トヨタが中国と燃料電池自動車共同開発
トヨタが燃料電池開発を中国の企業と共同で行うこととなった。
トヨタの共同開発の枠組みに参加するのは、
・北京億華通科技(清華大学系)
・北京汽車集団
・中国第一汽車集団
・東風汽車集団
・広州汽車集団
となる。
トヨタは、これらの企業と合弁会社を設立して燃料電池を開発する。
開発した燃料電池は、トヨタが開発する燃料電池車に搭載する。
各会社の特長に関してはリンクの記事を参照してほしい。
なぜ、共同開発なのか?
なぜ、最新技術の燃料電池を共同開発する必要性があるかを考えてみよう。
中国の環境政策
中国が環境政策として、2025年の自動車販売の25%をNEVで構成するという目標がある。
これを満たすためには、中国の自動車メーカーはNEV車両(EV・燃料電池車両など)を開発する必要性がある。
しかるに燃料電池は開発経費が高く、インフラにかかる費用もばかにならない。
なので、燃料電池車両をお試しに市場に出した経験があるトヨタと組むことは中国企業にとっておいしいことである。
また、今回のコロナ騒ぎで企業の競争力が落ちている中国企業としては、燃料電池の開発経費を大きく下げるという利点がある。
日本で普及しない燃料電池車
一方、日本では早期に燃料電池車両を出したのであるが、普及の見通しが立っていない。
水素の供給ステーションの数が増えずに、環境車両としては電気自動車やプラグインハイブリッド車両の方が普及が進んでいる。
日本における普及が難しいのであれば、中国での普及にかける必要性がトヨタ側にも存在する。
なので、一方的にトヨタが中国に供与するというよりは、トヨタの事情も存在するということである。
燃料電池車は究極の環境車両か?
視点を変えると燃料電池車両は環境車両とは言えない部分が多々ある。
製造のための費用
燃料電池車両は、電極に高価な貴金属を用いる必要性がタイプがある。
特に酸性電解質を常温近くで用いる方法(MIRAIなどで用いているイオン交換膜型燃料電池が代表例)では、貴金属触媒が必須となる。
なので、当然のように精錬に多大なエネルギーを消費する白金などの貴金属を用いることによって、そこでの環境悪化を招く可能性がある。
元素としては多量に地球上に存在する(採掘が可能という意味ではない)リチウムとは比べ物にならない。
燃料電池車の製造が環境にやさしいとはいいがたい。
水素の供給方法
現在、工業地帯の配管に多量の水素が流れている。
その一部を用いれは燃料電池車両の走行が可能となる。
但し、その水素は化石燃料から作られた水素である。
水素を太陽電池のエネルギーで作ろうとすると、電気分解が一般的なやり方となるが、その装置は高価なものとなる。
燃料電池のスタックが高価であるのと同様に、同じような装置で作られることとなるので、製造コストが高くなる。
水があれば電気分解ができるわけではなく、水を蒸留などで不純物を取り除く必要がある。
それを考えると、燃料電池の燃料コストの上では化石燃料の上で成り立つシステムである。
当然のように、化石燃料が枯渇した場合には必要となるかもしれないが、現状で枯渇の可能性が低いので、今は高価なシステムということになる。
システム効率
燃料電池のシステム効率はそれほど高いものではない。
燃料電池の効率を上げているのは、排熱を用いたコジェネレーションシステムがあってこそである。
単体では30%~40%が限界である。
それに対して、ガソリンエンジンは50%の効率が得られるようになっている現状を考えると、素晴らしいシステムとはいいがたい。
燃料電池車両を作るよりは、水素を燃やしたほうがエンジンの製造などを考えると環境にやさしいといえる。
内燃機関で水素を燃やすと窒素酸化物が発生するので、ガスタービンなどの外燃機関で燃焼させるという方法もある。
特に中国は内燃機関を廃止しようとしているので、それでも問題が無いといえる。
なので、何が何でも燃料電池ではなく、他の方法で環境に貢献するということも考える必要性がある。
燃料電池のシステムは不要?
不要というわけではない。
地球全体を考えずに、交通が集中している都市部に関して考えれば有用である。
但し、現状のシステムよりコスト高になるという点が問題である。
通常の乗用車に適用するというよりも、公共交通機関への適用の方が適しているといえる。
燃料電池の起動と停止は効率を悪化させる要因となる。
燃料電池が普及する社会は、現状の交通機関とは少し異なった状況となるであろう。
尚、イオン交換膜型燃料電池よりは、高温個体酸化物型の燃料電池の方が本命であると私は考えている。
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