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城山羊の会『ワクチンの夜』が、一晩経ってからじわじわ来ている話

三鷹芸術文化センターで上演中の、城山羊の会『ワクチンの夜』を観た。
作・演出は山内ケンジさん。

タイトルからすると、コロナ禍の今、何らかの問題提起をした作品であるかのように見える。
が、全然そんなことはなかった。
三鷹近辺在住のとある夫婦が、ワクチン2回目を接種してきた夜の物語である。

夫婦と大学生の息子、そして夫の父親の4人家族。
さっそく副反応の発熱に苦しむ母。介抱するフリをして、やけに嫁に密着?する祖父。
息子の秋彦はいかにもさえない風体で、ボソボソと小さな声でしか喋らない。
そんな彼の元に「課題を一緒にするから」という理由で同級生のエリカとマスブチが訪ねてくる。
彼らも同じ日にワクチンを接種したのだという。
そして、あり得るようなあり得ないような珍(?)事件が次々と起こる…。

満員御礼だった。
そして、客席は終始笑いが絶えなかった(私もそれなりに笑っていた)。

だけど…
私はどうも苦手だ、と思った。

まず、エロジジイには生理的に耐えられん!と思った。
欲情に溺れがちな母も苦手だった。
ヅカオタ界隈では『シティハンター』における冴羽獠の素行が問題になっていたが、この作品に比べたら一万倍マシである。ていうか、そもそも比べるのがおかしい。
ただ、三鷹市芸術文化センターの名物おじさん・森元さんが絡む冒頭は面白かった。

それでも、Twitterを検索してみると絶賛の声ばかりが出てくるじゃないか。
自分のキャパが思いの外狭いことに驚きと絶望を感じながら、その日は寝たのだった。

それなのに一夜明けた今朝、こんな感想を書き、noteなぞにアップしようとしている。
祖父のエロパワーが、母のけだるさが、秋彦のボソボソ声が、そして「森番」の「あの姿」が脳裏に焼き付いて、どうにも離れないのだ。

よくある「家族って素晴らしい!」というアプローチとは真逆なところは、いいなと思った。
だからといって、家族に対して絶望しているわけでもない。
家族って、こんなもんだよね、しょーもないよね、という諦めを、さわやかに(?)描いた作品という理解で良いのだろうか??

「どうも苦手」と言いつつ、城山羊の会がまた何か上演したら、観に行ってやろうと思ってしまう自分がいる。
そしていつの間にか私も、「城山羊ワールド」のとりこになってしまうのだろうか…。


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中本千晶
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