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【第一回】ファンド・オブ・ファンズ「T. Rowe Price Global Impact Equity Fund」をご紹介🌎

こちらのnoteは運用チームメンバーが“自由に”リレー形式で書いているものです。本日はなかの世界成長ファンドで投資をしている、T. Rowe Priceの「Global Impact Equity Fund」をご紹介します。

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FOFについておさらい

なかの世界成長ファンドはファンド・オブ・ファンズという形式で、グローバルな投資運用会社が提供する機関投資家向けのファンドに投資をしています。

なかのアセットマネジメント作成

以上の画像のように、個人投資家の皆さまから預かったお金を、さらに別の投資信託に投資しています。

その投資先の一つが、T. Rowe Priceの「Global Impact Equity Fund」です。


T. Rowe Priceについて


皆さまはティー・ロウ・プライスという運用会社をご存知でしょうか?

ティー・ロウ・プライスは、1937年に設立した、米国ボルティモアに本拠を置くグローバル投資運用会社です。株式、債券、マルチアセット等の多岐にわたる資産クラスにおいて、投資運用サービスを提供しています。

ティー・ロウ・プライス・ジャパン株式会社HPより引用


ティー・ロウ・プライスは1937年に、トーマス・ロウ・プライス・ジュニア氏によって創業されました。

Thomas Rowe Price, Jr. (ティー・ロウ・プライス・ジャパン株式会社HPより引用)


顧客第一主義を掲げ、一貫した理念と規律のある運用手法で、長期投資家から熱い支持を受ける独立系運用会社です。グループ全体の運用資産残高は1.63兆ドル(2024年9月末時点)に上り、グローバルサービス拠点を17か所を有しています。

当社のチームメンバーは、顧客に対する自らの義務を強く意識しなければなりません。良い結果を出し、世間の信用を得ることを、何よりも真摯に願うことが大切です

                                                                                      - Thomas Rowe Price, Jr.

ティー・ロウ・プライス・ジャパン株式会社HPより引用

顧客第一主義はもちろんのこと、独自のファンダメンタル・リサーチ、チームワークを重視する協働の企業文化、長期的なアプローチを企業理念としています。

ちなみにnoteの見出し画像のぬいぐるみは、ティー・ロウ・プライスのアイコンのモチーフであるビッグホーン・シープです。ビッグホーン・シープは様々な環境下で生存可能で、非常に敏捷な動物とのこと。

「どのような市場環境でも強固なファンダメンタル・リサーチを基礎に、徹底したリスク管理を行うことで投資家の皆さまに長期的に安定したパフォーマンスをお届けすることを誓う」という思いが込められています。

ティー・ロー・プライス・ジャパンのHPはこちらです🐏


Global Impact Equity Fundについて


向かって右側:Hariさん 左側:なかの世界成長ファンドPMの居林

この度、なかの世界成長ファンドで投資中の「Global Impact Equity Fund」のポートフォリオマネージャーであるHari Balkrishnaさんと、リードポートフォリオアナリストであるFatna Chelihiさんに弊社までお越しいただきました。

投資方針

Global Impact Equity Fundは主として海外の社会と環境にプラスになる事業を行い、株価が将来にわたって上昇すると期待される企業に投資するファンドです。

本ファンドでは、主に二つの目標を目指します。
一つ目は「環境や社会にプラスのインパクトをもたらすこと」、二つ目は「財務リターン」です。
その両方を実現する企業が、「サスティナビリティに関する課題を解決する企業」なのです。

例えば、リサイクルを可能にする、温室効果ガスを削減する、新興国において社会的公平性をもたらす、ヘルスケアソリューションを提供する会社などがあります。

以上の二つの条件を満たす且つ、マーケットリーダーである企業に投資をします。
ポートフォリオマネジャーのHariさんは、このような企業には「長期的な成長余地があり、インデックスを上回る売上と利益の成長を見込むことができると信じている」とお話しされました。

上位5銘柄のみですが、Global Impact Equity Fund の銘柄構成は以下の通りになっています。
【マンスリーレポート】なかの世界成長ファンド にて各ファンドの組入上位5銘柄を公開しております)

Globa Impact Equity Fundの組入上位5銘柄


Global Impact Equity Stock を選ぶ手順

投資銘柄のスクリーニングプロセスは以下の通りです。

ティー・ロウ・プライスより提供

以下に手順をご説明します。

1:MSCI AC World Indexに組み入れられているおおよそ2900銘柄をスクリーニングの対象とします。

2:MSCI ACWIの中から、社会や環境に良い効果をもたらす事業からの収入が全社売上の50%以上となる企業を選びます。例えば温室効果ガスの削減、循環型社会への貢献、ヘルスケアの促進などです。売上の「50%以上」とする理由は、グリーンウォッシング(見せかけのエコ)のリスクを防ぐためです。その結果、ユニバース(投資選定対象となる銘柄群)には400-450銘柄が残ります。

💡ネガティブスクリーニング(特定銘柄の排除)も実施
銘柄選定の過程で、ネガティブスクリーニングを実施します。これはアルコール、たばこ、武器製造に関連する企業に投資をしないためです。MSCI ACWIの約10%がこのような企業に該当します。その結果、およそ90%がユニバースに残ります。

4:地球や社会へのインパクトが測定可能であることが、投資先企業の必要条件です。そのためにFive Dimensions of Impactのフレームワークを用いて、ユニバースに残った全ての株式に対して、5つの観点から質問をします。

ティー・ロウ・プライスより提供

①そのインパクトのゴールは何か?(What?)
②誰が影響を受けるか?(Who?)
③インパクトの規模はどのくらいか?(How much?)
④企業の貢献度合い(Contribution)
⑤リスク(負の外部性)(Risks)

Five Dimensions of Impactの実例

 実際の投資先の一つ「Nu Holdings」の Five Dimensions of Impactによるインパクト測定例をご紹介します。


🔍Nu Bank(Nu Holdings)とは

世界有数のデジタルバンキングをブラジルを中心に展開。1億人を超える顧客数を抱えており、実店舗をもたずデジタルバンキングに特化することでコストを抑え、他社比較低い手数料で金融サービスを提供していることを背景に急成長している企業です。

2021年11月1日、中南米のFinTech企業が上場に向けた目論見書を米国証券取引委員会(SEC)に提出した。その名はNuBank。ブラジルを中心に、口座やクレジットカードを提供するプレーヤーだ。ラテンアメリカという潜在的に巨大なマーケットをターゲットとしたFinTech企業の代表格という存在感もあり、その動向は大きな注目を集めている。

「中南米で銀行を上回る体験を作り上げたNuBankという革命」 - 日経クロステック

中南米で銀行を上回る体験を作り上げたNuBankという革命 | 日経クロステック(xTECH)

①そのインパクトのゴールは何か?(What?)
→金融包摂の推進(ファイナンシャル・インクルージョン)

🔍金融包摂(きんゆうほうせつ、ファイナンシャル・インクルージョン)とは
SDG8 働きがいも経済成長も (8.10 国内の金融機関の能力を強化し、全ての人々の銀行取引、保険及び金融サービスへのアクセスを促進・拡大する)

SDGグローバル指標(SDG Indicators)


誰もが取り残されることなく基本的な金融サービスへアクセスできることを指します。主に途上国で暮らす人々の中には銀行口座や与信(クレジットカードやローン)へのアクセスがなく、結果として貧困サイクルから抜けられないといった問題が指摘されています。基本的な金融サービスを受けられることで、経済活動が可能となり、貧困サイクルから脱するきっかけを与えることができます。
参照:https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/statistics/goal8.html

②誰が影響を受けるか?(Who?)
→個人、特に銀行口座を所有していない人

③インパクトの規模はどのくらいか?(How much?)
→7500万人、11,300 millionドルの個人ローンとクレジットカードローン残高

④企業の貢献度合い(Contribution)
→ローコストでNuデジタルサービスを受けられる点、Nuの実質金利(手数料も含めた借り入れ料率、APR)は業界平均以下である点

💡ブラジルではクレジットカードの実質金利は過去平均で440%にもなっています。これはブラジルの政策金利が13.25%と高いことに加え、高インフレとクレジットカードの金利に対する規制が乏しいことに起因しています。日本では政策金利は0.5%、加えて法律で借り入れに対する金利の上限は15~20%までと決められています。(政策金利はいずれも2025年1月末時点。)
出所:https://www.statista.com/statistics/1452856/credit-card-apr-in-brazil/

⑤リスク(負の外部性)(Risks)
→顧客のファイナンシャルリテラシーが欠如しているかもしれない点、ブラジルにおいては依然としてAPRが高水準である点

以上のFive Dimensions of Impactについて、34名のアナリストが調査を行い、毎週開催されるMTGにて議論されます。またFive Dimensions of Impactの過程を通じて、各企業のインパクトモデルを作成し、KPIを設定します。

例えばNu Holdingsの場合、初めて金融システム(クレジットカードやローン)を利用した顧客数をKPIとしています。

またマネジメント層であるCEOやCFOに、エンゲージメントが可能であることも非常に重要です。


5:450のユニバースに対して、ファンダメンタルリサーチをします。今後5年間の売上を予測をし、セルサイドのコンセンサスを上回る収益とリターンを目指します。

Global Impact Equity Fundは、新しい技術に投資をするVCファンドではなく、すでに確立されたビジネスモデルを持つ企業に投資して、まだ市場がその企業が提供する価値に気が付いていないとき、その会社を良い株式であると認識するとお話してくださいました。

6:以上の過程で55-85銘柄が選ばれます。

以上のように厳しい選別を潜り抜けた銘柄を、もう一つご紹介します。


投資先事例:Trane Technologies

Trane Technologies は、商業施設・住宅向けの省エネ性能を高めるHVAC(空調)機器の主要メーカーです。また、食品廃棄物削減に貢献する低温管理型サプライチェーン(コールドチェーン)の改善にも取り組んでいます。同社は2030年までに10億メトリックトン(1兆キログラム)の温室効果ガス排出削減を目指すGigaton Challengeにコミットしています。

2021年の日本の温室効果ガス総排出量が約11億メトリックトンなので、Trane Technologies は日本一国の温室効果ガスを削減すべく取り組んでいる企業ということです🏭

Five Dimensions of Impact
①そのインパクトのゴールは何か?(What?)
→商業・住宅用不動産および輸送・冷蔵向けHVACソリューションの省エネ効率向上

②誰が影響を受けるか?(Who?)
→地球、人間

③インパクトの規模はどのくらいか?(How much?)
→2022年に4300万トンのCO2排出削減

④企業の貢献度合い(Contribution)
→業界をリードする2030年サスティナビリティ目標(カーボンニュートラル、埋め立て廃棄物ゼロ、2019年比で10%のエネルギー使用量削減)

⑤リスク(負の外部性)(Risks)
→HVAC(空調)システムは従来型の冷媒から低炭素冷媒への移行が必要(ハイドロフルオロカーボン(HFC)冷媒の段階的廃止への対応が求められる)


🚨Impact投資の将来は?

トランプ大統領の当選によって、アメリカでは脱炭素の動きが下火になっているように感じられます。そのような環境でImpact投資はどのような影響を受けるのか?このままImpact投資を続けても大丈夫なのか?Hariさんに率直に伺ってみました。

Hariさんはトランプ大統領の当選や現在の脱・脱炭素化の動きがあったとしても、「サステナビリティや脱炭素が地球にとって非常に重要である」「サステナビリティと脱炭素化の将来を確信している」と話し、Impact投資の将来は明るいと考えらえているとのことでした。

そのように考えられる理由は、主に2つあります。

①例えアメリカの政治様相が変わり、サステナビリティの目標が掲げられなくなっても、Global Impact Equity Fundが投資する企業は顧客にコスト削減などのソリューションも提供しているため、顧客はその企業のサービスを引き続き使用すると考えられます。例えば省エネソリューションを提供する企業のサービスを利用することで、顧客は電気代を抑えることができるからです。サステナビリティの潮流関係なく、その製品や企業はうまくいくはずだと考えています。

②例えアメリカの政治様相が変わり、サステナビリティの目標が掲げられなくなっても、AI革命やデータセンター、電気自動車に電力を供給するためには太陽光などを用いたエネルギー生産が非常に重要です。太陽光などを用いたサステナブルなエネルギー生産は、平準化すると化石燃料由来のエネルギーよりもコストが低いからです。サステナビリティの動向はさておき、企業は経済的に合理性のある選択を行うので、その点でHariさんはImpact投資の将来性を確信されているとお話されました。


今回は、T. Rowe PriceのGlobal Impact Equity Fundをご紹介しました。
なかの世界成長ファンドへの投資を通じて、皆さまの大切なお金が「地球や社会にとって良いインパクトを与え、同時に経済的なリターンを追求するGlobal Impact Equity Fund」に投資されています。

私はHariさんとFatnaさんのお話を伺ったことで「社会や地球にとって良い影響をもたらす会社に投資をしている」と改めて認識することができ、とても嬉しい気持ちになりました。

今回、本noteの執筆にあたり、T. Rowe. Priceの皆さまに多大なるご尽力を賜りました。深く感謝申し上げます。

🌎ファンド・オブ・ファンズ紹介🌎
月に一回のペースで、なかの世界成長ファンドで投資をしているファンド・オブ・ファンズを詳しくご紹介します。
(文責:FoFアナリスト 谷)

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この記事は情報提供を目的として、なかのアセットマネジメント株式会社によって作成された資料であり、金融商品取引法に基づく開示資料ではありません。
投資信託は値動きのある有価証券等に投資しますので基準価額は変動します。その結果、購入時の価額を下回ることもあります。
また、投資信託は銘柄ごとに設定された信託報酬等の費用がかかります。各投資信託のリスク、費用については投資信託説明書(交付目論見書)の内容を必ずご確認のうえ、ご自身でご判断ください。
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