数をこなすということ

 小説を書くということを仕事にするにあたって、最初から数はこなそうと思っていた。年間最低でも四冊、できることなら六冊、七冊とこなすつもりだった。

 理由は簡単で、回りがそうだったから。今もお世話になっている羅門祐人先生はそれこそ月一冊のペースで出していて、それを何年もつづけていた。めっちゃくちゃに早かった。
 さらに、これも世話になった篠崎砂美先生もコンスタントに出しておられた。注目すべき作品も多かった。
 新木伸先生もコンスタントに出していて、しかも売れていた。
 何より、ネットで付き合いのあった矢野徹先生が相当のお年であったにもかかわらず、ばりばりと仕事なさっていた。分厚いSF翻訳をかなりのハイペースで出していたように記憶している。

 回りがそうだったので、自分も数をこなすのは当然だと思っていた。理屈でもなんでもなく、そんなものなのだろうと。そのまま深く考えずに書きつづけて、いつの間にやらここまで来てしまった。
 
 ただ、それなりに書いてきたけれど、結局、羅門先生や矢野先生にはとうてい及ばなかったなあ。数をこなした上に、質が高く、商業的にも成功しているのだから。力量の差はあるよなと思いながらも、そういう方々を身近に見ながら、同じ領域で仕事をできたのは幸運だったと思う。

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