2023年時点、量子アニーリングがクラウドで使えるサービス

量子アニーリングマシンをクラウドで利用できるサービスとして、以下のシステムが挙げられます。これらは、主にD-Wave Systemsが提供する量子アニーリング技術を利用できるプラットフォームです。


1. Amazon Braket

Amazon Braketは、AWSが提供する量子コンピューティングサービスで、量子アニーリングを含むさまざまな量子計算リソースを提供しています。

  • 特徴:

    • D-Waveの量子アニーリングマシンをクラウド上で利用可能。

    • 他の量子デバイス(ゲート型量子コンピュータ)も同一プラットフォームで利用可能。

    • 実験結果をAWSの分析ツールやストレージサービス(S3など)と連携可能。

  • 費用:

    • D-Waveマシンの利用は、計算リクエスト単位で課金。

    • 初期無料枠もあり、試用が可能。

  • 公式サイト: Amazon Braket


2. Leap (D-Wave Systems)

Leapは、D-Waveが直接提供している量子クラウドプラットフォームで、D-Waveの量子アニーリングマシンを使うための専用サービスです。

  • 特徴:

    • D-Waveの最新世代量子プロセッサ(例えば Advantage™)を利用可能。

    • 開発者向けのツールやサンプルコード、ドキュメントが充実。

    • Pythonライブラリ「Ocean SDK」を使った開発が可能。

    • 無料クレジットが提供されるため、初めての利用者にも優しい。

  • 費用:

    • クラウド上で計算を実行するための時間単位で課金。

    • 無料枠(20秒間の量子計算)を提供。

  • 公式サイト: D-Wave Leap


3. Azure Quantum

Microsoftが提供するAzure Quantumは、量子コンピュータと量子アニーリングをクラウドで利用できるプラットフォームです。

  • 特徴:

    • D-Waveの量子アニーリングマシンにアクセス可能。

    • 他の量子技術(ゲート型量子コンピュータなど)や量子シミュレータも利用可能。

    • Azureクラウドサービスと統合されており、大規模データ分析に適している。

  • 費用:

    • 利用料金は、量子プロセッサの種類や計算時間に依存。

    • 詳細な料金は公式サイトで確認可能。

  • 公式サイト: Azure Quantum


利用の流れ

  1. アカウント登録: いずれかのプラットフォームにサインアップし、必要なクレジットカード情報を登録します。

  2. 開発環境の準備: 各プラットフォームが提供するSDK(例: Ocean SDK, Amazon Braket SDK)をダウンロードし、Pythonなどのプログラミング言語で利用するための環境を整えます。

  3. 量子計算の実行: 問題を定式化し、プラットフォームに計算リクエストを送信します。

  4. 結果の取得: 計算結果を受け取り、問題解決や分析に活用します。


富士通のデジタルアニーラ(Digital Annealer)も、量子アニーリングに似た手法を用いて組合せ最適化問題を解く技術として知られています。ただし、厳密には量子アニーリングではなく、クラシカル(古典的)な計算技術に基づいています。そのため、量子コンピュータの課題であるノイズや低温環境などの制約を受けずに利用できる利点があります。


デジタルアニーラとは?

デジタルアニーラは、量子アニーリングの考え方を参考にして設計された、専用ハードウェアによる高速組合せ最適化ソリューションです。富士通が独自に開発したもので、次のような特徴があります:

  • 量子ビットを使用しないクラシカル計算技術

    • 古典的な半導体技術を用いて、量子アニーリングに匹敵する計算を実現。

  • 常温で動作

    • 量子コンピュータのような極低温環境が不要で、既存のデータセンターに容易に設置可能。

  • スケーラブルなアーキテクチャ

    • 問題サイズに応じてスケールアップ可能。


デジタルアニーラの利用方法

富士通のデジタルアニーラは、主に以下の2つの形で利用できます:

1. クラウドサービス

富士通はデジタルアニーラをクラウド経由で提供しています。このサービスを利用することで、専用ハードウェアを持たずに最適化問題を解決できます。

  • プラットフォーム: Fujitsu Cloud Service K5 など。

  • 対象分野:

    • 配送ルート最適化(物流業界)

    • 金融ポートフォリオ最適化

    • 製造ラインのスケジューリング

    • 分子設計や新薬開発

2. オンプレミス導入

専用ハードウェアを顧客のデータセンターに導入することで、セキュリティやプライバシー要件を満たしながら利用することも可能です。


デジタルアニーラの強み

  1. 高精度な組合せ最適化
    デジタルアニーラは、数百~数千の変数を持つ大規模な組合せ最適化問題を高速で解決できます。

  2. 量子コンピュータよりも実用的
    量子アニーリングマシンは特殊な環境(極低温)が必要ですが、デジタルアニーラはクラシカル計算技術を使用しているため、既存インフラで運用可能です。

  3. 応用分野の広さ
    製造、物流、金融、医療など、幅広い分野で利用されています。


富士通デジタルアニーラを利用するには?

  1. 利用申し込み
    富士通の公式ウェブサイトや営業窓口から、クラウドサービスの利用を申し込むことができます。

    • 富士通公式サイト:Fujitsu Digital Annealer

  2. SDKの導入
    富士通は専用の開発ツール(SDK)を提供しており、Pythonなどのプログラミング言語で最適化問題を定義し、クラウド上で実行できます。

  3. トライアルプラン
    初めての利用者向けにトライアルが提供されることもあります。


デジタルアニーラと他のクラウドサービスの比較

サービス名技術特徴提供企業富士通デジタルアニーラクラシカル(量子に非依存)常温動作、高速な組合せ最適化富士通Amazon Braket量子アニーリングD-Waveやゲート型量子コンピュータも利用可能AWSD-Wave Leap量子アニーリングD-Wave専用、無料クレジットありD-Wave SystemsAzure Quantum量子アニーリング+ゲート型Azureクラウドと統合可能Microsoft


まとめ

富士通のデジタルアニーラは、量子アニーリングの考え方を応用したクラシカルなソリューションであり、量子コンピュータが直面する課題を回避しながら、現実的な組合せ最適化問題を高速に解決できます。クラウドサービスとして利用できる点も魅力的で、幅広い分野に適用可能です。

興味があれば、公式サイトをチェックし、トライアルプランでその性能を体験してみてください!

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