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【ハナヤマタ】なるとヤヤの絆の魅力について

 初めまして、コンテナ店子と言います。

 今回は、ヤヤとなるの絆の魅力についてを語って行こうと思います。もう言うまでもないですが、なにせハナヤマタで一番人気の組み合わせと言えばヤヤとなるでしょう。自分の知人がハナヤマタを知っていると言うとすぐこれの話になります。その他にも、pixivに上がっている二次創作についてもこの2人をメインに扱っている物が非常に多く感じます。

 それ以外にも、作中でなると一緒にいる機会が多いキャラクターの1人がヤヤです。1巻冒頭の頃からいますし、それ以外でもハナとランが尾行するシーンでなるを歩道側を歩かせているシーン(8巻P44)や、中止になりましたが一緒に映画へ行く約束をしていたりと(2巻P11)、幼馴染の組み合わせの中でも何かと関連することが多いのがこの2人です。

 では、ハナヤマタには他にもいろいろな組み合わせがありますが、今回はなぜこの2人がここまで人気なのかということについてを語っていきます。


①なぜ仲良くなったのかという点について共感を持てる



 ヤヤとなるはお互いの事をどのような存在だと思っているのかわかるシーンが両方ともに存在しています。まずはヤヤ目線から見てなるの事をどう思っているのかから見ていきましょう。

 それを解説しているシーンは、7組目「つぼみ。」において、彼女たちのバックストーリーを語っているシーンがあります。ここで、ヤヤはなると仲良くなったきっかけはたまたま近くの家に住んでいたからだと言っています。しかし、それは出会ったきっかけにすぎません。恐らく、作者としてはなるを特別な存在として描きたくなかったがために、特別な出会いにしたくなかったからこうしたかったのだと思います。

 そして、ヤヤの事をすぐに肯定してくれるからそれに応えるように、彼女はなるのことを自分が守ろうと決めたと言います。これについて詳しく語ろうと思います。ヤヤはハナヤマタのメンバーの中でも非常に承認欲求が強いキャラクターです。22組目「グレープフルーツジュース。」において、自分がバンドをやっていた理由がうまくやっていた自分が好きなだけだったと語る点がこれの根拠になります(3巻P168)。

 このことは、映画『シング・ストリート 未来へのうた』でも主人公が家庭や学校がうまく行ってないがためにバンドにのめり込み、その歌手たちの真似をしている姿で描かれています。このように、自分の殻を破るために何かに夢中になっていて、それがうまくいくことでいい気になっている姿というのは多くの創作物で描かれています。


 ヤヤも、自分の事をすごいと褒めてくれるなるの姿は承認欲求を満たしたい彼女からすれば切っても切り離せない存在と言えるでしょう。実際問題、彼女は自分の実家に不満を持っていて、これは、ハナとそこで出会った8組目「Girls Style」でその姿を見ることが出来ます(2巻P9)。

 また、その一方で、なるにとってもヤヤは重要な存在です。彼女がヤヤの事を思っていることを表すシーンを紹介します。一番わかりやすいかもしれませんが、40組目「WATCH RAN」において、ランから彼女の事をどう思うか聞かれた時になります。この時、彼女は「かっこよくて憧れの大切な親友」と答えます(7巻P22)。

 これについて解説します。まずかっこいいと言う部分ですが、これはなるにとって他の人格形成にかかわったキャラクターにはない存在であると言えます。ハナにしても、私と違ってすごく強い人だと評価していますし(1巻P116)、タミに関しても憧れのお姫様と言っていて(2巻P49)、かっこいいとは違うような言葉を使います。なので、彼女にとってヤヤは他とは違う存在だと言えるでしょう。

 これのような彼女の発言で、ヤヤの事を王子様の様だと言ったことがあります(2巻P39)。これはおとぎ話が好きななるにとって大きな意味を持つと言えましょう。これは、ただかっこいいからというだけではないはずです。そうであれば、ディズニーを例に出してもズートピアのニックや美女と野獣のガストンなどのような立場のキャラクターでもいいはずです。

 なのに、なぜ王子様と表現したのか。それは、彼女の人生にとって目標点に辿り着いた際に傍にいる存在として描かれているからです。なるのお気に入りであるシンデレラを例にしてみればわかりやすいですね。この作品の最終目的は森の中で出会った王子様と結婚すると言うことです。眠れる森の美女なども同様です。

 なるにとってヤヤは彼女のような存在になりたいという意味ではないのです。もちろんよさこいが上手なので彼女のように踊りたいと言う部分やスタイルがいいのでそのような体格になりたいと言う部分はあると思います。ですが、ヤヤの存在についてなるは7組目「つぼみ。」において「ヤヤちゃんにも認めてもらいたい」と言っています。これは、彼女と同じようになりたいというよりも、その存在に近づきたいという言葉なのだと思います。

 このように、ヤヤはなるにとってそのような存在になると言う意味ではなく、その傍にいる身として相応しくなると言う意味で唯一無二の存在となっています。

 また、上記でも書きましたがなるは幼いころからヤヤと交流があります。これについて解説すると、なるは22組目「グレープフルーツジュース。」の冒頭で、ヤヤがいつも優しくしてくれる理由について聞いています(3巻P145)。これは、なるにとってヤヤが特別な存在であれば聞くことがないはずです。誰に対しても優しいのであれば「どうして私に」という聞き方はしないでしょう。それに、実際ハナと出会った際、ヤヤは彼女へ冷たい目線を向けていました(1巻P142)。

なるが自分に優しくしてくれる理由を聞くシーン

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引用元:浜弓場双(2013).ハナヤマタ③(P145) 株式会社芳文社

 なので、ヤヤにとってもなるにとってもお互いに幼いころから特別な存在であると言えるでしょう。そして、それにより、なるからの自分がヤヤのそばにいる存在として相応しくなりたいと言う気持ちや、ヤヤがなるの言葉で自分の存在を認めてもらえるようになっている気持ちにも、説得力が増します。


②お互いに自分の目標を追い求めている時にすれ違いが起きる 


 なるとヤヤは両方とも大きな目標を持っています。なるについてはいつも彼女が言っている通り、みんなみたいに私も輝きたいという点や自分の好きなよさこいに夢中になることです。

 それに対してヤヤは少し言語化するのが難しいかもしれませんが、彼女の目標はアニメ版で彼女のイメージで作られた曲の『琥珀色キャンディ』の歌詞にもなっている「何でもできて失敗知らずの完璧な私になる」と言う所でしょう。だから学校の屋上で細々と少人数で活動してるよさこい部には入りたくないと言っていたのです。


 この2人は互いに目標を応援しようとはしたいと思っています。なるについては、上記にも書いた通り、ヤヤの事をかっこいいと思っていますし憧れにしています。憧れているのであればかっこいい姿を維持して欲しいと思うはずでしょう。

 実際問題、24組目「ラゲッジ・ブルー」において、彼女がデパートのイベントに出ようとした際、かっこいいと慰めようとしていますし(4巻P29)、そのほかにも、50組目「華麗なるセンパイ」において、ダブルデートをしていた際にヤヤからリードされた際にはとても嬉しそうにしていました(8巻P44)。

リードされて嬉しそうななる

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引用元:浜弓場双(2016).ハナヤマタ⑧(P44) 株式会社芳文社

 一方で、ヤヤ目線については、これについては少々難があります。彼女の目標を応援してあげたいと言う気持ちがありますが、それと同時に、自分のアイデンティティにおいてなるから憧れる存在であることが大きく関係していることは上記においても解説済みです。

 なので、それを維持したいがゆえに、他人の所、例えばハナと仲良くなられると不都合がありました。この部分は7組目「つぼみ。」において大きく映されています。彼女がなるのよさこい練習を見た後の独白シーンがわかりやすいでしょう(1巻P165)。ここでヤヤは、なるに対して出来る訳ないと言ったのは、この時なるが自分の傍からいなくなることを憂いていたからだと言っています。

 これは、別の誰かと仲良くなることで自分への関心がなくなってしまうのではという気持ちと自分が凄いと思われなくなってしまうのではという気持ちがあります。前半部分については、8組目「Girls Style」でハナとバーガーショップで話した時に、ハナと1日練習した話を聞いたら不満そうにしていたのが根拠となり(2巻P19)、後半部分については、上記と同じエピソードでなるには出来るはずがないと否定いた点が根拠であると言えます。もしここでその理由がなければ、ハナを強く攻撃すればいいはずです。

 このように、ヤヤはなるに対して自分の理想の在り方であって欲しいがために、自分のアイデンティティを維持したいと思うからこそ彼女の事を傷つけてしまう姿が見られますが、これは非常にリアルな人間性を描いているという意味で評価できます。

 完璧な人間なんてこの世に存在しません。むしろ、不完全である方が愛着を持つことが出来ます。なので、一見かっこよくて何でも出来そうなヤヤにこうしてなるの存在に関して非常に強いこだわりを持っている様子を見せることにより、彼女のキャラクターをよく見せる効果を発揮していると言えます。

 また、余談になりますが、相手に対して強いこだわりを持っているのはヤヤだけであると感じやすいですが、それは違います。なるもヤヤに対して強いこだわりを持っています。

 ヤヤとなるの絆にとって最も大きな試練と言えば、20組目「tea time」から始まったヤヤのバンドの解散をきっかけとした一連の話です。この時、ヤヤはなるに対して「私に話しかけないで」と言われても、それでもあきらめませんでした(3巻P143)。これは、ただよさこいをやらないと言われただけだったタミの時や(2巻P91)、ただ追いかけたら逃げられたランの時よりも(7巻P49)、より大きな障壁として立ちふさがりました。

ランを追いかけたら逃げられたシーン

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引用元:浜弓場双(2015).ハナヤマタ⑦(P49) 株式会社芳文社

 より大きな障壁を乗り越えた方がより大きな成功に感じるのは、絆においても同様です。なので、なるとヤヤの間はより強く感じるのです。


③多くを描きすぎていない


 ヤヤとなるについてはけっこう普段遊んでいる様子などがあまり描かれません。例えばなるとタミであれば、共通の好みがあります。15組目「はじめのいっぽ」において他のチームの衣装の話題で盛り上がっているシーンや(2巻P160)、50組目「華麗なるセンパイ」でぬいぐるみがふかふかであることで盛り上がっているシーンなど(8巻P47)、普段から絡んでいるシーンに個人の趣味が多く混ざっているので、大体普段どんなことをしているのか想像がつきます。

 他にも、ランとわ子を例に出します。全員共通のよさこいを外せば、2人も確かにそこまで共通の趣味を持っているとは思いません。ただ、この2人については、今まで他に友達がいないと自分で明言していました(7巻P66)。それに、なぜそうなったのかが理解できるので、同じ境遇という意味で納得が出来ます。

ランが友達がいないことを語るシーン

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引用元:浜弓場双(2015).ハナヤマタ⑦(P66) 株式会社芳文社

 その一方で、ヤヤとなるはどうでしょうか。よさこいを外せば、前者の趣味はバンドだとして、後者は読書であるはずです。それに、1巻の冒頭でなるは自分の読んでいる本をヤヤに勧めた際拒否されています。そのほかにも、2人のバックストーリーのシーンでヤヤは楽しみにしているドラマがあるから早く課題を終わらせるようになるの事をせかします(3巻P147)。これについては、もしお互いの共通の趣味であれば、わざわざ口に出す必要性はないはずです。

 このように、なるとヤヤは上記で解説した通り互いが互いを必要としている一方で、日常的に何をしているのかいまいちわかりにくい所があります。ここが作品として想像の余地が残り、ファンの中での遊びが産まれる部分となっています。

 これは魅力として非常に大きな役割を果たしていて、二次創作を作る余地を残してファンが盛り上がりやすいという点もあります。実査問題公式アンソロジーでもヤヤとなるの2人を取り扱った作品はとても多かったです(5/16)。ただ、今回は作品単体を見た時の評価の話なのでそれは置いておきます。作品の評価が上がる要素としては想像の余地によって、主人公のなる視点でこの漫画を読んだ際にヤヤが特別な存在である様に感じ取ることが出来ます。

 例えば、ドラゴンボールシリーズのゴジータというキャラクターを例に出します。このキャラクターはテレビ版の一番最後の時系列の話となるGTのラスボスである超一星龍との戦いと、20作ある映画のうち2回にしか出てきません。なので、非常に強い上に人気が高いのに中々出ないキャラクターとして希少価値を保っています。

 ハナヤマタに話を戻します。ヤヤの存在は作中の様子だけ見れば、一緒にいることは多くても中々よさこい部の仲間になってくれないと言う意味で、主人公のなるの親友でありながらそこまで親しみやすい存在には見えません。なので、17組目「天使のスタデーソング」で音楽の作成に協力してくれるところなどの(3巻P31)、彼女の行動が協力的に見える姿でしたり、8組目「Girls style」で一緒に映画に行くなど何気ないシーンでなると仲良くしているシーンに希少価値が産まれ、それがとても興味深く見えるのです(2巻P11)。

音楽の作成に協力しそうになっているシーン

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引用元:浜弓場双(2013).ハナヤマタ③(P29) 株式会社芳文社

 ヤヤは3巻終盤までは、よさこい部と行動をともにしながらもそのメンバーには加盟しない微妙な位置にいました。なので、それがだんだん寄っていく姿に興味を持ちましたし、3巻の終盤のシーンが非常に感動しました。


④なる側の期待と友情の両面を当てられているという点が興味深い


 なるにとってヤヤという存在が憧れであると言う所はすでに語りました。ですが、それ以上に友達であって欲しいと言う気持ちが強くあります。もちろん、それはヤヤにも伝わっていると思います。だからこそ、彼女ら2人の間にスレ違いが産まれることが度々あるのです。

 例えば3組目「オニさんコチラ」においてなるは友情からヤヤにハナへと一緒に断りに来て欲しいとお願いしますが、この時彼女は関わるのが嫌だからと断ります(1巻P58)。これは、彼女が何をしてくるかわからないからだと答えていますが、ヤヤからすれば、以前のようなのしかかられた姿はなるに見られたくないのでしょう(1巻P26)。

なるのお願いを断るシーン

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引用元:浜弓場双(2011).ハナヤマタ①(P58) 株式会社芳文社

 このように、なるの行動に対してヤヤが応える時、彼女にとって、かっこいいと思われていたいがために遠くの存在でいたいと言う気持ちがありますが、それと同じくらい一緒にいたい気持ちがあります。この揺れ動きがヤヤの内面に大きく影響を与えています。

 例えば7組目「つぼみ。」において、かつて嫌がったハナの行動を止める行為を、なるから何も言われないのに自分から行おうとします(1巻P146)。これは、かつてはプライドを前に出してやらなかったことを、後からやってきてやると言うのは恥ずかしいと言う気持ちもあるはずです。なのに、それでもやったのは、やはりなるがハナと仲良くなることで距離が離れてしまうかもしれないと思ったことが大きいでしょう。

 このシーンを例にしてみても、一度断ったことをやると言うことで、ヤヤのなるへの強い気持ちを表現していると思うし、それのおかげで、予想外になるから強い反発を受けてしまって言い返してしまったという、この行為も、なるを自分の所から放したくないという気持ちが表現されているので、納得できるようになっていました。

 このように、なるから向けられる憧れと友情はどちらもヤヤにとって非常に大きなアイデンティティとなっているので、どちらを優先するのかという葛藤の意味で、なるの存在はヤヤの魅力をより際立たせると言う意味で非常に効果的です。

 例えば、なるの友情へと応えるために、彼女の方へと寄り添った際には、それを隠すために自分の憧れたいと思うプライドを強く守ろうとします。例えば、14組目「グリーン・グリーン」において、ヤヤはよさこい部成立のため、部に名前を貸します。アニメ版ではなるがお願いするシーンがあるのでわかりやすかったと思いますが、原作においてもそれが現実的であるためそう考えられるでしょう。

ヤヤがよさこい部成立のために名前を貸すシーン

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引用元:浜弓場双(2012).ハナヤマタ②(P131) 株式会社芳文社

 ただ、先生の元へと用紙を持って行く際ヤヤは「私は名前だけだから」と明言している上に、ポーズもかっこよくなるようにしています。この例のように、ヤヤは自分の友情的側面を前に出した時、自分のプライドを守るために強気な姿勢を取ります。こうしている理由は、なるの存在が大きいはずです。

 その根拠として、なると仲たがいをした際、一応自分から謝ろうとしていた所があります。22組目「グレープフルーツジュース。」の冒頭がそれにあたります(3巻P147)。ここで、プライドを捨ててでもなるとの絆を修復しようとする姿は彼女にとって何よりもなるの事が大事だからにほかなりません。しかし、それはヤヤの望むなるから憧れているという点を残せてはいませんでした。だから、ヤヤはメールを消してしまったのです。

 一方でプライドよりもなるとの友情を大切にしているシーンもあります。アニメ版の例になりますが、第9話「シスター・コンプレックス」において、ヤヤはデパートのイベントで転んだなるに対して、自分のよさこいを捨ててでも彼女の事を助けに行きます。これは、以前小学校の運動会の時に救えなかったことの対比になっていると言えるでしょう。

 ここでは、自分が失敗したなるを他人面して見捨てた過去と違い、なるの事をかばおうとするがゆえに、自分もかっこ悪い姿を観客の人に晒してしまっていますが、そのおかげでなるはみんなで1つのことを作ると言う目標を強く感じることができたはずです。

 このようになるの憧れと友情という相反する要素が混在しているという点によって、ヤヤはなるの存在を切っても切り離せないと言うこともあり、よりその内面に深みを与えていると言えます。


⑤まとめ

 以上が個人的に思うなるとヤヤの絆が作中やキャラクターに与えている魅力だと思います。まとめると

・お互いに幼いころからなぜ仲がいいのかということに納得できる
・お互いの目標やアイデンティティが密接に絡み合っている
・ヤヤの協力に希少価値が産まれている
・なるの憧れと友情という2つの視線がヤヤの感情を大きく揺れ動かしている

という感じだと思っています。


 さて、今回でヤヤとなるの絆を語った訳ですが、まだまだ語ってないことはいっぱいありますね。例えばタミとマチとわ子の魅力やアニオリの魅力や楽曲の魅力などなど。語ろうと思えばいくらでも語るポイントはあります。なので、もしよければ今後もお付き合いよろしくお願いします。

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