見出し画像

中村修平のリミテッド解読「イニストラード:真夜中の狩り事始」

authored by Shuhei Nakamura

※当記事を、事前の承諾無く複製・転載・加工・配布・再出版等することを禁止します。

(1)「イニストラード:真夜中の狩り」全体の印象

高速でアグロ偏重、そして重度のアーキタイプ環境。カードパワーは極めて高く、特に5マナ域のサイズが非常に大きい。一方で4マナまでのスタッツは平均的で、毎ターンにクリーチャーの展開が要求される。そこにアーキタイプでのバフを上乗せして殴っていく。

なお、多色化は緑において可能ではあるが、アーキタイプカードの価値がデッキ構成によって大きく変わるものが多いので、タッチして投入できる物自体が少ない。

画像11

日暮・夜明の昼夜システムなどによって手数を要求されることと、そもそも高コストカードが少ない環境でもあるため、5マナ域を3~4枚までに抑えて土地は16枚に絞った構築が優勢。

(2)環境序説

(2.1)除去の性質

特異な環境の要因となっているのが、除去の性質低コスト域クリーチャーのスタッツ

画像12

除去の性質については、黒のコモン除去3種類の、従来環境との比較がわかりやすい。黒は、どれも潜在的に完全除去になっているという平時にはない凶悪仕様なのだが、低コスト帯だけでみると《オリヴィアの真夜中の待ち伏せ》は2マナで2/2相当の交換と並程度、《踊り食い》は1マナ運用だとクリーチャーの生け贄が必要なので、カード対効果では割の合わないカードになっている。2ターン目にはどうやっても夜にならないので合わせられない《月の憤怒獣の切りつけ》と同じく員数外。

そう考えると数としても少ない。通常だと残念枠になりがちとはいえもう1種類くらいは低マナ域に除去があるものだが、今回はそういうのは一切なく各色1枚ずつ。黒だと《オリヴィアの真夜中の待ち伏せ》、赤だと《炎の供犠》、白の《蝋燭罠》の3種類のみで、タフネス2までorブロックはできてしまうとかなり弱め。

画像13

その上で、そもそも除去というカードタイプ自体が降霊のような1枚で2枚分となるカードには本質的に脆弱という欠点を持っている。それらの帰結として、序盤のクリーチャーにはクリーチャーで対応するというゲーム展開となりやすい。

(2.2)環境定義サイズ

画像16

では肝心のクリーチャーの方はというと、集会や変身など条件を満たせばとんでもない事になるが、通常サイズだけで見れば4マナまでは至って平凡そのもの。2マナ域が2/2、3マナ2/3or3/2、4マナで3/3相当と、カードパワーが低めであった「フォーゴトン・レルム探訪」と比較しても差がない。

最序盤は除去が弱いのでクリーチャーを展開するしか選択肢がなく、そこからのサイズも劇的な差がないので、1ターンのパスがそのまま生き死にへと直結してしまう。

画像16

一応の終着点として、5マナ域のオーバーサイズクリーチャー。だが、ここには同じく高カードパワーな完全除去がちょうど当たってしまう。《日金の連射》が思いの外使いやすいのもこのあたりの事情もある。ついでながら概して除去は5マナより軽く、2アクションを取られるようならお手上げ状態になりやすい。

結論としては5マナのカード性能は群を抜いて強いのだが、そこでゲームを作ろうとするには遅すぎる。もちろん5マナ域は使いたいのだが、それに頼れば頼るほどデッキとしては不安定になっていってしまう。

このような構図の中で求められるのは、序盤のクリーチャーでしか処理ができない盤面をいかに自分の優位に持っていくかとなる。より早く展開して相手を圧倒するか、それとも余力を残した状態で序盤戦を捌ききるか。個人的に好みなのはより早い方、構成で速度負けをしないくらい軽めに構築した上で、さらにアーキタイプによる上乗せでの底上げを狙っていく。

画像15

この環境において完成された吸血鬼デッキをイメージして貰えれば良いと思う。普通に召喚していれば通常レベルのクリーチャーでしかないが、相手にダメージを与えてさえいればスタッツが1段階高い状態での登壇となる。そのギャップを持った上で、除去なりコンバットトリックがある。強くてニューゲームをこちらだけしているのが目指すべき形。

降霊とフラッシュバックや、集会による強化、腐乱による戦力のかさ増し、あるいは変身によるサイズアップを駆使して、クリーチャー戦の初期段階から対消滅ではなく一方リードを取っていきたい。

画像17

序盤戦でのマジックナンバーは「4」。4/4までいけば序盤の当たり負けはほぼなくなり、だいたいの攻撃でクリーチャー2体を道連れにできるし、3/4ですら、そこそこの殴り値と3マナ域までのアタッカーがカードを使わないと突破できないようにしてくれる。

ちなみにこのカードを使わないと殴れないというのはかなり重要。環境的にコンバットトリックは格別秀でたものがない上に、前述の除去と同じく降霊に対しての脆弱性を抱えているので、基本的には使い減りしない永続強化のカードの方が優先され少量しか入っていない。その結果として、かなりの頻度でそのまま戦闘をパスしてくれる。特に自分が守勢に廻される後手番時には値千金。

同じように、2ターン目に関してはどこまでいってもほぼ2/2サイズに終始するので、「3」もわりかし信頼感がある。個人的には2マナ2/3はプレミアムクリーチャー。そのままの状態で2/2が乗り越えるのに追加のカードを要求させることができるし、+1/+1カウンターが1つでも乗れば当たり負けしないタフネス4に到達する。

(2.3)墓地対策

降霊、フラッシュバックと対象には困らないとはいえ、墓地対策のみの専用カードを入れるには抵抗がある。だからこそ、人によっては《戦墓の大群》を黒の除去並に評価しているのは理解はできる。《魂標グリフ》の追放効果も、だいたいにおいてとても嬉しい。

画像26

ドラキチウィークエンド(1日目2日目)を通して得た最大の知見としては、あんちゃん(高橋 優太)が提唱していた《腐敗した再会》メイン説。奇襲の1枚目でゾンビが1体とある程度の仕事をしているのも良いし、墓地においておくだけで睨みを利かすこともできる。また、腐乱とはいえ2体分のクリーチャーが供給できるのもゾンビシナジー的にはありがたい。

ここから先は

11,518字 / 54画像

¥ 500

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?