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不屈な私達

雨上がりの匂い、ジメッとした薄暗い夕方
犬の吠える声と鼻のすする音、こつこつと革靴が歩く音
喪服を身にまとった人間

友達のお兄ちゃんが20歳にして死んだ

どうして神様はこんなにも不公平なのだろうか

昨日まで返ってきたLINEの返事はもう返ってこない
彼の言葉を聞くことはもう永遠にできない
人は無力だ
生かされた側の人間は死んでしまった人間を思うことしかできない
どれだけの愛を訴えても願いを訴えても、この現実を変えることはできない
その現実に絶望する。落ちるところ、どん底まで落ちる
それなのに、日が経てば経つほどその時の感情は薄れてしまう
あんなにも悲しかったあの日のこともいずれは思い出すことが少なくなるんだろう
こうして楽しいことが巡ってきてまた笑える日が増えるんだろう
そんな人間を私は自分を含めてどうしようもないことだけれどさみしい生き物だなとも思ってしまった

お葬式から帰宅した私は、家族と他愛もない話をして微笑んだ
彼の死から感じたものは山程あった
それなのになぜこうも微笑んで、くだらない話を交わすのだろうか

きっと人間はこういうものだ

きっと落ちるところまで落ちたら上がってみようと思える日がかならず来る
上がらなければならない日が必ずあるはずだ

不屈な私達はまたいつものように時間に追いかけられる


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