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豊洲市場歳時記 まぐろの初競り

こんにちは、さかな一代の中乃一です。

豊洲市場(東京都江東区)で5日、今年最初の取引となる「初競り」があり、青森・大間産の211㌔のクロマグロが最高値の1688万円で競り落とされた。落札額は昨年より396万円下がった。

東京新聞 2022年1月5日 07時26分

豊洲市場で初競りが行われました。競り自体は、開市日に毎日開催されているわけで、文字通り新年初回の競りということで、いにしえから、初競りは市場にとってのお祝いムードの漂う大きなイベントです。

初荷があっての初競り

新年最初の開市日に、豊洲市場に到着する荷物を初荷と呼びます。各セリ場には、今も昔も笹竹にくくりつけられた、初荷を祝う初荷旗が掲示されます。この初荷旗は、卸会社を通じて、初荷と一緒に仲卸会社へ、さらには取引のある小売店へと渡っていきますので、新年の小売店の店先で見かけた方もいるのではないでしょうか。初荷旗をはじめとした、華やかな市場の新年の風習は変わらず受け継がれています。
ぼくたちさかな一代の大人たちも、初荷が無くては商売になりません、どれだけ産地から初荷を集められるかも、普段から商売のボリュームを落とさず、産地とのコミュニケーションを欠かさない市場の役割です。初競りが注目されますが、初競りが賑わうのも、初荷があってこそってところ、覚えておいてください。

初荷旗

注目を集める落札価格

中でも、マグロの初競りは毎年のように落札価格が注目されます。数年前に最高落札額を更新した時には、現実離れした落札額と懐疑的な見方をする向きもありましたが、そこはギャップがあるからこそ、みなさんの話題になるのですから大いにやって欲しいです。

2022年の今年は、やま幸さん。テレビや新聞など、様々なメディアの対応をされていました。初競り前から、様々なメディアに取り上げられていましたし、普段はあまり表に出ない仲卸会社が注目されるのはいいことですね。もちろん、それだけ普段からそれだけの顧客を抱えられる努力をされてのことですので、こういう形で評価され、メディアへの登場はリスペクトします。

広告対価にしたらと言われますが

同じく初競り前からメディアへ登場していた、ライバルの喜代村寿司ざんまいの木村社長の明るいキャラクターと、店舗の抜群の知名度。ちなみに喜代村さんは、ぼくたちさかな一代の共同水産と同じく、仲卸会社ではなく、売買参加者です。
その後のメディアでの取り上げを考えれば、企業広告として元が取れる、なんてささやかれがちですが、自らを広告塔としてどうやってわかりやすく消費者に売るか、を常に実践する姿勢に、いつも勉強させてもらっています。今年は、まだ回収するには厳しいと判断されたのかもしれません。

その年を占う初競り

もう一つ、その年を占う意味で、初競りを注目している人もいることでしょう。
何も初競りは、マグロだけのものではありません。様々な食材の初荷が、5日は競りや入札にかけられました。今年2022年への期待を込めて、どんな価格がつけられたのか!? 市況情報は、水産業界新聞をはじめとしたメディアで公表されていますので、ご興味がある方は、そちらを見ていただくのもいいでしょう。

もちろん、初荷への競り、入札はご祝儀的な意味もあります、最高価格更新の時には豊洲移転後初とか、外的要因も加味されたでしょうし、それ込みで、市場にはその時ごとの相場感があるものです。
需要や天候、その他、毎日いろんな要素が入り混じって決まる一つの「結果」が、豊洲市場を選んで大切な荷物を送ってくれる荷主への「仕切り」という形で、こうしてメディアが注目し、みなさんにも広く知れるかたちで表れる、とても良い機会だと思っています。

マグロの初競りの結果だけを見て、2022年を予測すると、昨年に増して厳しいと映るかもしれません。でも、占いなんてものは、それをどう変えていくのか、の方が大事です。さかな一代の大人たちが、みなさんと一緒に、厳しい予測の今年の未来を、明るい今年に変えてみせます!

その他の年いちのお祭り

初荷そして初競りを、年1回の豊洲市場の歳時記として紹介しました。その他、市場には独特な年一の行事がいくつかあります。年の瀬が近づく頃に行われる、干し数の子の入札などは、そもそも競り(入札)自体が年に1回しか行われません。
こちらは、マグロのように価格を競っていく競りではなく、一発勝負の入札です。入札参加者がじっくり品定めをし、欲しい価格を決めて入札用紙を競り人に渡し、その干し数の子の一番札が決まると、落札者名を競り人が読み上げます。
個人的な想いとしては、もっと注目されても良いのですが。。

華やかな初競りの裏側で

メディア大注目の初競りですが、あまりスポットが当たらないのは、卸売会社です。はい、さかな一代の大人たちは、「東市」という企業グループに属しています。実は今年も初競り栄誉のマグロは、ぼくたちのマグロだった(少し言い過ぎですか?笑)。
冒頭の東京新聞の写真のマグロの頭に、黄色い紙で「東市1」と貼られています。数ある新聞社で東京新聞を選んだのも、それがわかりやすかったから、というのもあるのですが、是非もう一回見てみてください!

水産業界でなければ、なかなか卸売会社の立ち位置を理解しにくいかもしれませんが、この卸売会社が存在しないと市場が成立しません。全国各地、はては世界各地の産地から水産商品を集めて、豊洲市場で競りを行う側です。 日本橋魚河岸の回顧でも「荷受」として紹介しました。全国各地に中央市場は存在しますが、豊洲市場がダントツに一番な理由の一つに、この荷受企業の努力があります。消費地の中央市場は、通常1社から2社体制で運営されています。ところが、豊洲市場では7社が熾烈な競争をしています。7社の一角が東市です。

「今年も」の意味 産地と競り人との結びつき

簡単に説明すると、中央市場は、この卸売会社に属する競り人が、マーケットのニーズに応える荷物を全国の産地から集めます。
今回でいえば、東市の超ベテランの競り人が、マグロの初競りという市場ニーズにあわせて、青森県の大間という国内随一の本マグロの産地から、その時一番の本マグロを豊洲市場へ引いてきています。

ここでも競争原理は働いています。豊洲の卸売会社7社すべてがマグロを扱うというわけではありませんが、扱える卸売会社は他にもあるわけですから。各社のマグロ担当者は、全国の本マグロの産地に情報網を張り、常に水揚げの情報を集めています。産地は大間だけではないのです。場合によっては、衛星電話を使って船の上から漁師さんからの情報を得ることもあるほど。卸売会社は、魚種ごとスペシャルな担当者がいて、こういったやり取りを年中、それこそ24時間やっています。

対して産地からしても、市場は豊洲市場だけではありません。産地に近い地方市場もあれば、全国各地に巨大消費地を抱える中央市場はある。今の時代なら、海外にダイレクト出荷だってあり得ます。産地にしたら、苦労して水揚げした魚を、一番いい条件で仕切ってもらえる市場へ出すのが経済合理性のある話です。

なぜ豊洲市場だったのか、そして東市だったのか?

それは、普段からの、卸売会社の競り人(担当者)と、産地とのリレーションシップ、信頼関係に他なりません。
相互の情報量、普段からの取引ボリューム、公正で適正な仕切りのもとに、卸売会社と産地との信頼関係は築かれています。

華やかな初競りの裏側で、ここ一番の魚を託すのに相応しい、と判断され、初競りに相応しい本マグロを託される、この卸売会社の存在も覚えておいてくださいね。

「今年も、うちの1番マグロでしたよ。」決して表舞台に立つことはないけれど、本マグロに貼られた黄色い紙きれ1枚の主張、かっこいいです。

2022年 関わる全ての人へのリスペクトを持って

SDGsが社会課題として掲示される現代社会。海を取り巻く社会課題は多いけれど、水産業界が注目を浴びる機会は決して多いとは言えません。
さかな一代の大人たちの新年第1回目の投稿として、メディア注目のマグロの初競りの裏側を絡めて記事に取り上げてみました。
扱う話題として、メディア程タイムリーではないですが、2022年もみなさんに、さかな一代の大人たちのかかわる日常を発信していきます。

そして「なんとなくマグロが食べたくなったな。」とか、みなさんにあれこれ思っていただけたら嬉しいです。

是非、ECサイトものぞいてみてくださいね。

それでは、また次回をお楽しみに!

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