建築物にコンテナを使うメリットとは?
昨日、furusatto(フルサット)の企業視察で、最初にこのような主旨の質問をいただいた。
「以前、建築関係者から、あるプロジェクトをコンテナでやろうとしたが、コスト面で最終的に木造になったという話を聞いた。コンテナでやるメリットは何か?」
その場で答えた回答に少し加筆してみた。
海外のコンテナ建築事例は、海上コンテナのリサイクルという視点で語れる事も多い。しかし、日本では法律上、海上コンテナを建築にリサイクル活用するのは難しい。
フルサットのコンテナは、コンテナ工場で建築用に作ったコンテナである。
したがって、安いから、環境に配慮して、コンテナ建築にしましたという話は成り立たない。
フルサットで、それでもコンテナでやる意味はなんだったのか?
一言で言えば、時間軸で考えるデザイン。
フルサットでは、公共や普通のデベロッパーが入らなかったから必要であり意味があった。
フルサットは、小さな民間企業がお金を調達して、コンテナ一つから小さなまちを作ったプロジェクト。
原っぱに置かれた、素の状態に近いコンテナ一つを事務所にしてスタート。
外と中を隔てる壁は、1.6ミリの鉄板一枚。
このコンテナの壁に断熱工事がされたのは、7年後である。
同じように、素の状態の空っぽのコンテナが、開発の段階に合わせて様々な用途に活用されてきた。
コンテナは、建築物の未完成な状態ではない。
コンテナは、コンテナである。
コンテナだから、壁が1.6ミリの鉄板でも、入口のサッシがなくても、受け入れられてきた。
(今は、全ての店舗に入口のサッシやドアがついた。)
本来、物流のために最適化された箱であり、特定の建築物の用途に最適化された箱ではない。
だからこそ、主体的にかかわる人が現れて、自由に様々な人の居場所を作りだす素地となってきたように感じている。
コンテナとコンテナの隙間も、最初は草むらだった。
歩きやすいように、一部DIYでコンクリートを打ったりしていたが、コンテナの置かれた原っぱのように、子どもたちがかけ回っていた。
コンテナの壁に磁石で展示物を貼り付け、屋外ギャラリーになった事もある。
最近は、このすき間に、小さなコンテナが置かれて、部屋が増築されている。
フルサットは、最初から、飲食店、飲食店街として、仕立てられたコンテナ建築ではない。
小さな民間企業がはじめたから生じた、時間のすき間、敷地のすき間を有効に活用することが出来たのは、コンテナの効能だったと思う。
公共や普通のデベロッパーが入れば、こうしたすき間を極力生まないようにするだろう。
敷地と予算と与条件が与えられて、それを最適化する建築物を作るならば、コンテナを使うメリットは薄い。
フルサットは、当初から時間軸を持った成長と変化をコンセプトにしており、コンテナにメタボリズムのカプセルのイメージを重ねていた。
あいまいな境界線や、使う人が主体となり、ボトムアップで生み出される全体像など、メタボリズムに触発されたコンセプトも多いと感じている。
海上コンテナのリサイクルで語れない、日本的なコンテナ建築だと思う。
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