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『導かれるように間違う』に導かれてみたら

彩の国さいたま芸術劇場にて、『導かれるように間違う』観劇。
この作品からどこに導かれるかは人それぞれでしょうが、以下、私が導かれた先で感じたことについて、書いておこうと思います。

これって…もしかして、今の日本のこと??
そう気付いたときから、急にゾワゾワして怖くて仕方なくなった。

いや正確にいうと、途中までちょっとよくわからなかった。人はわからないものに向き合うと眠くなるから、ウトウトしかけた、まさにそのとき、舞台上から喝を入れられた感じになって一気に目が覚めた(この状況がまさに今の日本に生きる私そのものな感じがして、これまた怖かった)。それから最後までずっとゾワゾワしっぱなしだった。

物語の舞台は病院だ。記憶を失った「ある者(成河)」がいきなり退院を告げられる。ところが、彼の前に次々と妙な症状を持った患者が現れ、「ある者」は真似をせずにはいられない。そして、なかなか病院の「出口」が見つからない…。

導かれるままに間違った方向に進んじゃう、そしてなかなか軌道修正できない「ある者」とは、まさに今の日本の私たちそのものではないか? そして、その中身は空っぽである。

病院の患者たちもそれぞれ、今の世の中にいそうな人を象徴しているみたいだ。前を向けない別府(中村理)、じっとしていられなくて常にソワソワしている島本(浜田純平)、自分の身体を自分のものだと感じられない阿部(宮下今日子)、そして、患者を治療する医師江口は同時に患者でもあるところも怖い…。

そして、本当のことが言えない土井(荒木知佳)こそが、じつは「ある者」の中身で、「ある者」とは一心同体なのだ。しかし、その実は「絶対真理」といわれることに何の疑いも持たず突き進む、ただの「ファン」である。
そして、そんな彼女と、中身のない彼が同化したとき、いったい何が起こるのか…。

作は松井周さん、演出・振付は近藤良平さん。
軽い気持ちで導かれてみたら、とんでもなく直球な問題提起の作品だった。
激しい身体表現中心だから伝えることができる直球のメッセージ。
なんとなく、いつも舞台を観て心動かされる部分より一段下の階層がぐらぐらさせられた気がする。だから、理屈じゃない危機感…。

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中本千晶
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