43500点差ヲ追ウ!石田綾音、魂の大連荘
2024年6月28日(金)に、シンデレラファイトシーズン3本戦が開幕しました。今シーズンから観戦記者3人体制になってるわけですけど、ボクは♯1を書くことになりました。
♯2は最高位戦の女流・神尾美智子プロ、♯3はMリーグの観戦記も書いてる協会の先輩・坪川義昭さんです。ぜひ読んでみてくださいネ。
金曜日の夜中に書き上がって提出したところ、土曜日にはもうアップされてて驚きました。仕事速ェ。
ところで、昨日行われたGroupB♯2は、全19局にも及ぶロングゲームで、いわゆる「取れ高」がたくさんありました。だから、公式では泣く泣くカットした部分にスポットを当てて、このアルパカnoteで書いていこうと思います。
以下、常体・敬称略で。
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上の公式観戦記を読んでもらえれば分かる通り、GroupA♯1はひと和了りで着順が入れ替わるクロスゲームだった。
10500点持ちでラス目の栗本杏奈が、南4局2000・4000ツモで、19800点持ち3着目の安藤りなをまくり、♯3へと希望をつないだ。
では続くGroupB♯2がどうなったかというと、今度はトップからラスまで実に105400点差という、とんでもなく縦長の展開になった。
道中7万点をオーバーした酒寄美咲を、誰も追いかけない。
「酒寄さん、トップでいいよ。おめでとう。」
という、同卓者の声が聞こえたような気さえした。
しかし、北家スタートで親番がある石田綾音だけは違う。43500点差をまくってトップを獲るべく、密かに爪を研ぎ、牙をむいていたのだった。
南3局1本場が流局になって迎えた、南4局2本場の配牌から見ていこう。
ドラの2mがターツで組み込まれており、ソーズで1メンツ。自風の東は重ねたい。石田はオタ風の西から静かに打ち出していった。
結論としては、この石田の親番は5本場まで積むことになるのだが、他家も黙って見ていたわけではない。特にトップ目の酒寄は、積極的に仕掛けてどうにか逃げ切ろうと画策していた。
打点は何点でもいいわけだし、仮に親番石田に12000を放銃したとしても、まだ2万点以上のリードを持って次局に臨むことができる。今のリードを生かしたオーソドックスな戦い方だ。
そんな酒寄に対し、石田が揺さぶりをかける。
石田(向かってこれますか?)
という親リーチ。
酒寄もしばらくは無筋を切り飛ばして懸命に応戦するものの、下の赤5mを引いてついにギブアップ。パッと見、2mとスライドすればいいと思うかもしれないが、2mはドラなのだ。12000放銃はギリ許容したとしても、18000放銃はやってない。完全にやってない。
実際石田の入り目はマンズの下目である14mだったわけだし、酒寄の判断は正しかった。しかし…
その間隙をぬって、石田の嵌8sツモが決まる。リーチ・ツモ・表ドラ・裏ドラの4000は4200オールだ。石田は12600加点し、酒寄が4200点吐き出したわけだから、都合16800点差が縮まったことになる。
結果論だけど、リーチ・表ドラ・裏ドラの7700は8300直撃(16600点差縮まる)の方が、傷が浅くてすんだんじゃないかってところも含めて面白い。
続く南4局3本場は、石田が酒寄をまくれるかどうかの分水嶺となった。
配牌から見ていこう。
赤3!
345の三色に仕上がれば8000オールや12000オールまで見込める手だし、そうでなかったとしても、6000オールや12000直撃などで、一気に点差を詰める千載一遇の大チャンスだ。
モフモフする石田をヨソに、酒寄は場風の南から仕掛け、前局同様露骨に石田の親を落としに向かってくる。この試合は配牌に恵まれて大きなリードを築いてきた酒寄だが、こういうところに腕が出る、センスが光る、プロ7年目の矜恃が見える。
酒寄は、上の11枚からドラの1sをリリース。打点は不要なので、4sや6mなど、中頃のいいくっつきを残し、24p部分との振り替えを目論む。
ファーストテンパイは石田。嵌6m待ちは不満も不満だが、タンヤオで出和了りが利くし、手替わりもある。ここはダマテンに構え、あわよくばトップ目の酒寄から直撃を取りたい。
ボクが最もドキドキした瞬間(Most Dokidokied Scene=MDS)がココだ。おいおいおい、酒寄の6mがネクストバッターズサークルに入ってるじゃないか。グリップにスプレーしてるじゃないか。膝に手を当てて肩入れるストレッチしてるじゃないか。マスコットバット振り回し始めたじゃないかーっ。
あるよ!
あるよあるよコレ!
12000は12900直撃したら!
あとはたったの900じゃん!
公式観戦記のタイトル
【酒寄美咲「私、明るいぽんこつ!BEST 16もよろしくね!」】
にしてたけど、差し替えなきゃだ!
【石田綾音、オーラスに炎の鉄槌!】
ウヒョオー、カッケェー。
フリガナのやつ、表示できるかなぁ。
ところが石田は、ツモ4mで両面待ちになると、即リーチを宣言。6000オールを引きにいき、
暗カンでパワーアップ。8000は8300オールでの逆転も現実味を帯びてくるが…
ここは流局。
これを和了れなかったのは、石田家歴代の中で言うと、関ヶ原の合戦で敗れた三成よりも無念だった。小早川ぁー!
しかし、石田綾音は諦めない。続く南4局4本場は、手役の分岐点を上手くとらえる。
ピンズ多めの配牌をもらうと…
今度は3着目のさくら美緒が役牌の白をポン。次戦の♯3が遅くなると、
さくら美緒『エヘヘw夜遅いと終電なくなっちゃうwwこれが本当のさくらナイツですねwww』
ってことになりかねない。速やかに局を終わらせにいく。
さて、対する石田は、6巡目に重大な分岐点を迎えていた。ホンイツにするしない問題だ。
【ホンイツにする】
・今日はゲストが黒沢咲プロだし。
・トイツ手も天秤にかけられるし。
・北北1p1p全部払ってタンヤオには行かないわけだし。
【ホンイツにしない】
・赤5m切ると河が弱くなる(読まれやすくなる)し。
・リャンメンリャンメンの一向聴になった方が広いし。
・ツモるか裏ドラ1枚でどうせ12000だし。
本来ならば白いツナギでも着て、ホンイツに「するしない」を考えたかったところだろうが…
石田の選択は打赤5m。マンズターツへの未練を残さなかった。
さくら美緒に嵌8p待ちのテンパイが入り、
石田は1歩遅れを取るものの、
10巡目、北を暗刻にしてテンパイ。前局同様リーチで6000オール8000オールを引きにいくかと思いきや、ここはダマテンを選択。四暗刻への手替わりも視野に入れた、上質なオトナのダマだ。紗々みたいなもんか。違うか。
ここで、さくら美緒が手替わりするが…
最後は石田綾音が3pをツモ和了り。ツモ・メンホン・赤の4000は4400オールとし、トップ目の酒寄まで5100点差にまで急追した。
しかし、最後はさくら美緒がプロ歴7年目の老獪なテクニックを見せる。まずはイーペーコーの役ありをダマテンに構え、出和了りできる形でいい単騎を探すと、
酒寄のドラポンに負けず、
石田のイーシャンテンもかわし、
最後はノベタンの147sに構え、
トップ目酒寄のテンパイ打牌を、きっちりとらえてロン和了り。
2600は4100で終局となった。
余談だけど、酒寄はビックリしただろうなぁ。5200は6700ならトップ陥落だった。
このときボクは、2009年夏の甲子園の決勝、中京大中京vs日本文理を思い出してた。
実況アナ「ものすごい粘り!信じがたい集中力!」
実況アナ「回った!回った!日本文理の夏はまだ終わらなーい!」
ううう…いいなぁ。
今回はトップ獲れなかったけど、石田綾音の夏だって、まだまだ終わらないゾ。
最後わずかに届かなかったところも含めて、勝負のはかなさや紙一重で涙を飲んだ者の無念が、ボクたち視聴者にもグッと伝わってきた名シーンだった。
ʕ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ
石田綾音さん、お疲れ様でした。素敵な対局をありがとうございました。♯3を勝ってBEST16に進出したということで、次もぜひ頑張ってくださいねー。