見出し画像

「V字回復」の勘所(前編)

こちらのnoteは運用チームメンバーが“自由に”リレー形式で書いているものです。
=========================
 
株価には色々な分解の仕方がありますが、シンプルな公式に「EPS(1株当たりの純利益)×PER(株価収益率)」というものがあります。

ご存知の方も多いかと思いますが、これは企業が稼いだ「利益」に対して、市場がその利益の何倍の株価で売買しているかを表したものです。

例えば、投資した企業A社の「EPS」が100円で、市場が「PER」を10倍で評価した場合、1株の株価は1,000円となります。

では、株価が上がるには何が必要でしょうか。

この公式に則ってシンプルに言い換えると、「利益」か、あるいは市場からの「期待」のいずれかを上げる必要があります。

「利益」の方はわかりやすいですが、市場からの「期待」は若干わかりにくいですね。

まず「市場」とは、不特定多数の投資家が参加する「場」であり、その企業の株式に対する需要と供給のバランスによって取引が成立し、株価が形成されます。

ちなみに「市場」は、その不特定多数の投資家の集合体が、まるで意思を持って動いているかのように見えるため、「ミスター・マーケット」といった特定の人物に見立てて表現する著名投資家※もいます。(※「バリュー投資の父」と言われているベンジャミン・グレアム氏の表現)

そして、「市場」がその企業の利益を何倍で評価するかは、将来の利益成長がどれほど「期待」できるのかという考えを反映しています。

例えば、これから「利益」が大きく成長するのならば、現状の「利益」は小さくても、「期待」によって高い株価がつくことが予想されます。
別の考え方をすると、これから大きな不況がやってくるような局面においても、利益を維持するだけの企業への「期待」があれば、他の企業と比べて株価は下がらないことが予想されます。

厳密に言うと、市場の「期待」は相対的なもののため、金利動向などのマクロ環境や投資家の心理状態などに左右されますが、ここではその考え方は一旦置いておき、株価は「現状の利益」と「将来の期待」の掛け算から成るものと考えていただければと思います。

それでは、「現状の利益」と「将来の期待」の両方が上がったとしたら、どうでしょうか。両者の掛け算によって、株価は大きく上昇することが予想されますね。

「そんなに上手い話はあるのか?」と思われたかもしれません。

たしかに、市場という多くの投資家の集合知は、あらゆる情報を即座に織り込むと言われており、そんなチャンスは数少ないかもしれません。
しかしながら実際には、「現状の利益」も「将来の期待」も上がる局面は複数存在しています。

その一つが今回ご紹介する「V字回復」です。

「V字回復」とは、Vの字が示すように、業績が大きく落ち込んだ後、底を打って、そこから急上昇する軌跡を描きます。

業績が落ち込む局面では、当然「現状の利益」も急降下することとなり、市場から見た「将来の期待」も悲観に包まれることが予想されます。
そこから底を打ったとしても、「将来の期待」がなくては、本当の底かどうかは「現状の利益」が回復してこない限り、なかなか市場に信じてもらえず「将来の期待」も回復してこないことになります。

この「確からしさ」に関して、悲観に傾いた半信半疑の市場と実際の経営環境にタイムラグができやすいという特徴があります。

「V字回復」が成功した暁には、「現状の利益」と「市場からの期待」の双方が上昇し、株価も急上昇していきます。

実際に「V字回復」を達成した企業はいくつもあります。その一方で、「V字回復」を達成できず、残念ながら破綻に追い込まれたり、買収されてしまったりした企業が多いことも事実です。

それほどまでに、業績が一旦低迷してしまうと、それを立て直すのが容易でないことがわかります。

逆説的に、「V字回復」を成功させる企業に投資をすることによって、大きな株価上昇によるリターンを獲得することができると考えています。

ここまでお話ししてきて、「だったら、どんな企業が「V字回復」を成功させるのか?」という疑問が湧いてくるかと思います。

企業経営には、どんな時にでも当てはまる絶対的な法則はありませんが、次回はこれまでの企業調査の経験から、筆者が考える「V字回復」の成否を分ける要素をお話しさせていただこうと思います。

ポートフォリオマネジャー 兼 シニアアナリスト  佐藤 栄二
 
―――――――――――――――――――――――――――――――
この記事は情報提供を目的として、なかのアセットマネジメント株式会社によって作成された資料であり、金融商品取引法に基づく開示資料ではありません。
投資信託は値動きのある有価証券等に投資しますので基準価額は変動します。その結果、購入時の価額を下回ることもあります。
また、投資信託は銘柄ごとに設定された信託報酬等の費用がかかります。各投資信託のリスク、費用については投資信託説明書(交付目論見書)の内容を必ずご確認のうえ、ご自身でご判断ください。
商号:なかのアセットマネジメント株式会社(設定・運用を行います)
金融商品取引業者:関東財務局長(金商)第3406号
加入協会:一般社団法人投資信託協会