法務職への転職を考える人へ

法務職への転職や法務業務のスキル収得を考える人へ

法務というと堅い、難しいイメージがあります。六法全書全部覚えるの?など。
契約書を作るのはわかるけど、自分でつくれるとは思えない。他には何をするのかよくわからない、なども。

●法務の仕事
法務の仕事は主に2つあると思います。
①会社の資産を守るための整備。相手や従業員との契約書の作成、締結だけでなく、社内規定の作成や法律上求められる手続き(会社の登記変更など)などもあります。よくイメージされる業務の多くはこちらです。

②会社の監査、抑止
2つ目は、極端にいえば会社が暴走することを防ぐこと。
例えば社長や営業職は、ビジネスの加速や売上獲得に向けて、攻めの姿勢、まえがかりな施策や言動をとる場合が多いです。また会社には、その会社独自の空気や価値観、理念があります。これらはいずれも会社が事業を営む上で必要なことですが、行き過ぎると問題が生じ、隠ぺい体質や不祥事として世間をにぎわせます。
そうなる前に、会社の自浄作用を働かせるストッパーとして法務は機能します。


●法務の主な業務
①契約、規約、届出
取引先の企業や顧客が相手になります。
作成するものは、売買契約書や秘密保持契約書、業務委託契約書、利用規約、プライバシーポリシー等です。また業態によっては、国や地方自治体に届け出や許認可をもらう必要があります。
自社作成だけでなく相手から送られる雛形の確認、訂正などもあります。

②社内規定
就業規則や旅費規程、セキュリティ対応などの各種規程の作成、整備と社内への周知があります。

③紛争対応
未払いの金銭の回収などこちらから訴える場合と、クレーム・事故処理など相手から訴えられる場合の両方があります。
裁判まで行く場合は、専門の外部弁護士に依頼することが多いですが、その前段の初期対応や弁護士にどういった方向で依頼するかの調整などは社内法務で担います。

④機関法務
株主総会関係や法務局への届出等、会社法その他の法律上法人としての会社に必要な手続きを行います。
小さな会社であっても、取締役の変更に伴う手続き(臨時株主総会の開催や法務局への申請)や年一の定時株主総会などはあります。

■法務は大変?
会社の命運を左右することがある、という意味ではかなり大変かつ責任重大です。
といっても、営業の売上や人事の人材確保など、他の部署とかわりません。
どれだけ優秀な契約書があっても営業で売上とってこれないと意味がないです。逆に言えば、仮に契約書がずさんでも営業が売上をあげ、その顧客とトラブルが生じなければ会社は生きていけます。

では法務特有の苦労をなにか

①地味な作業の繰り返し

 ドラマや小説では主人公が華々しく相手に乗り込んだり、社内で大立ち回りして問題解決したりしますが、現実問題そんな機会は多くありません。ぼくも会社員時代に営業の方と一緒に銀行に載り込んだことありますが、、、まあ地味でしたね、

 基本的に相手とやりとりをするのは、営業担当者や役員レベル。法務の部長が直接相手と話す場合も法務としてというより決済権をもつ部長として(法務部門のトップはそのまま会社の幹部(役員クラス)であることが多い。)やりとりすることがほとんどです。

 1法務スタッフとして対外的に矢面に立つことはほぼありませんでした。

 そういった日の目をみない状態で、日々同じような契約書(会社は基本的に同じ事業のを継続するので契約書もほぼ毎回同じ)とにらめっこすることに一番時間を割きます。
 かといってここがおろそかだと万が一取引先とトラブルになった際に、最悪裁判で負けるので、大変大事なお仕事です。

②他部門との衝突

 これもかなり頻繁におきます。
 法的にグレーなところをビジネスチャンスととらえる社長、多少不利な条件でも売上が欲しい営業、過激な文言を使いたい広報等。
 極端な言い方になってますが、法務(安全第一)からするとこう見えることは多々あります。しかも、この後言われるのは「じゃあどうしたら法的に問題ないか教えて」です。確かにそれを考えるのが法務なんですが、、、、

 まあこれも実は法務に限りません。
 社長は中長期の目標や会社のビジョンの実現を、営業は売上目標の達成と顧客満足度を、広報は世間の認知や注目の獲得を、とそれぞれが最優先にする指標が違う以上、部門間の対立は必ず起きますし、起きない方が問題です。

 営業経験はあまりありませんが、法務にとって営業とは、顧客との関係では自社の立場になって話すが、社内では顧客の立場にたって話す(顧客の利益を優先する)ことになります。法務からすると、その顧客信用できる?(支払や品質大丈夫?)という場面でも、営業はその顧客が信用できる体で話します。


■法務に必要なスキル、知識
①法務知識
 契約書の用語や日本の法律の考え方、自分の会社が関係する法律の基礎知識など。この辺は、実際に業務に入ってから勉強して覚えることも可能なのでさほど敷居は高くありません。

②対人スキル
 日々の業務は契約書とのにらめっこですが、実際はその契約書をもってきた営業とのやりとりが大事です。なんでその文言や契約条件がだめなのか、その条件を受け入れために必要な確認事項はなにか、などを営業や関連部門とやりとりする必要があります。

③ビジネス感覚
 契約書は「なにかを実現するための約束」です。契約書の背景にあるビジネス全体を俯瞰して見るて、関係する部門や起きるトラブルの予測、想像をする力が求められます。またその上で、現実的にとれるリスクの範囲を決める必要があります。


■今回は法務のお仕事を簡単にお話ししました。
法務は地味に思われがちですが、その立場から会社の重要な情報に触れる機会が多いですし、自分が会社を守っている自負を持てるのであれば非常にやりがいを見出し易いです。

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