中村修平のMTGリミテッド解読「カルドハイム」
authored by Shuhei Nakamura
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(1)「カルドハイム」全体の印象
一行で表すならば氷雪コントロールの天下。
セット全体で見るとカードパワーは高いのだが、所々で意図的にカードパワーを下げている箇所がありゲーム速度という意味では遅い部類となる。
特に目につくのがクリーチャー周りの弱さ。強化シナジーもかなり弱く、近年ではほとんど見なくなった「呪文>クリーチャー」という構図となっているため、序盤をクリーチャー同士で止めて中盤戦以降に呪文の質で圧倒するという戦い方がゲーム展開の主役となる。
対抗軸としてはターン中2つ目の呪文誘発のカード群によるアグロデッキ、あるいは部族キーワードによる別軸デッキ。ただし2つ目の呪文誘発は可動域が狭く、部族キーワードも別の意味で癖が強い。また、サブテーマである墓地クリーチャー活用シナジーも供給源を墓地に落とすという一工程に手間がかかる。
いずれにせよデッキの方向性でカードの価値が極端に変化する環境であり、マナの扱いに繊細さが必要なのが特徴。
また多色化自体は容易ではあるが色拘束が厳しいものが多く、アーキタイプを志向するカードが多いのでタッチで入れる際には検討が必要なことが多い。
色の強弱的には、緑が一段抜けて後ろに白と赤。ここまでがメインカラーとなりうるが、黒と青は補助色という立ち位置。
部族はそれなりにあるように見えるものの、基本的には巨人、エルフの2種類のみ。それにレア限定で狂戦士、クレリックにシナジーがあるといったところ。なお、ウィザードは巨人の、戦士はエルフの従属物扱いなので単体では特に気にせずとも良い。
(2)環境序説
(2.1)マナレシオ
環境定義サイズは4/4。
マナレシオが2マナが2/2、3マナ3/2と低マナ域は平凡なのに対して、4マナ域は条件付き4/4or3/3飛行相当とかなり強めで、5マナ域が変わらずの4/4なため、先手を取っての4/4は下のマナ域に対しては何らかの対応を要求し、5マナまではサイズ差がなく気兼ねなく殴りにいけるとかなりの支配力を持っている。
殴りにいく意思があるアグロからミッドレンジまでなら《略奪者のカルフ》は入れ得カード。ダメージを与えるという本線に加えて、土地の持ち出しが序盤はマナの増加による手数増やし、中盤以降は土地引き回避といずれにしても嬉しい。2ターン目にちゃんと展開できていれば、後手番の3ターン目設置によるラグも許せる。
逆にアグロ向けで、なおかつデッキを選ぶと感じたのが《金脈のつるはし》。先手番の2/2から装備アタック、宝物からの3色目タッチは良いものの、後手番だとそれは通じない。装備先として考えるなら3ターン目までの標準スペックである3/2はとにかく打たれ弱く、装備してもタフネスが3止まりなため、相手の3/2と相打ちになってしまいダメージが通らない。2マナ+1マナと、ダメージを通さない限り3ターン目を完全に潰してしまうので、ダメージが確実に通る《戦場の猛禽》のような仕込みがどうしてもデッキに必要だと感じる。
装備品が俎上に上がったのでついでにルーンについてだが、基本的に装備に付けるという運用を軸に考えた上で、殴り合うという色の特性にも合致している《持続のルーン》は初手級。白よりはやや落ちるが、接死が能力として強くコンボも狙える《厄害のルーン》も優先する価値はある。
そもそもまあまあ飛んでる青や装備を必要としない緑、マナをかけてするかは微妙な赤は残念カードと言う印象であまり取る対象とは考えてない。できれば《ルーンの冠》のようなタダ乗りできるカードから取っていきたいので、色があっていればといったところ。
(3)キーワード能力
環境を規定しているのは「予顕」と「英雄譚」、そして「氷雪」。
(3.1)予顕
まず予顕だが、リミテッドにおいて予顕は4マナのカードを2+2での分割払いにする能力と考えれば分かりやすい。
予顕同士でのシナジー効果はかなり薄く、青白に少量ある程度。基本的にはカードの払い方にバリエーションが付いたものとして使うことになる。その過程でコストが軽くなるものは大抵が強いし、逆にコストがトータルで増えてしまうものが弱いというのも然り。
2マナを費やす機会がこれまでのドラフトより多くなる点に注意。従来よりも2ターン目に動けないというのはかなりのリスクとなりうる。
とはいえ、予顕のみでは実質的には何もしていないという点にも留意してほしい。よほどの理由がない限りは、2マナでの仕事はやはり2/2を出すことにある。
加えて2マナ消費だと端数が生まれる3、5ターン目にはそのマナ損をどのように埋めるかがデッキを構築する上でのテーマともなりうる。
と、環境のマナの扱いに繊細さを求められているのは7割がたは予顕のせい。もちろん上手く使えればそれだけゲーム展開に差をつける事ができる。
それと予顕はわりかし簡単に、それこそ2ターンもあれば中身の予想がついてしまう。どのみち相手のターンエンドに打つ《多元宇宙の警告》のようなカードは予顕しないほうが良いと感じているし、2ターン目の予顕に際して2色目を見せないという小手先技も、例えば3ターン目に《スケムファーのための闘争》を打つ可能性があるなら意識しておいてよいと思う。
(3.2)英雄譚
英雄譚はただ単純に強力なカード群という認識。
今回は全ての英雄譚が2色のマルチカラーとなっており、各々のアーキタイプに沿ったデザインとなっているが、上位英雄譚はそもそも1枚で完結してしまっているので結果として最もタッチされやすいカードとなっている。
バウンス呪文が弱めに作られているのは、おそらくこの英雄譚のせい。ものによってはそのバウンスや《練達のスカルド》をタッチしてでも使い回しを考えて構わない。
(3.3)氷雪
それで氷雪となる訳だが、氷雪に関しては少々話が込み入っている。
狭義としては追加の氷雪マナ、あるいは氷雪土地をコントロールしている事を要求するかわりにそれによって性能が向上するカード群だが、それ以外に氷雪マナカードの大半が2色以上を産み出せる。つまり多色化との親和性が高く、氷雪+多色というアーキタイプでもある。
加えてドラフトピック時に氷雪土地を取るという一工程があるというのもこのキーワード能力の特徴。基本枚数の23枚に加えて氷雪デッキを運用するには最低でも6枚、欲を言えば常に2色ドラフト時での片方の土地枚数である7-8枚は氷雪マナ源が欲しくはあるが、どのような形で氷雪マナがデッキに必要になってくるかで話が全然変わってくる。大まかに分けて3パターン。
①ただタッチカラーの供給源として見るのならばコモンのタップイン土地で2~3枚程度で充分。
②《氷山の徘徊者》を向上させたいくらいであれば4枚もあれば合格点。
③《冬を彫る者》、《氷皮のトロール》を運用したいのなら前述の最低6枚から。
ちなみに、氷雪土地の枚数のみを数える上にソーサリータイミングでしか使えない《死霊堤の司祭》は③以上の土地が必要なので相当使いづらい。覚悟が必要。
ドラフト中、絶えず自分のデッキの立ち位置を確認しつつこの基準点を元にデッキを構築していくのだが…かなり砕けた言い方で良いなら、コントロール風味なデッキを目指すなら勝手に「氷雪」となってしまうのがこの環境と言える。
もちろん、安定感に欠けていようとも氷雪土地4枚でも③のような構成でブン回さなければならない時はあるし、意外と回ってしまう。これとかね。
(サンプルデッキ:黒緑タッチ白氷雪:7勝)
とはいえ、折り目正しく環境最強と言える「氷雪」なのはもちろん氷雪土地をふんだんに使い多色カードと強氷雪呪文を搭載した③なので、まずは氷雪デッキのドラフト指針、構成などを書き出した上でそれに対抗するデッキを挙げていくことにする。
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