金足農業高校の甲子園決勝進出にあわせて農業高校について勉強してみた。
「漫画のような逆転劇」「選手の全員が秋田県出身」、「勝てば東北勢初の優勝」など、世間を沸かせた金足農業高校。大阪桐蔭高校との決勝戦は先ほど終了し、惜しくも準優勝に終わった。
そんな金足農業高校の決勝進出はワイドショーなどでは「日本の農業を盛り上げてほしい」などと叫ばれていた。確かに金足農業の活躍により「農業高校」という言葉は世に広まり、日本の一次産業に注目が集まる契機となったのは事実だろう。しかし、そもそも農業高校とはどのような学校なのだろうか。
ということで日本の「農業高校」の実態を調べてみた。
そもそも、金足農業高校は昭和3年に秋田県の産業教育(主に農業)を担う高校として創立され、平成30年で創立90年を迎える。この間に、2万名を超える卒業生(平成27年3月卒業で総数22,373名)を輩出しており、校内の敷地面積が実習農場を含めて20haもあるという。平成27年度は、教職員68名、生徒数は524名 (男252名、女272名)在籍しており、秋田県では比較的規模の大きい高校だ。(*1)
日本全国の高校生の中で農業高校生はわずか2.5%
そんな金足農業高校だが、そもそも日本の「農業高校」に所属する生徒の数はどれほどなのだろうか。平成29年5月の文部科学省の統計によると日本では約8万2000人が農業高校に通っているとされる。しかしながら、日本全国の高校生は300万人超であるから、その割合は全体のわずか2.5%に過ぎないのだ。(*2)
ではそんな農業高校を卒業する学生はどこに就職するのだろうか。下記は、金足農業高校の平成28年3月に卒業した生徒の職業別進路割合(*3)であるが、農林漁業の分野の職についた学生は就職した96名のうち、なんと一人もいなかった。
農業高校卒業後すぐに就農する割合はわずか3%
これは単に、金足農業高校に限ったことなのだろうか。
いや、そうでもなさそうだ。下記は農林水産省の「農業関係の学校等からの就農状況」と題した資料(*4)であるが、農業高校から直接就農する割合は、わずか3%に過ぎないのだ。
一方で、農業高校生の大学進学率は4割を超えている
農業高校生の進路をみると、年々大学等への進学者が増加しており、2002年3月卒業生において初めて進学率が4割を超えたそうだ。(*5)
もちろん、農業高校を卒業した就農を希望する学生がすぐに就農するわけではないだろうし、その後大学に入学したのちに農林漁業関連の企業に就職を果たすなどし、一次産業の発展に貢献している事例も多々あるだあろう。だからもちろん、農業高校がどうのこうのを論じるつもりはないが、せっかくの機会なので事実として記載した。
農業大学校の卒業生の就農率は約5割
また、農業高校とは別に道府県農業大学校というものも存在する。農林水産省の資料によると道府県農業大学校は農業後継者など今後の地域農業を担うべき者への技術・知識の習得を図る「農業者研修教育施設」として、道府県が設置運営している学校だ。全国42道府県に設置されており、国からの共同普及事業交付金により、基盤的な運営経費が支援され成り立っている。そんな農業大学校の入学者数は年間2,000名前後で推移しており、ここ数年卒業生の約半数が就農しているというから驚きだ。(*4)
ということで、金足農業高校、大阪桐蔭高校、そして甲子園出場を果たした残りの54校のみなさん、感動をありがとうございました!(脈絡なし笑)
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(*1)金足農業高校:
http://www.kanano-h.akita-pref.ed.jp/allabout/outline.pdf
(*2)農林水産省:http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/shinkou/genjyo/021201.htm
(*3)金足農業高校 平成28年3月卒業進路:
http://www.kanano-h.akita-pref.ed.jp/way/work.pdf
(*4)農林水産省「農業関係の学校等からの就農状況」:
http://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/kikaku/bukai/H26/pdf/140422_02_03part3.pdf
(*5)小暮通夫(2004)「農業高校生の進路をめぐる問題」『じっきょう アグリフォーラム農業教育資料』53号、7-8。
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