知らずにやるか、知っていてやるか
僕のレッスンにはほかのお教室と並行して通われている方も多いです。
よくあるお母さん方からの要望で、「音階をちゃんとやってきていないので、音階をさせたいです」というのがあります。
もちろんご要望にはお応えしていきますし、すぐそうできないときもなるべく努めますが...
さて、ここで問題なのは音階をやったら上手になるのか、です。
そもそも音階ってなんのためにやるのでしょう。
和声や調性のお勉強、そして全てを正しく動作させられるか、なにより頭の中の仕組みを作ることができるかどうか、だと僕は考えています。
音階っていうのはやっかいなもので、聴いている分にはその生徒さんが本当に頭の中でヴァイオリンの理屈、思考回路を作り上げられているか見落としてしまう人が少なくない気がします。
低い音から高い音に登って、下ってくる。この場合指の番号は123012301234 4321 4321...というパターンが多いです。
そう、中には単純にそのまま数字で1234...と思ってしまっている人がいるんですね。
その時に、音が高いよ、低いよ、と伝えてもあんまり意味はないでしょう。
これが頭の中の思考回路の話。
そして、右手も左手も呼吸も...全部を正しく行えるかどうかもとても大切です。
無理矢理その音程が鳴らせたとしても、それはトレーニングになりません。もっと効率的に、より精度高く音を出すために色んなことに気をつけていきたいです。
音楽はこころですが、ヴァイオリンから音を出すという行為そのものは物理現象ということを大事にしたいです。
こころの問題と物理的な問題をつなげていく手段は呼吸であったり、感触の問題だと自分は思います。
ついつい課題として出されたり、教材に組み込まれていると目の前のタスク、と思って処理しがちですが、実はそうじゃない。
人によって指の長さも、関節の曲がり方も、それぞれのバランスも違います。ヴァイオリンとはもちろん、自分の身体とも仲良くなるための基礎。
そのお話を幼い子にも伝えられるか、が大事。