DTM ソフトメーカーへの印象 (Native Instruments)
ここではDTM音源やプラグインを開発提供しているメーカーの個人的な印象を書いてみます。長年DTMをやってきた上での主観的印象です。音源・プラグイン選びの参考になれば幸いです。
ソフトメーカー選びで大切なこと、それは相性。
個人的には、音源やプラグインは、品質や利便性はもちろん大事ですが、一番大切なのは自分との「相性」だと思います。
ここで言う相性というのは、自分自身の制作スタイル、楽曲の方向性、制作環境などとの適合性という、実利的な面に加え、プラスアルファとして、個人的な「フィーリング」のようなものも含みます。フィーリング、つまり論理を超えた、なんとなく気に入るか、気に入らないか、というあやふやな感情のことです。ある程度DTMを続けていると、市場の評価が高く、明らかに良い製品であっても、導入してみたらなんとなく自分には合わない、という製品に出くわすことがあります。そういうものを、皆が良いと言うからという理由だけで、無理して買ったり、使い続けたりすることは、精神にもお財布にも、健全ではありません。音源・プラグイン選びの参考として、自分と製品との相性問題にどう向き合うかについても、少し触れてみます。
筆者はゲーム音楽系、オーケストラ系メインの制作をしていますので、その方面に偏ったソフトメーカーへの主観的印象を正直に記します。ただ、なるべく多くの人が使うであろうソフトメーカーを中心に書いてみます。
主観を抜きにしたメーカーごとの特徴、注意点などは別で記事にしたいと思います。
Native Instruments
安定感・信頼度が高い
あらゆるDTMユーザのスタンダード的な存在として有名なメーカーです。あらゆるジャンルに対応するソフトを開発販売しており、それらを総合音源 KOMPLETE というフルパッケージにして販売することによって、DTM界隈では際立った存在感を放っています。ひとつひとつの製品が、初心者にもとっつきやすい使いやすさや創造性を優先した仕様になっており、バグも少なく、安心感があります。デザインもかっこよく、新しい音源を試すときのワクワク感は強いです。新商品の大体は毎回、KOMPLETE がアップデートされる度にパッケージングしてくれますし、半額セールもたまにあり、サービス精神が旺盛なところが非常に好印象です。また、各製品のマニュアルをしっかり用意してくれているというのも素晴らしいです。メーカーによっては、マニュアルを用意せずyoutubeで簡単に紹介するだけ、というところもありますので、そういうところは少し信頼度が落ちます。私は英語に抵抗がないので、わからないところはすぐマニュアルを参照して言語レベルで理解し、次忘れたときのためにメモしておく習慣がありますので、マニュアルがあるというのは個人的に重要な要素です。そんなこともあり、総じて、NI は自分の中ではもっとも信頼度のあるメーカーという位置付けです。
KOMPLETE ありきのメーカー
一方で、KOMPLETE 以外に利用したくなるような強いインセンティブを持たない、というのが正直な気持ちです。KOMPLETE を一度買えば、かなり満足してしまい、他に何か使ってみようという気にはなりません。サードパーティ用音源ライブラリとして重要な KONTAKT、定番シンセの MASSIVE も、KOMPLETE に入っているので、KONTAKTやMASSIVE を単品で買うより、どうせなら KOMPLETE も・・・となって買ってしまう人も多いでしょう。一度買えば、もう他にこのメーカーから買う必要はない、と謎に安心してしまいます。ビートメーカーの方なら Machine, Traktor 関連が見逃せないと思いますが、私はそこまでビートメイクに特化していないので、必要性を感じません。
KOMPLETE に含まれる製品は、確かに使いやすく、品質は良いのですが、個々の製品を評価するとき、やはりどうしても他のメーカーが出している専用音源に比べれば、見劣りしてしまいます。どのジャンルの音源も、パッと出す出音の印象は非常に良いながら、詳細なエディットとなると、細かいところに手が届かないとか、エディットの仕方が面倒だとか、大味な部分が気になってしまい、「これなら他のメーカーを使った方がいい」となることもしばしばです。サッとスケッチしたり、サブ音源として補助的に使うという用途には、とても重宝することがあるのですが、どうしてもスタメンにはなり得ません。トップクラスの存在感を持つ音源は、MASSIVEくらいな気がします。ただ、だから KOMPLETE が全然必要ないかというとそうでもなく、やはりどのカテゴリのサウンドも一定以上のクオリティで用意されている、その安心感はとても魅力であり、一度手にすると手放せません。
いろんな意味でバランスがいい
良くも悪くも、総合音源 KOMPLETE と KONTAKT, MASSIVE によって存在感を保っているという印象ですので、KOMPLETE に入っている音源が気に入らない、あるいは代わりの総合音源を持っている、という方には、割と冷めた目で見られるメーカーでもあります。個人的には、長年 KOMPLETE でユーザであり、何か困ったら KOMPLETE に入っている音を使う、という習慣がついてしまうくらいには、信頼し使い続けているので、まあ総じて好きなメーカーであります。決して最強ではないけど、良い部分がそこそこ多く、悪い部分は少ない、優等生的なイメージです。とにかく全体的にバランス感がいいです。品揃えにしても、クオリティにしても、サービスにしても。
多くの人が不満があるといえば、KONTAKT を使用しているサードパーティ音源、フリー音源が多すぎて「KONTAKTフルヴァージョンが必要です」な場面に遭遇することが多すぎることでしょうが、これも KOMPLETE を一度買ってしまえば解消していまいます。
個人的に一番困った不満点は、ドラム音源 BATTERY 4 がバグでダイアルが正確に動かせなくなり、長い間使えない状態が続いていたことですが、これも最近アプデしたら直りました。
後、昔から直して欲しいなと思うのは、公式のFAQページがとても見づらくてわかりにくいことです。でも、まあそれくらいです。
というわけで、KOMPLETE を買ってしまえば、目立った不満もなく長年使い続けることがメーカー、というのが正直な印象です。Machine や KOMPLETE Kontrol シリーズなどのハード製品は使ったことがないのでわかりませんが、ハード製品はソフトよりも人に合う合わないの問題が強くあると思います。置き場所や寿命や管理方法など、実際に使ってみないとわからない部分が多いので、こればっかりは買ってみないとわかりません。