社長向け 印鑑の意味と使い方

個人の場合でも、印鑑登録した実印、銀行印、認印の3種類は使い分けられてると思います。会社の場合も、基本的に使い分けるものはかわりませんが、社長自身ではなく、従業員に使用や管理をかませる場合があると思いますので、その点も踏まえて整理しましょう。

■署名捺印と記名押印

署名:自筆
捺印:自筆したものに印鑑を押すこと
記名:自筆ではないが氏名や名称の記載があること(ゴム印、印刷など)
押印:記名したものに印鑑を押すこと

なお、法律では「署名」と「(記名)押印」は同じように扱われます。

民事訴訟法228条4項:私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。

商法32条:この法律の規定により署名すべき場合には、記名押印をもって、署名に代えることができる。

ただし実際の訴訟をふまえると少し異なります。

署名の場合は、筆跡鑑定によって本人が自筆したことを立証する必要があります。
(記名)押印の場合でも、本人が印鑑を押したことを立証する必要があります。

最高裁昭和39年5月12日判決:私文書の作成名義人の印影が、その名義人の印影によって押印された事実が確定された場合、反証がない限りその印影は本人の意思に基づいて押印されたものと事実上推定され文書全体の真正が推定される。

私文書とは、公文書の対義語で、要するに通常の会社がビジネスで使用する契約書なんかをさします。印鑑証明や法人印(法人の代表印として法務局に届け出たもの)が大事とされるのは、「名義人の印影によって押された事実が確定」しやすいからです。
印鑑証明の印影と契約書の印影が一致することを立証すればひとまずは、達成できます。

つまり、証拠としては、法人印ではなく、いわゆる角印(請求書などでみかける会社の名称が四角い印影で表示されるもの)であっても、その会社が管理しているものと一致する、といえれば「記名押印」したものとはいえます。

■代表権

法律上、会社(法人)自体は実体のないあくまで概念でしかないため、会社がなにかの行為をすることはありません。あくまで会社の社長や従業員など、その会社を構成する「人」によってかわりに行われます。

法律上会社を代表できる人は限られています。基本的には代表取締役です。

つまり、部長や取締役(代表取締役がいる場合)がいくら署名や記名押印しても、そもそも会社を代表する権限がないため、基本的に、会社の契約としては有効になりません。

契約書で代表印がよく使われるのは、「1つしかない代表印は、代表取締役が管理するもの」という前提や慣習があるからです。
角印や社判なんかは、部長や課長、経理係など代表取締役以外の社員が複数持っている場合が想定されるため、必ずしもその印影があるからといって、代表取締役が押したとは限りません。

逆にいえば、5~10人くらいのベンチャー企業や1人会社で、印鑑は全て代表取締役であるオーナー社長が管理する場合には、法事印でも角印でもあまりかわりません。

ただし、代表取締役個人の印鑑登録した実印は避けましょう。使えないわけではないですが、個人で印鑑登録している場合、「個人名義の押印」ともみれるため、代表取締役が「会社の代表として押印した」のか「個人名義で押印した」のかが曖昧になります。


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