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かたつむりの歩み。


「たゆまざる 歩みおそろし カタツムリ」
長崎県出身の彫刻家、北村西望(きたむらせいぼう)氏の句。

一歩いっぽの歩みは遅くても、時間をかけて続けていれば、いつかかならず成し遂げる日が来るのである。
そう自分に言い聞かせてはや十数年。

周囲のひとは私が司法試験の勉強をまだ続けていることなど想像すらしていない。
確かに。
ロースクールを卒業後、法曹界に嫌気がさして一度も司法試験を受験しなかった。それから十数年のあいだ、そっちの道はきっぱり諦めた、とそんなふうに決めた時期も自分の中にあった。

でも、くるくると巡ってくる目の前のことに真剣にあたっていくうちに、1㎝ずつ軌道が変わっていって…無我夢中に日々を連ねてきた結果、立ちどまりふりかえるとその軌道は螺旋階段のようになっていた。
私はくるくるまわりながら導かれるように司法試験に再びたどり着いたのだった。
なるほど。もうこの道を行くしかないのだね、とロースクール在学中に他界した父に手を合わせながら覚悟を決めた。

この文章の流れだと、それからすぐに凄まじい勢いで勉学に励み、いまにも合格しそうなところ、もしくはもう合格しちゃいました、となっていてほしいのだけど、現実はそうはいかないものである。

とぼとぼ。のろのろ。よたよた。ぼちぼち。

なんだか力無い言葉ばかりが並んでいて笑ってしまう。
でも、これがいまの自分の歩みである。
そんな状況を情けなくも愛おしく思う。

きょうは、次女が午前中で学校が終わるので、
下校時間までに家事をひと段落させたい。
急いで食料調達に向かう。
開店時間まで近くのカフェで勉強をする。
一時間にも満たないちいさな時間を拾い集める日々。
こんなの間に合うわけない…と思う。
でも。今度こそ。
諦めるより信じるほうをえらびたい。

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