サウナレビュー 暖の地獄サウナ(大分・九重)
サウナイキタイでは寒の地獄旅館で登録されているが、各種媒体等で確認したところ、サウナ自体の正式名称は暖の地獄サウナということらしい。
由来も含めてこちらの方が適切な気がしたのでタイトルは暖の地獄を採用。
外見はTTNEプロデュースのなかでは完全に異質な存在かもしれない。ビジネス的にもプロデュースだけでなく初のサウナ運営も担っているということで異質なのだが、昨今の現代的お洒落リニューアルモダンサウナとは一線を画す。
評価:★★★★★
サウナ
薪ストーブが設置されているコンパクトなサウナ。キャパは8人ぐらいで混んでいる時は外で若干の待ちが発生することも。外から小窓を開けて中の様子を伺える構造になっていて細かい気遣い。
セッティングのバランスはかなり良い。建物の小屋はかなり年季が入っているので元々あったものを若干改装してサウナにしているのだと思われるが、不思議と良い塩梅になっていて素晴らしい。隣の暖房室は完全に昔から変わっていないようなので、元々構造上熱を逃さないことは意識されていたのかもしれない。
水着着用で混浴なのでカップルが多かったが、年齢層はわりと幅広かった。あとは大体女性の方が長くサウナに入っていたので、恐らく女性側がサウナーで男性側が付き添いのパターンだったのだろう。
言い換えると映え目的のなんちゃってインフルエンサウナー女子はおらず、混浴サウナといっても結構硬派な感じなので、その点は心配いらない。
ちなみに、頻繁に薪の追加などのケアが行われていたのも素晴らしい。薪ストーブは熱源としては暖かみがあって魅力的なのだが、設置するだけだと非常にセッティングがブレやすい。その点もしっかりと運営されている印象だった。
水風呂
さて、この施設のメインディッシュは間違いなくこちらの水風呂である。温泉成分を含むいわゆる鉱泉のなかでもかなりの低温で冷泉と記載されている。
ちなみにビジュアルから既に圧巻である。水風呂の底が冷泉成分によって青々と輝いている。入った瞬間に硫黄の香りが鼻腔を駆け巡り、キンキンに冷えているのにまるで温泉に浸かっているかのような気分に浸れる。
温泉も地域によってその成分は様々だが、地獄温泉の産地である大分ということもあって、しっかり硫黄の香りがする濃厚な温泉や見た目や香りではイマイチわからないクリアなタイプの温泉もあるが、こちらは完全に前者に近い成分の冷泉だろう。
鉱泉はよくその温泉成分から肌当たりが柔らかいとされることが多いが、こちらはその低めの温度と成分からガッツリ効いてくる感じでサウナで暖まった身体との相性は抜群である。
にも関わらずあまりの気持ち良さに何故か長く漬かっていられるという嬉しい矛盾。ちなみに毎分2tの湧出量というから驚きである。自然の偉大さを感じ全身で感じながら味わえる冷泉・・・控えめに言って最高である。
外気浴
こうして完全に仕上がった状態で迎える外気浴は、ととのいチェアとして十分な数のゼログラビティチェアが用意されており、申し分ない。季節によっては外は寒すぎるかも知れないので、室内側にもちゃんとチェアが用意されている。
ちなみに外気は完全に山中の野外になるので、蚊取り線香をずっと焚いてくれている。こういった心配りも憎いところだ。雑念を排して完全にととのいに集中できるだろう。
総評
施設自体はかなりの老舗感があり、建物等なかなかに年季が入っている。だが、肝心のサウナ体験という意味では唯一無二であろう。2t/分の圧倒的な水量で湧き続ける特濃成分の水風呂でクールダウンができるなどと夢にも思わなかった。必ず一度は訪れるべきサウナ施設の一つと言って過言ではないだろう。
もう何年もサウナーをやっているので、実際にととのいの境地に達することは少なくなってしまったが、こちらはそんなととのイップスを患うサウナーでも一気に快楽へ導いてくれること請け合いである。
純粋に気持ちの良いサウナ体験となることは間違いなく保障できる。
雑談コーナー
レビューとは関係ないが、サウナができる前からこちらの施設では、もともと夏季限定で冷泉に入れたそうだ。その際はどういった入浴法だったかというと、まずいきなり冷泉に浸かり、全身がガタガタ震え出すまでその中で我慢するという滝行もビックリの修行方式だったそうだ。笑
そして、今度は身体の芯まで冷え切ったところで、暖房室(50~60℃)に入ってゆっくりと身体を温めていく、という現在のサウナサイクルとは完全に逆の発想の温冷交代浴を数回行うのが基本形だったらしい。
身体が震えるまで我慢してあの冷泉に入ると思うと話を聞くだけで恐ろしいが、健康法としては理に適っている気もする。少し前にベストセラーになった「ICEMAN 病気にならない体のつくりかた」という本でも身体を冷やすことで人間の潜在能力を引き出し、心身ともに健康な肉体を作り上げることができると紹介されている。
昔から営まれてきた健康法が特に示し合わせたわけでもない海外でも時代を超えて評価されるというのはなかなか面白いと思う。ただ、サウナ浴は順番を逆にするだけでそこまでの苦行を伴わず、かつ脳内含めて気持ち良くなれるという点でやはり偉大な温冷交代浴の手法だと改めて感じた。