雑感65 桜の花で遊ぶ
水色の陶器に、桜の花を浮かべた写真を見つけた。花は、道に落ちていた桜を拾ったという。透明な湖に浮かぶ花筏のようで、春の名残を惜しむのにいいなぁと思った。
翌日、桜の木の側に寄ったけれど、花は枝から見下ろすばかりで、落ちているものはなかった。次の日、そのまた次の日も。桜は散り際が潔いとも聞くが、思ったよりも開花は長いのかもしれない。
ようやく風が花びらを運ぶようになって、わたしは落ちた花を拾った。片手に乗るだけ、たくさん。
わが家には、和食の料理人が監修したというガラスの器がある。桜の花びらの形をしていて、本来は春の短いひとときだけ使う器なのだと思う。その器に水を張り、桜を浮かべていく。欲張って拾ってきたものだから、器の中は花でみっちり詰まった。
もう少し、花の合間に水が見えるくらいに減らす方が風流だなぁと思いつつ、そのまま食卓に置いた。白っぽい花に始まり、日に日にピンク色に色づいていく。散った桜の変化が愛らしく、一週間ほどは楽しんだ。
食卓の桜が無くなって数日後、洗面台に新しい花が来た。歯磨き用のコップに、桜の花がひとつ。水に浮かぶ花は、子どもが飾ったものだった。
花で遊ぶのは、わが家の遊びになりそうだ。来年もまた、花と戯れよう。