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2021年上半期推し映画5選

 初めまして、コンテナ店子と言います。

 さて、先日で2021年も半分が過ぎました。今年は去年に引き続き新作映画が数多く延期になっている一方で、去年公開だった作品が解禁されつつもあり、けっこう楽しみにしていた映画も多く見ることが出来ました。そこで、今回は今年の上半期で公開された映画の自分が見れた作品の中でよかったと思う映画を5つ紹介します。

 もちろんすべてを見ることが出来た訳ではありません。例えば、ビバリウムとか予告編の雰囲気が良かったので見てみたかったですし、スワロウとかも同様です。

 そんな訳で、自分が見れた映画はそんなに多くはないですが、見れた中では好きだった作品を5つ選びました。特にこの中で順位付けはしていません。発表順は見た順番です。個人的なランキングなので、特にケチをつける必要はないと思います。それでは行きます。


①Seaspiracy:偽りのサステイナブル漁業


 この映画はネットフリックスオリジナル作品として公開されたドキュメンタリー映画です。個人的にドキュメンタリーはかなり好きなジャンルで年間のランキングにも毎年1つくらいはこのジャンルから食い込みます。今年は恐らくこの映画だと思います。非常に衝撃的で驚かされましたし、深く考えさせられました。

 大体のあらすじとしては、海やその生物が好きな男がその汚染問題について調べようとしたらそれがどんどん発展して世界中をまたにかけて調査を進めて行くと言ったようなストーリーになっています。水産に関する世界を代表する企業の不正と言う所や、実際に漁業をやっている際の問題だったり、それも自然破壊と言う所だけでなく、海洋ごみ問題や人権侵害など色々な所に視線を向けていたので、それだけですごく興味深かったです。

 映像についても素晴らしかったです。見つかったらいつ殺されてもおかしくないような映像がいっぱいあって、危険な場所に潜入してこっそり隠し撮りをしていたり、実名が公開されたら危険な相手にインタビューしたりとか、ドキュメンタリーなのにどうなるのかわからなくてハラハラしました。本来安全な場所でスタートして、自然保護を訴える用の映画だったのに、話が進むにつれてどんどん危険が増していき、貴重な映像を多く見れました。

 また、違法な漁業や怪しい企業というと、けっこう東南アジアだったり中国だったりをイメージしがちですが、決してそんなことはなく、世界中をまたにかけて、どこの国の肩も持たずに悪いと思ったことは全て批判していたので、説得力がありましたし、ある事象については日本の物もきっちり批判していて、親身に感じることが出来ました。

 あと、批判の方法もわかりやすかったです。批判をする際にCGを使ったVTRを多用していて視覚的にわかりやすくしていましたし、事象の危険性を訴える時にも客観的データを持ってきていたので、海やそれらについて強い関心を持っていない側だとしても第三者としてわかりやすくなっていました。

 ドキュメンタリーによっては、ただこういうことが起きていると言うだけでその証拠を見せなかったり、あっても特異な例だけだったりということがあります。この映画は下調べをしている様子を映していたり、ちゃんとしたデータを用意しているという点において納得できるようになっていました。

 今年も色々なドキュメンタリーを見ましたが、その中でも断トツで衝撃的な作品であったと言えましたし、見ていて楽しい映画でなかったですが、その深刻さを知るにはとても良い機会であると言えます。かなりドキュメンタリーらしいドキュメンタリーなのであんまり多くの人にはハマりにくいような気もしますが、多くの人が知るべきことだとは思うので、見ておく価値はあると思います。 


②ミナリ 


 この映画はアカデミー賞でも数多くの賞にノミネートされていたので知っていると言う人も多いのではとは思います。個人的にもすごく満足できた映画でした。ヒューマンドラマというジャンルにおいて映画の出せるリアリティを最も感じた作品だったと思います。

 主なストーリーとしては、一発当てることを狙ってアメリカに移住してきた韓国人一家の様子を描いたような作品で、ちゃんとしたストーリーはないですが、日常を垣間見るような作品です。人間の内面に非常な説得力がありましたし、どのキャラクターも感情の間に納得できる連続性があったので、そこまで大きな起伏はありませんでしたが、一切退屈はしなかったです。

 上でも言いましたがこの映画のキャラクターは非常にリアリティに溢れていました。何か劇的なイベントがあってキャラクターの人間性が変化すると言うことがある訳ではないのですが、それが現実味に溢れていると思います。そして、それでも、ゆったりと少しづつ1つの感情が変化していく様を描いていたりしていたので、親身に感じることが出来ました。それに、キャラクター同士に色んな側面があったというか、リアルな人間と同じように応援できる部分とそうでない部分の両方を持っているキャラクターばかりであり、そんな不完全な姿やそれを認めながら寄り添う家族の姿に愛着を持つことが出来ました。 

 また、演技も素晴らしかったです。全体的に好きでしたが、主人公の子供を演じたアラン・キムが特に素晴らしかったです。垢抜けない幼い子供の様子をとてもリアルに演じていたと言うか、喜怒哀楽が表面的に出やすい子供の表情を完璧に演じながらも、子供らしい可愛らしさもしっかりと残していました。

 アラン・キムの他にも、スティーヴン・ユアンも良かったです。一家を支える大黒柱の父親を演じていましたが、彼の家族を思うが気持ちでしたり汗水たらしながら働いている姿だったりを美しく見ることが出来ました。特に、彼の表情がアップで映るあるシーンがあるのですが、そこが本当に素晴らしかったです。様々な感情が入り混じっている様子を1回のカットだけで表現していて、目が離せななかったです。

 照明も素晴らしかったです。町から離れた森の中のような場所に住んで、そこに農場を作っていましたが、周囲の人間のリアリティに相反するように美しい光に農園が包まれていて、そこに父親が賭ける希望でしたり逆にそれがうまくいかない自然の不条理さを描いているかのようでした。一見リアリティに溢れた映画とは合わないような技法に見えますが、逆にそのギャップが興味深く、映画をより深い物にしていたと思います。

 今の所今年で一番演技しているようにだったり、作られた映画らしさを感じられない映画でした。ほぼほぼ非の付け所のない映画だと思いますし、アカデミー賞で絶賛されたのも納得としか言いようがないクオリティの作品でした。映画好きだったら絶対気に入るなと感じると思いますし、結構こういう映画は芸術的でお堅いと感じるかもしれませんが、思ったよりも明るい作品かなと感じます。


③21ブリッジ


 この映画では、麻薬を奪った殺人犯とそれを追いかける警察のチェイスやアクションや勝負を描いたアクション映画です。演技や演出のおかげでかなり緊張感がある映画だったと思いましたし、セットも相当お金をかけていたので、そこまでストーリーやキャラクターがしっかりしていなくてもかなり見ごたえがある映画になっていました。

 まずセットから語っていきます。この映画では警察側が使う道具においては相当な数の多くの物が使用されていて、ヘリコプターだったりパトカーだったりが大量に出てきました。危険な殺人犯を追うということなら、それだけたくさんの設備や人を投資している方がわかりやすいですし、どれだけ警察がこの犯人を追うことに執念を燃やしているかということに説得力が出ていました。それに、ただたくさんの乗り物や人がいた方が規模が大きく見えて興奮します。刑事が主役の映画などは見ることはありますが、これにより他の物と比べても一線を置くクオリティを誇っていたと思います。

 次に演技について語ります。これについては、主演のチャドウィックボーズマンがとても良かったです。表情が真剣そのもので、彼が銃を構えていつ殺人鬼に襲われるかわからない建物の中を探索しているだけでかなり様になっていました。この映画はある一晩を題材にしていたので、終始周囲は暗いままでしたので、その緊張感という意味でのトーンの合わせ方も好きでした。

 また彼は銃の構え方だったり仕事をてきぱきとこなしていく姿がかっこよかったです。一応警察になりたがるバックストーリーはありますが、それ以上に主演の演技でしたり仕事ぶりによって彼が凄腕であり、上記の規模の捜査の主人公になるのも納得できるようになっていました。

 それ以外ですと、アクションの撮影が素晴らしかったです。銃撃戦の乱闘だったり、全力疾走のチェイスシーンが多かったですが、夜だったり一部狭い建物が舞台であったのにも全然見にくいと感じることはなかったです。激しいバトルは映画によってはけっこうカメラワークや照明が悪くて何が起こっているのかわからないことがありますが、走って追う側と追われる側だったり激しい絡み合いを無くしたことでけっこうスッキリして見やすかったです。ロケーションなども広いことが多く、映画としてみた時に見やすくなっていたと思います。

 今年も色んなアクション映画が出てきましたが、アクションという部分においてのクオリティではこの映画が断トツであると言えるでしょう。人が死ぬ回数もそこまで多くないですし、人類の未来をかけてるわけでもないのに、リアルなトーンのおかげで緊張感がありましたし、規模間を大きく見せるやり方もとても上手であると言えます。映画好きであれば好きになれる可能性が高いと言えますし、普段映画をそこまで見ない人にもかなりおすすめしやすいです。


 
④アンモナイトの目覚め


 この映画では自分の発見を他人に奪われてから心を閉ざした考古学者の女性と、夫から相手にされないせいでうつ病の診断を受けてしまった女性の2人のラブロマンス映画となっています。とは言っても、強いて言うならラブロマンスというだけで、とても位置づけしにくいような映画だと思います。昨年公開された「燃ゆる女の肖像」のような、かなり静かで映画の出せる表現力を最大限に発揮することを目的とした芸術性の高い映画でした。

 しかし、この点においてこの映画は大きく成功を収めていると言えました。今年見た映画の中でも脚本以外の、映画として出せる表現力を最も感じた映画であったと言えます。なので、キャラクターが化石を磨いているだけのシーンだったり、無言で微笑み合っているだけのシーンでも非常に見ごたえがあり、かなりスローテンポでここが山場であると言える場所はないですが、それでも一切集中力が途切れる箇所はありませんでした。

 何よりも演技が素晴らしいです。無言でただ同じ空間にいるだけでも、2人の女性が距離感を詰めていく様子でしたり、どんなことを考えているのかということが細かい表情の変化だけで伝わってきました。それが客観的に正しいなんて言う答えはありませんが、自分の中でこうであると考えた上で理解できるので、それに対して頭を使って考える余地があるため、それに対して自分が映画を解釈する際に自信を持つことが出来ます。この映画では、その部分を強く感じることが出来ました。

 また、照明も素晴らしかったです。自然の光を多用していることが多かったですが、それが物静かなこの映画にはマッチしていました。2人の距離が近づいていくにつれて光がだんだん明るくなっていく姿が描かれていますが、それがとても美しかったです。最初は霧の中に町がいるように見えましたし、色もほとんど薄く見えました。それに、ロケーションも建物の中が多かった所からだんだん外の様子も増えてくるなど、2人の愛が深まれば深まるほどに映像も明るくなっていきました。

 そして、音も素晴らしかったです。ほとんど音楽もない映画でしたが、それがゆえに生活音などが綺麗に聞こえて来たからリアリティという部分だったりは高く感じましたし、逆に映像として出ている物に意識が集中しました。そして、音が普段ない分、それが有効活用されているシーンもちょこちょこありましたので、それが目立っているように感じて非常に美しかったです。自然の中に存在する音や海の波の音なんかだけでもキャラクターの心象を描かれていました。

 映画全体を通して表現が非常に美しく、まさに芸術的という表現が最も似合う映画だと思いました。映画で使えるスキルが最大限に生かされていたと思いましたし、2人のラブロマンスも人間関係が苦手な2人がだんだん距離を詰めていく感じが見ていて興味深かったです。

 非常に静かで読み解く力を求められるので誰もが好きになれる映画だとは思いませんが、ミニシアター系の映画も好きだと言う人は絶対に見ておくべき作品であると言えるでしょう。そんなに世間的には評価高くないみたいですが、個人的には大満足でした。


⑤るろうに剣心 最終章 The Beginning


 大人気シリーズの5作目として公開された本作は、個人的にも好きなシリーズですし、1個前のファイナルがけっこう良かったので楽しみにしてました。ですが、本作は想像を超えるレベルで面白かったです。期待していた物以上の物をかなりもらうことが出来ました。

 るろうに剣心シリーズ自体けっこうリアルなトーンに合わせるために静かな感じにして弦楽器のような曲を使うことが多いですが、今回はそれがとても強く表現されていました。剣心と巴の2人の感情が変化していく人間ドラマと言う所に重きを置いていたので、おそらくそうしたのだと思います。2人が仲良くなっていく様子に現実味を持たせることで、キャラクターをより興味深くしていました。例えば、いつも本作が得意としている人間離れした高速のアクションという部分を外し、リアルな人間でも出来そうな動きにすることで、トーンに現実味を持たせていました。

 あと、トーンがより現実っぽくなることで、人の命にも重みが出ていたと思います。この頃の剣心は人を切るので、結構な人数のモブキャラクターが死にます。そこに重みがありました。あくまで映画の中で死んだと言うことになっているだけで、本当に人が死んでいる訳ではないため、モブが死ぬと言うことは基本的にはあんまり衝撃を受けることはないですが、映画全体のリアリティが高くなれば高くなるほどその命にも重みが増していくと自分は考えています。そういう点において、この映画は成功していたと言えるでしょう。

 また、2人のストーリーも好きでした。あんまり劇的に仲良くなっていくイベントを挟むと言う訳ではないのですが、生きる目的を失っている巴と人切りに心を痛めているがどうしていいかわからない剣心が互いに心寄せていくのがなんだか見ていて伝わってきました。よりどころのない2人が互いに互いを支えにして行くというのが何となくわかると思います。

 あとの映画も演技は良かったです。ポスターに雪のシーンを使っていたり、夜のシーンが多かったりとけっこう冷たさを感じる映画ではありますが、その物悲しげな雰囲気に合わせるように主要な2人はあまり感情表現はしませんが、たまに垣間見える細かい感情の変化を映す演技が本当に素晴らしかったです。特に巴を演じた有村架純は今年見た邦画の中では演技が一番良かったと思います。彼女がアップで映るあるシーンは複雑な感情が入り混じっている中で決意を固める様子をよく演じていたと言えます。

 原作ではファイナルの話よりも前に持ってきて縁のバックボーンとしていたようでしたが、今回はこの話をるろうに剣心シリーズ全体のバックストーリーのように扱っていました。それに、ファイナルを見ていた人なら映画の結末を知ることになりますが、それ前提であるかのように巴や剣心が内に秘めている物をほとんど説明しないので、それも美しく感じました。口で説明するよりも、演技だったり行動で表現された方が視聴者としては共感出来ます。この映画ではそれを最大限に生かしていたと言えるでしょう。

 娯楽映画でありながら、静かで映画の表現力という部分にストーリーの魅力を一任していたと言う意味では、同じように大好きな映画のスターウォーズのローグワンと似てるなと思いました。あれも、娯楽作品でありながら、映画を張り詰めた空気にして、人間の内面の変化に重みをもたせていました。

 今までで剣心が最もピンチであると感じましたし、キャラクターの掘り下げも素晴らしかったので、今までよりアクションが少なめでも全然退屈には感じませんでした。本作でシリーズが完結らしいですが、それにふさわしいラストだと思いますし、シリーズでも一番好きな作品だと思いました。



 という訳で、以上が今年好きだった映画5選となります。どれもけっこう違うジャンルの作品から選出することが多くなりましたが、どれも、素晴らしいと思うことに変わりはありません。今年はけっこう当たりの映画も多いし、外れだなと思う作品にもあんまり会ってない気がします。2021年かなり調子いいです。後半戦も今のペースのまま行くことを期待しています。

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