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劇団四季『WICKED』後編〜ボックが可哀想すぎる〜ー2023.11.08

WICKED、前編からの続きです。

劇団四季『WICKED』前編〜エメラルドシティへ〜

休憩中は座席にステイしていました。
なので、休憩中のトイレ混雑事情がどうなっているかはわかりません。ただ四季劇場[秋]はトイレがとてもたくさんあるので、歌舞伎町ミラノ座のような悲劇は起きていないはずです。

作中一番可哀想な二人

第二幕では、エルファバが逃亡してしばらく時間が経ったところからスタートします。

ネガティブキャンペーンによって信頼が失墜したエルファバに対し、なぜだかオズの国の広告塔になり担ぎ上げられているグリンダ。国民たちからも高い支持を得ています。

その勢いに便乗しようと思ったのか、フィエロとの婚約を発表。まさかのフィエロ本人が知らないという逆プロポーズのような展開に。

フィエロはそこまで気持ちがないくせに、なぜだかグリンダとの婚約を受け入れます。彼は賢い陽キャだけど、自分の人生をどう生きていけばいいかいまいちわかっていない若者です。

そしてなんやかんやあり、戻ってきたエルファバは、妹のネッサローズに会いに行くのですが、私はここのシーンが好きでした。

父親の跡をついで出世したネッサローズは、恋の相手であるボックを側近に置いています。でもボックは本当はグリンダが好き。グリンダに頼まれてネッサローズと仲良くしてたら、いつの間にか離してもらえなくなっていました。

距離を縮めたいネッサローズに対し「マダム」と呼んで突き放すボック。ネッサローズは自分の権力を使ってボックを縛り付けいるわけですから、これは大変悪質なパワハラ、セクハラです。でも、そうでもしないと愛する人が離れてしまうと思い込んでるネッサローズ。作中一番可哀想なのは、じつはこの二人なのではと思います。

で、続く悲劇ですね。

エルファバが魔法でネッサローズの足を治すやいなや、ボックはこれでお役御免とばかりにネッサローズから離れていきます。それは嫌だとネッサローズはエルファバからぶんどった魔法の書を使って、ボックに魔法をかけます。暴走した魔法により、瀕死になったボック。エルファバがさらに魔法をかけてなんとか命はとりとめますが、変わりにボックはブリキ男にされてしまうのです。

好きな女の子には相手にされず、全然気持ちがない相手の側近にさせられ、自由になったと思った瞬間ブリキ男にされたボック。あまりにも悲劇。彼に対する救いも特にない。でもまぁ、オズの魔法使い本編でハートを手に入れられるからいいの……か……?

ネッサローズにそこまでする必要あるか?

オズの大魔王やマダム・モリブルが敵だと知ったエルファバは、さらに逃げ続け、たどり着いたのは、フィエロのもとでした。

グリンダと婚約したフィエロでしたが、なんと目の前でエルファバに乗り換えます。心の奥底ではエルファバを愛していたので仕方ない。でもグリンダからしてみたら、親友に男を取られた形なのでたまったもんじゃありません。

グリンダはともすれば、調子が良いだけの勘違いガールに見えてしまいますが、こうやって適度に痛い目見てるので、キャラクターのバランスがよく取れてるなぁと思います。

そして物語は悲劇を突き進んでいきます。

オズの大魔王とマダム・モリブルは、逃亡したエルファバを、おびきよせるためネッサローズを利用することを思いつくのです。

その利用の仕方ですが、生ぬるいものだと嘘だとエルファバにバレるから、思い切ってやったれ! ということで、なんと家の下敷きにして殺してしまいます。これが、オズの魔法使いの最初のシーンに繋がるという仕掛けですね。

それにしてもあまりに酷い。せっかく歩けるようになったネッサローズは、愛する人に去られ、姉に見限られ、失意のうちに利用され命を落とす……やっぱり、ボックとネッサローズが一番可哀想だ。

このとき、「南の良い魔女」となったグリンダは、ドロシーにネッサローズの靴を履かせて、レンガの道へと送り出します。

それを観たエルファバは「なんで妹の靴を履かせた」と激怒するのですが、激怒しますよね? グリンダはなんでそんなことしたのか?? あまりにもクレイジー。仲良しではないとはいえ、ネッサローズも大学の同期で友達だと思うのですが、どどど、どうして?

事態はさらに混乱を極め、エルファバはドロシーを捕まえて軟禁します。この辺は、オズの魔法使いのストーリーとオーバーラップしています。

もうどうしようもないほど追い詰められたエルファバ。やってきたグリンダにお願いをします。自分の悪名はこのままでいいから、オズの国をグリンダの力で良い国に変えてほしいと。泣いた赤鬼スタイル。そして、お互いに最後の別れを告げます。

エルファバとグリンダが『あなたを忘れない』を歌い始めると、あちこちからすすり泣く声が。隣の人も号泣していました。

原題は『For Good』で、直訳すると『永遠に』という意味なんですね。もし私が日本語タイトルつけてくださいと頼まれたら、多分『永遠に友達』とかにしたと思います。やっぱり浅利慶太の翻訳センスってすごいですね。

そしてドロシーに水をかけられて、消滅するエルファバ。
悪い魔女は消え去り、オズの国には平和が戻りました。めでたしめでたし……

となったあと、魔法でカカシになったフィエロが、こっそりエルファバと合流します。じつは生きてたんですね。水で消えるっておかしいですもんね。

そして二人は誰にも真実を告げず、オズの国を出てどこかへ旅立つのでした。

壮大なストーリーでした。

心を取り戻した人がここにも

終わったあとHARUKAさんが「これ見て、泣かない人いるの?」と言っていたのが印象的でした。人の心を失くし、世の中を恨んで生きているHARUKAさんからそんな言葉が聞けるなんて感動です。ブリキ男のようにやっと心を取り戻したんだ、やっと……。

「今まで観たミュージカルの中で、1位かもしれない」
「できればもう一回観たい」

とまで言っていたので、本当にお気に入りになったようで良かったです。
期待を超える素晴らしいミュージカルでした。

なんで3ヶ月しかやらないのか謎。ロイヤリティとかの問題なんでしょうか? 
期間限定だからか、グッズ売り場は公演前も後も、長蛇の列でした。
本当は緑色グッズ何かほしかったけど、とても疲れていたので断念。

またいつか観劇できる日を願っています。

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