VWとFordの協業

FordとVWとの提携がVWの監査委員会(日本の取締役会と同じ機能であるが、従業員の代表が入っている委員会)で承認されたとの記事が出ています。

記事の内容

このパートナーシップは、
・2019年1月に検討開始を両社で合意
・2019年7月に正式に決定
したものです。
VWの監査委員会の承認が得られたので、間もなく正式に締結される運びとなりました。

このパートナーシップの主な内容は、
・Fordが開発する中型バン
・VWが開発する都市での配達に用いるバン
・Fordが開発する大型商用バン
・VWのEVアーキテクチャーベースの欧州FordのEV
などがある。

VWは、Fordが立ち上げVWが出資しているArgo AI(自動運転の開発会社)と同じように協業が続いていくとしている。

Fordも進展を認めており、Argo AIもVWの出資がほどなく完了するとしている。

協業の意味

VWのディーゼル排気ガスの不正のリコールによる資金不足が全く影響していないとは言えないが、自動車の新規開発に関する開発の費用増大が根底にあるのは間違いない。
現在、自動車メーカーは、電気自動車の開発と自動運転の開発の両方を進める必要が出ている。
環境問題も、欧州・北米・東アジア・東南及び南アジアなどでは大きく異なっており、そのすべてに対応するのは大変である。
全てを一つの会社で進めるのは難しい状況になってきている。

電気自動車の開発

電気自動車の開発に関しては、欧州でのディーゼル離れが進む中で、都市内では電気自動車の利用が進められている。
欧州では、全てを電気自動車にしようと考えているのではなく、LEZ(Low Emission Zone)は電気で走行するように求めている。
だから、欧州車の多くがプラグインハイブリッドとなっており、都市内部は電気で走行し、郊外ではエンジンを用いて発電して走行する形になっています。

ところが、Fordのおひざ元であるUSAでは、トランプ政権によって排気ガス規制が緩和されており、欧州Ford向けと異なる開発を進める必要が出てきています。
Fordも当初は欧州と同じようなコンセプトで電気自動車の開発を進めていましたが、現状では費用負担が大きくなってしまうことになりました。
なので、欧州Ford向けの電気自動車をVWの電気自動車アーキテクチャーベースで開発することにしたと思われます。

自動運転の開発

Fordは早くから自動運転の協業化を目指していました。
なぜならば、自動運転は、自動車の開発よりも広い技術範囲の検討が必要であり、自動車がスマホのようにサーバデータをベースに動作するシステムになります。
開発範囲が広いために、現状の自動車メーカーのみで開発することは難しい状況です。
また、Uberが事故を起こしたように、ITプロバイダーのみで実現できるものではありません。
逆にGoogleなどのように、衛星制御の専門家を集めるだけで自動運転の自動車すべてができるわけではありません。(Googleは自動車を作ろうとしているのではないと意思表明しています。Googleが狙っているのはユーザーインターフェースとクラウド部分です。スマホと同じように。Appleも同じです。)
なので、協業が必要となります。

そこで、FordはArgo AIへの出資で協業を進めている状況です。
そこに出資を決定したのがVWです。
VWはHEREにも出資していますが、ロジック開発に関してはArgo AIが必要になります。
開発費の削減になります。

今後の方向性

今後は自動車メーカー同士の協業が増えていくと思われます。
Fiat Chryslerも元CEOのセルジオ・マルキオンネが死去するまでは活発に合併・協業を模索していました。
ルノーと日産も、ルノー側から見ると同じような関係であるといえます。
単独でのすべての開発は、自動車販売台数の低下が進む状況下では、難しいこととなっています。

自動運転に関しても、事実上は自動車側の入り口がGoogleとAppleに決まってきている状況においては、自国企業内部で全てを実現することは難しいと思います。
これは、業績が悪い(VWの業績は悪くない)から協業しようというのではなく、業績が良いから協業しているというのが実態です。
日本の自動車メーカーもその範疇にあり、そのように進めないとスマホ(携帯電話)と同じ道を歩むことになると思います。

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