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「V字回復」の勘所(後編)

こちらのnoteは運用チームメンバーが“自由に”リレー形式で書いているものです。
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前回は、株価を表現するシンプルな公式「EPS(1株当たりの純利益)×PER(株価収益率)」を紹介したうえで、EPS(現状の利益)とPER(将来の期待)の両方を高める「V字回復」について、お話しさせていただきました。

今回は、どんな要素があれば「V字回復」を成功させる可能性が高いのか、筆者がこれまでの企業調査の経験から、意見を述べたいと思います。

まず、「V字回復」とは、業績が大きく低迷した後、底を打ち、その後急激に回復することでしたね。

つまり、「業績の低迷」が前提条件として存在することとなり、その企業の「業績の低迷」の「真因」は何なのかを探ることが重要になります。

例えば、「市場の縮小」などと、それっぽい理由を見つけて片付けてしまうのは簡単なことですが、投資家の視点として「本当にそうだろうか?」という健全な懐疑心が必要です。

なぜならば、市場規模が縮小する業界の中でも、継続的に利益を上げ続けている企業は確実に存在しているからです。
その「違い」に思いを巡らすことなく、単純な「答え」を得ようしていては、問題の「真因」から遠ざかってしまいます。

そして、もう一つ考えるべき大きな要素として、企業は「人」から成っているという当然の事実に目を向け、業績低迷の「根っこ」にある「人」の問題に焦点を当てることが重要です。

人間は、根本的に「易きに流れる」存在です。
とりわけ成功体験を有する企業は、その分余裕もあり、そうした傾向が出やすいと言えます。

経営者をはじめとしたマネジメント陣が、ミッションやパーパスを組織に浸透させ、企業価値向上のカルチャーを醸成し続けなくては、あっという間にその企業は低迷してしまいます。

それほどまでに経営者に課される責任は重く、換言すれば「経営者の覚悟」がその企業の将来を左右するということです。

沈滞している企業は、易きに流れた末にすっかり「弱い組織カルチャー」に染まってしまいます。
従業員は内向きになった結果、本当にみるべき顧客や競合がないがしろになってしまっていることが実に多いのです。

このように一度「弱い組織カルチャー」に染まってしまうと、それを「強い組織カルチャー」に変えていくのは、容易なことではありません。

なぜならば、これまで業績低迷の「痛み」も他人事のように感じず、ぬるま湯のような環境で過ごしてきた組織は、急に「変われ」と言われても、反発や抵抗を招くだけだからです。

そのため、「この道のりを歩めば輝かしい未来が待っている」という納得感のある明確な「戦略」と覚悟を持った「実行」が不可欠です。
「戦略」には、問題の「真因」を見極めたうえであるべき戦略を構築する力が、「実行」には、人の意識を変えて組織カルチャー好転させる泥臭い腕力が必要です。

この「戦略」と「実行」が渾然一体となることで、従業員一人ひとりの意識に「このままいくと会社が潰れて勤務先がなくなる」という自分事レベルの危機感が芽生え、それが改革の最初の大きな推進力になっていきます。

仮に経営トップがすべてを兼ね備えていなくても、志を共にするマネジメント陣が一枚岩となって、その役割を果たすことで「V字回復」の成功確度は高まります。

繰り返しになりますが、「易きに流れる」人間が変わることは簡単なことではありません。

やはり一丁目一番地は「何としてもやり遂げる」という「経営者の覚悟」に他ならないと考えています。
そのような経営者の強い想いによって、従業員の心に火が灯り、それが「組織カルチャーの強靭さ」に繋がっていくのではないでしょうか。

そして、顧客のために徹底的にやり抜く「強靭な組織カルチャー」は、競合企業を凌駕し、やがて業績を好転させていくことが予想されます。

投資家の視点では、まさにその時に「現状の利益」と「将来の期待」の上昇の掛け算によって、株価は急上昇し、大きなリターンを獲得できると考えています。

「なかのアセットマネジメント」の運用チームは、投資先企業様と直接面談したうえで信頼関係を構築することに努めています。

そのようにして培った関係性のなかで、「経営者の覚悟」を肌で感じ、時に緊張感を持ってエンゲージメントを行うことによって、リターンを最大化させる努力を惜しみません。

このような取り組みを短期の時間軸で考えるのは難しいことですが、「長期投資」という旅の中で、受益者の皆様とともに投資先企業様の飛躍を感じていければと思っています。

ポートフォリオマネジャー 兼 シニアアナリスト 佐藤 栄二
 
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