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感情に名前をつける作業を一生していくの?

先ず自分がいる。そして、他者がいる。さらに他者はつながる。他者が複数存在するコミュニティが在る。

言葉は認識の手段のひとつ。されどそれ以上の価値を置く人間は多い。私も例に漏れない。言葉に夢を見、酔いしれ、時には打ちひしがれ、せっせせっせと紡いでは解き、迷い、幾度も失い、そうして愛してやまない。

今年も終わりますね。皆さまどうも、たくさんの言葉をありがとうございます。来年もよろしくお願いしたい所存でございます。


『帰途』/田村隆一

言葉なんかおぼえるんじゃなかった
言葉のない世界
意味が意味にならない世界に生きてたら
どんなによかったか

あなたが美しい言葉に復讐されても
そいつは ぼくとは無関係だ
きみが静かな意味に血を流したところで
そいつも無関係だ

あなたのやさしい眼のなかにある涙
きみの沈黙の舌からおちてくる痛苦
ぼくたちの世界にもし言葉がなかったら
ぼくはただそれを眺めて立ち去るだろう

あなたの涙に 果実の核ほどの意味があるか
きみの一滴の血に この世界の夕暮れの
ふるえるような夕焼けのひびきがあるか

言葉なんかおぼえるんじゃなかった
日本語とほんのすこしの外国語をおぼえたおかげで
ぼくはあなたの涙のなかに立ちどまる
ぼくはきみの血のなかにたったひとりで掃ってくる

感情に名前をつけることは、帰すべき一滴の血の色を失うということなのではないだろうか

きょうの曲⑭ ・色彩のブルース/EGO-WRAPPIN'

どんな言葉を並べたところで、それらが陳腐に霞んでしまう。名曲の名曲たるや。可能性への挑戦権すらいまは持たない

アルコールの川をゆっくり渡る

刹那か それとも永劫か


慈しむ心に今だけの名を この先も大切にするために

それでは、良いお年を。


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