見出し画像

MTGのクリーチャーの強さを理論的に理解するために『ならず者の精製屋』のマナレシオと効果を調査してみた

はじめに

この記事ではあるカードの効果に対してどのくらいのマナコストで効果をつけることができるのかを、マナレシオに対する比率で求めることができるのではないかという考えのもとに適当言ってるだけの記事です。
もし、似たような記事や知見や考えがありましたらご教示いただけますと幸いです。

過去のスタンダードでは、3マナ3/2メリット効果2個持ちが禁止カードだった

記事のサムネイルにもしている『ならず者の精製屋』。彼は過去にスタンダード環境で禁止カードになっているクリーチャーなのだが、その効果が以下だ。

 ならず者の精製屋 (1)(緑)(青)

クリーチャー — 人間(Human) ならず者(Rogue)

ならず者の精製屋が戦場に出たとき、カードを1枚引き、あなたは(E)(E)(エネルギー・カウンター2個)を得る。

3/2

わたしはこの話を聞いたとき、こう思った。
これは、禁止カードになるようなレベルで強いカードなのか?
『エルフの幻想家』に青マナ追加で要求されると、+2/+1修正とエネルギー2個のおまけが付くと聞くと、青マナ1個の追加に対してメリットが多いのでは?という疑問はわかる。
ただ、『エルフの幻想家』はエルフであり、スタッツより種族が重要になることや、同じマナコストでデッキトップのカードが土地ならば場に出すこともできてしまう『とぐろ巻きの巫女』がいるわけで、本当にこいつは禁止カードになるレベルなのか疑問であった。
なんというか、「強いのは分かるが禁止にしなければならないほどぶっ壊れたカードにパッと見には見えない」という感じである。

そこで、今回は似たようなスタッツやキーワード能力、マナシンボルを基に、『ならず者の精製屋』のようなパッと見めちゃくちゃ強いのか分からないカードが、本当に強いのかと、今後の壊れたカードをいち早く見つけるための知見を貯められないか調査していこうと思う。

そもそも、青緑1マナの適正スタッツはいくつなのか?

マナレシオという考え方がある。

知らない方のために簡単に言うと、1マナ当たりの効果の大きさを数値化するという考えであり、クリーチャーに対しては、(パワーとタフネスの平均)/マナコストで計算される。
この数値が高いほどマナに対して効率が良いというわけだ。
ただ、色によってマナレシオの概念や、キーワード能力の効果についてもつけやすさが変わっている。
例えば緑はクリーチャーや戦闘が得意なカラーのため、マナレシオは高いものが多く、「トランプル」や「到達」のクリーチャーは多い(付与コストが低い)が「飛行」持ちは比較的少ない(付与コストが高い)。
これらをある程度念頭に起きつつ、レア度なども鑑みながら見ていこう。

緑単色の3マナバニラ

ここから先はMTGWikiのバニラ(能力を持たないクリーチャー)のページを確認しながら進めていく。

まず、緑単色の3マナバニラは以下がいるらしい(『クリーチャー名』スタッツ・マナレシオ。特筆がない限り「緑②」のマナコストでコモン)。

  1. 『コロッソドンの1年仔』2/4・1

  2. 『有刺カローク』2/4・1

  3. 『ゴリラの戦士』3/2・0.83

  4. 『ネシアンの狩猟者』3/3・1

  5. 『ケンタウルスの狩猟者』3/3・1

  6. 『侵略ナーガ』3/3・1

  7. 『エルフのレインジャー』4/1・0.83

  8. 『高山の灰色熊』4/2・1

  9. 『訓練されたアーモドン』3/3・1 マナコストは緑緑①

  10. 『節くれ塊』3/3・1 マナコストは緑緑①

  11. 『皮背のベイロス』4/5・1.5 マナコストは緑緑緑。アンコモン

なるほど。ざっくりと見る限り緑のバニラは概ねマナレシオ1であり、タフネス偏重にもパワー偏重にもどちらにも振りやすいらしい。
また、マナシンボルの要求数が多くなるほどマナレシオはあがり、その分レアリティも上がっているようだ。
また、緑ダブルシンボルの2枚は比較的昔のカードであり、同じスタッツでマナシンボルが緩いカードもあることからここ最近スタッツについては上方修正が行われていることが分かった。
まとめると

  1. 緑はパワーにもタフネスにも1マナ当たりのスタッツの振り分けやすさが概ね均等

  2. マナシンボルの拘束が大きくなるほどマナレシオはよくなる

  3. マナレシオがよくなったものに関してはレアリティが上がることがある

  4. マナシンボルに対するマナレシオは時代が進むと見直されて上方修正(マナシンボル数の緩和)が行われている

とりあえずこれらのことが分かった。

青単色の3マナバニラ

では同じ条件で青のバニラを見てみよう。

  1. 『Armored Whirl Turtle』0/5・0.83

  2. 『角海亀』1/4・0.83

  3. 『川の水神』1/4・0.83

  4. 『盲目の幻』2/3・0.83

  5. 『ジュワー島の小走り』2/3・0.83

  6. 『トレイリアの学者』2/3・0.83

  7. 『珊瑚の孟士』3/2・0.83

  8. 『ナーガの永遠衆』3/2・0.83

  9. 『古代ガニ』1/5・0.83 マナコストは青青①

なるほど。ざっくり見る限り青の方はマナレシオは0.83と低い傾向にあり、タフネス偏重に振りやすいらしい。
また、緑のクリーチャーと同様に縛りの多いマナシンボルで上位互換が存在するが、これは最新のカードになるに従って強化がされていっているのが見受けられる。
『Armored Whirl Turtle』に至っては青1マナで同じスタッツの完全上位互換がおり、そのマナレシオは驚異の2.5である。
しかしながら、先ほどクリーチャーが得意な緑と比べると緑は基本的に緑1マナに対して1/2のクリーチャーが多い。だがマナレシオは1.5と、先に述べた青1マナ0/5のほうがマナレシオとしては高くなっている。これは、パワーよりタフネスの方が比較的軽いコストでスタッツを上げやすいものではないかと推測している。
具体的には、タフネスを1上げるという調整を行うのに対する架空のコストを1とするならば、パワーはおよそその1.2倍くらいのコストが必要となるだのではないかと推測している。
もちろん、青がタフネスを上げやすいカラーということも踏まえて、色ごとにパワーを1上げるためのコストに対し、タフネスを1上げるコストの比率は変わってくるのであろうが。

まとめるとこうだ。

  1. 青はタフネス偏重気味にスタッツの振り分けやすさが存在している

  2. パワーを1上げるためのコストはタフネスを1上げるためのコストよりも重い可能性が高い(ただし、他の色によっては、パワーに振るためのコストが比較的軽いカラーがある可能性はある)

多色のバニラ

さて、これらを踏まえて次に青緑①のバニラクリーチャーを見よう……と言いたいところだったが、そんなクリーチャーは存在しなかった。
ではどうするかと言うと、一旦赤緑のクリーチャーを見ようと思う。先に述べておくと、赤は若干パワーに振るためのコストが低めであり、赤②のマナレシオは0.9くらいでパワー偏重気味である。
そんな赤と緑が混じったバニラには以下がいる。

  1. 『Scarwood Goblins』2/2・1 マナコストは赤緑

  2. 『ロックスの粗暴者』4/4・1 マナコストは赤緑②

  3. 『通り砕きのワーム』6/4・1 マナコストは赤緑③

  4. 『破滅のワーム』7/6・1.08 マナコストは赤緑④

これらを基に考えると、赤緑はおおよそマナレシオは1のうえに、赤が入った分パワーの偏重をしながらマナレシオが若干高くなる調整が行われている。
では、これを青緑に当てはめるとするとどうなるだろう?
おそらくは、マナレシオ1以上かつタフネス偏重気味のクリーチャーが出来上がるはずである。
かつ、『ならず者の精製屋』がアンコモンであることも考えて、バニラのアンコモンで緑青①であるならば、もしかしたらマナレシオ1.5も現実的に考えられるかもしれない。
ということで、仮にマナレシオ1.5としてスタッツを仮置きしてみるならば、タフネス偏重とすると、ちょうどトリプルシンボルの『皮背のベイロス』と並ぶ4/5くらいのスタッツが妥当となる。
このスタッツを一旦仮置きとして「もし、ならず者の精製屋がバニラだったらこのスタッツ」という目安としたい。
ではここからはキャントリップ(出たり唱えたりするとカードを1枚引くこと)能力のマナレシオについて調査を開始しよう。

キャントリップ能力のマナレシオ

キャントリップ能力のマナレシオを確認するにあたり、まずはキャントリップ以外の能力を持たないクリーチャーを以下に羅列する。

  1. 『エルフの幻想家』1/1・0.5 緑①

  2. 『シマクマ』2/2・0.5 緑③

  3. 『春のシャーマン』2/2・0.5 緑③

  4. 『幕僚団』1/1・0.33 青②

  5. 『秘密の商人』1/1・0.33 青②

  6. 『敏捷な革新者』2/2・0.66 青②

  7. 『ロックスの神託者』4/2・0.6 緑④

  8. 『気前のいい猫』1/2・0.5 緑②

  9. 『ジョラーガの幻想家』3/2・0.62 緑③

  10. 『神憑く相棒』1/1・0.5 白①

  11. 『さまようハーパー』2/2・0.66 白②

  12. 『池の預言者』1/1・0.33 緑/青 緑/青①

さて、上記を見る限り、キャントリップ能力をクリーチャーに付ける場合、マナレシオをおよそ0.3〜0.6にする必要があるらしい。
もちろん色によってキャントリップ能力をつけるためのコストは変わってくるが、ここは一旦全部の色が同じくらいキャントリップ能力をつけるのが得意であると仮定する。
また、今回はざっくりとした計算としたいため、マナシンボルの数も考慮から外させていただく。
それらを踏まえて上記の平均をとると、キャントリップ能力をつけるためのマナレシオは0.50となった。
これを先ほど出した青緑①のクリーチャーのマナレシオと掛け合わせると、1.5×0.50=0.75となる。
つまり、キャントリップ能力を持たせた青緑①のクリーチャーは3マナであればパワーとタフネスの合計スタッツが4.5くらい(3マナ×2×0.75)が望ましい。
青がタフネス偏重得意であることから端数0.5をタフネスに振ったこととするならば、合計スタッツ5が適性であるというわけだ。つまり、『ならず者の精製屋』は2/3のスタッツが正しかったと言えるだろう。もちろん、この0.5を切り下げるのであれば2/2のスタッツくらいが正しいことになる。
なるほど、2/3ではなく3/2になっているのであれば青緑①のカードとしては、確かにアンコモンでキャントリップ付きだと少し強いカードである。
だが、恐ろしいことにこのカードにはまだ「エネルギーカウンターを2つ得る」という能力も持っている。
この能力が追加される場合、マナレシオはいくつなのだろうか?続けて確認してみよう。

エネルギーカウンターを得るマナレシオ

エネルギーカウンターをETB効果(戦場に出たときに起きる効果。Enter The Batlefieldの略)で得るクリーチャーカードには複数ある。
しかしながらそれらのカードには大体それを使用する能力もセットになっており、その効果量に対してのマナレシオを見るのが難しい。
というわけで、他のエネルギーカウンターを2個得る+何らかの効果を持ったカードで比較してみよう。

例えば『高峰の注入』がある。
このカードは、エネルギーを2個得るとともにこのターンのみ対象のクリーチャーを+3/+3修正する緑①のインスタントだ。
そして似たカードに『巨大化』がある。これは、緑のみで対象のクリーチャーを+3/+3修正するインスタントだ。
これだけを見るとエネルギーを2個をついでに得る能力には①が必要になることがわかる。
また、『放埒』というカードがある。これは『夜の囁き』という、黒①で2枚ドロー2点ライフルーズのソーサリーにエネルギーを2個得る効果が加わったもので、同じく黒②のソーサリーである。
これらより、エネルギーを2個得るという効果は①分のコストがあることがわかった。
マナレシオという考えから離れてしまうが、これを踏まえてもう一度『ならず者の精製屋』を見るとおかしなことに気づく。

あれ?こいつ3マナって書いてあるけど、効果とスタッツ考えると4マナか、なんなら弱い5マナくらいの効果が盛られてないか??

3マナのカードで5マナくらいの動きができるならそりゃ禁止もうなづける。
ようやくちょっと腑に落ちた。確かに禁止されてしかるべきカードであった。

今後の展望

多分、計算は間違っている。そもそも、考え方としては効果を付与するにあたり、この効果は何マナ分のスタッツをクリーチャーから奪うか?という考えで進めていくべきだったと思われる。
今回、単一の能力がつくとクリーチャーのスタッツで見たマナレシオがどのくらいの割合で減るかとしてしまったが、おそらくはおよそ1.5マナ分くらいのスタッツを消費してクリーチャーにキャントリップ能力がつくとしたほうがよかった気がする。
今後記事の修正を入れることにするか、別記事で改めて考え直したい。

また、フレンチバニラを基に、常盤木能力のざっくりとしたマナレシオを出しておきたい。
そのうえで、『原初の夜明け、ゼタルパ』や、『7つの死の種父』といった、キーワード能力が盛り盛りのクリーチャーの強さを数値化してみたいものである。

以上を踏まえて新規カードが出た際にマナレシオを強く逸脱したカードや強力なカードを数値的に見て判断できるようになりたい。
もちろん、これが強いカードを見つける正解だとは全く思っていない。しかし、ゲームを理解するうえで数学的にバランスが取れている・取れていないという考え方は、今後の自分の思考を鍛えることにも大いに役立つと考えている。
ゲームの能力を数値化しバランスをとることを考えるとともに、自分であればどんなカードを作ってみたいか、そのバランスを踏まえてコストはどうするかを考えていきたい。

いいなと思ったら応援しよう!