この記事を最後まで読んで、少しでも気になった方が本作を手に取り、結末に辿り着いてもらえることに期待しつつ、今回はこの辺で。
























最後に言いたいこと(既プレイ者向け)


 …………田中優美清春香菜ちゃんのグッドエンドルートはなんでないんですかね????????
 あとPS2版のパッケージがかなり深刻なネタバレしてるもんだから一周回って笑けてくるのよね……(笑

 今度こそ、今回はこの辺で。


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