【ハナヤマタ】ハナ・N・フォンテーンスタンドの魅力について
初めまして。コンテナ店子と言います。
今回は、ハナヤマタのもう1人の主人公、ハナの魅力を語っていきます。
前回の記事で主人公であるなるを必要不可欠な存在と言いましたが、このキャラクターももちろんそうです(正直よさこい部のメンバー7人は全員必要不可欠です)。公式Twitterも彼女の喋り方を引用していますし、久しぶりに出たスリーブのデザインもハナとなるの物でした。
ハナヤマタの公式Twitter
ハナヤマタのスリーブ
このように、彼女はハナヤマタにおいて人気のあるキャラクターなのは間違いないでしょう。キャッチーなキャラなもそうですが、果たしてそれだけでここまで人気になるでしょうか。個人的にはそうとは思いません。それでは、今回も1つづつ語って行こうと思います。
①トーンを明るくする役割を持っている
ハナの性格として、まず誰もが一番思い描くキャラクター像は、とても明るくて話を引っ張っていく存在であるという点でしょう。けっこうリアルな頭身で描かれていた初期の方ですらコミカルに描かれていた点や(1巻P52)、彼女がいなくなった時に彼女が引っ張っていた(5巻P114)とヤヤが表現する点を例に出せばわかりやすいでしょう。
初期の頃でもコミカルに描かれているシーン
引用元:浜弓場双(2011).ハナヤマタ①(P52) 株式会社芳文社
このように、ハナは持ち前の明るさを使って話の推進力となる役割があります。それが活かされているシーンを例に出しましょう。
18組目「トライ!トライ!トライ!」を例に出します。デパートのイベントに出る際、テストの点数で彼女だけが80点以上を取ることが出来なかったシーンを例に出します。一番精を出していたハナ1人だけが点数を取れなかったとなると、相当ショックなはずですし、落ち込むはずです(3巻P49)。描き方次第では重い話へ持って行くこともできたと思います。
ハナだけ必要な点数を取れなかったシーン
引用元:浜弓場双(2013).ハナヤマタ③(P50) 株式会社芳文社
例として、今年のアカデミー賞で作品賞を取った映画『ノマドランド』を出します。この作品の主人公である女性は、キャンピングカーで放浪しながら生きる生活を余儀なくされますが、その一方で知人から一緒に住まないかと提案されるシーンもあります。それでも応じようとしないのは彼女の気持ちの問題であり、それに胸が締め付けられる映画となっています。
ノマドランドと同じように、現実味を持たせた夕暮れの暗いトーンで撮れば、このシーンでハナが感じる責任感をより鮮明に映すことが出来たはずです。ただ、そうしなかったのは、より感情的な所に深く根差したシーンのトーンを重くすることで、その重要性を作中で描きたかったという点が大きいのでしょう。他のメンバーのよさこい部へ入る根拠を作るところよりも、優先順位は低いはずです。
このように、彼女のようなコミカルな動きをするキャラクターを使うことで、作品のトーンをコントロールする役割を担わせています。これにより、逆に上記のシーンの後にやってくる先生にノートを渡すシーンなどが目立っていると思います。すぐに行動せずに、一度明るいトーンで表情を固定化している所見せることで、何とかしなければと行動しているシーンで細かく表情を変化させる場面を際立たせていると言えるでしょう(3巻P64)。
明るくすると言うところ以外でも、彼女はトーンを保つ役割を持っています。それについては、冒頭のシーンを例に出せばわかりやすいと言えるでしょう。あのシーンでなるがハナのことを妖精さんと呼びます。これの意味はもう言うまでもないでしょう。ハナの事が幻想的に見えたからです。
このシーンを表現するには、やはりハナを幻想的に映さなければなりません。例えば、上で例に出したノマドランドが幻想的な映画であると自分が言ったからと言って、動画を見た人がそうであると思うでしょうか。つまり、作中でどれだけこうであると説明しても、読んだ読者がそうであると実感できる何かがなければなりません。
こういう意味であのシーンは素晴らしいと言えるでしょう。以前も紹介した幻想的であるという評価を受けた名作映画である『シェイプ・オブ・ウォーター』を例に出しましょう。あの映画の冒頭は海の中に沈んだ家の様子から始まります。それをゆっくりと撮影することで、ふわふわ浮かぶ家具もあり、夢の中にいるような、ゆったりとした感覚になります。
これに対して、ハナヤマタはどうでしょうか。1組目「シャル・ウィ・ダンス?」において、舞のように手を拡げながら動かす様子と斜めにどこかも見ていないような目線を映すことで、それを表現しています。この時、彼女が袖の長い服を着ているのもそれをより深くするための要素であると言えるでしょう(1巻P18)。
ハナが舞を踊るシーン
引用元:浜弓場双(2011).ハナヤマタ①(P18) 株式会社芳文社
上記で解説したコミカルな表現とゆったりとした表現、2つの姿が作品内で共存しているキャラクターである彼女は作中でも興味深い存在であると言えるでしょう。
②表面化しにくい寂しがりさを持っている
ハナは一見するといつも明るくて人懐っこい性格をしていると思います。もちろんそういう側面もあると思いますし、キャッチーなキャラクターなので、きらファンなどで彼女の事を知っている人からすれば、それが特徴であると感じることでしょう。
しかし、実際はそれだけではありません。コミカルで活発的な一方で誰かと一緒にいたいと思っている一面を持っていて、それを稀に見せます。一番例としてわかりやすいのはやはり5組目「オペレーション!!」でなるの家に遊びに行ったシーンがそれだといえるでしょう。
あのシーンは言葉で説明しているだけでいまいち伝わりにくいと感じます。一応バットマンを例に出していますが、それを知らない人は多いと思います。
それでもあれが興味深いのは、なるが以前に1人でいる様子を眺めていた所や、彼女がその話の聞き手になっているというのが根拠でしょう。ハナが1人でメンバーを探している姿を見たことから、周囲の上手くやっているヤヤやタミの姿を見て1人取り残されているのに、どうしていいかわからない自分の様子を重ねたからになります(1巻P86)。
それのおかげで、非常によくなっているシーンがあります。タミの父親が教えてくれたよさこいを見に行く回でなると会話するシーンが例になります(2巻P147)。あそこで、見てる人と味わいたいと言うのは、やはりよさこいを誘っただけですぐに都合よく人が集まった訳ではない点が根拠としてあったからこそ心に響くのです。自分と一緒に踊ったからなるも楽しいはずだ、日本人ならよさこいに関心があるはずだ、そう思っていたけど違っていました。
ハナが自分の目標を語るシーン
引用元:浜弓場双(2012).ハナヤマタ②(P148) 株式会社芳文社
つまり、自分が感じた寂しさを他人の分は払ってあげたい、そう思っているからこそ、彼女のやっている自分たちだけでなく見ている人も笑顔にしたいと言う言葉に重みがあるのです。
そして、何よりこの魅力によって輝いているのは、彼女がアメリカに一度帰ったのにそこからまた戻ろうとしたシーンでしょう。あそこで両親に対してよさこいを続けたいと伝えられなかったのは、2人が頑張って築き上げた物を壊したくないというのもあるでしょうが、それと同等に、母親をまた1人で孤独にしたくないという気持ちがあったのは間違いないはずです。だから言い出せなかったのでしょう。
それ以外にも、初期の頃になるから拒絶され楽しみを共有できなかったことから、逆に自分がいないことでみんながステージで踊る際に、自分と楽しみを共有できないことが寂しいと感じるだろうと考えたことから、中々アメリカへ帰ることを言い出せなかったはずです。そして、4人と再開できた時に感情を誘うのは、楽しみを共有したいという彼女の目標をそこでようやく達成できたからという点があるでしょう。
③楽観的思想と常に行動に移そうとする姿が応援したくなる
彼女はどんな時でもいつも何かについて悩んだ際には、すぐにでも行動に移そうとする癖があります。具体例をあげると、よさこいに誘ったタミに後日断られてしまった時があります(2巻P94)。その前に相当落ち込んでしまっている様子を見せているのがあるのに、それなのにすぐに行動へと移そうと話を聞きに行こうと言い出します。このように、考えるよりも行動をすべきであると言い出す様子がとてもよく見られます。
このように、誰かが悩んでいる姿や落ち込んでいる姿を見せている時には、我先に行動しようとする姿が見られます。そして、それはタミだけでなくヤヤの時も一緒でした。なるももちろん気にしている姿を見せていますが、それと同じように彼女も絶対におかしいと言い出します(3巻P111)。
そう言った考え方に対して彼女は強い意志を持っています。わかりやすい例としては、ちょっとしたシーンになりますが、第4組「手のナルほうへ」において、図書室でなるによさこいを勧めようとして拒否された次のシーンがあります(1巻P78)。このシーンにおいて、彼女はなるを見つけた際、以前関わるなと言われているのに挨拶しています。
これは、彼女が後に悩んでいる他人の姿を見たらすぐに行動へと移そうとする姿と重なるように、何かに困っている人を見つけたら、自分から進んでアプローチをかけ続けることが正しいと思っているから、起きた行動であると言えるでしょう。
それ以外にも、42組目「キャッチ・ラン・イフ・ユー・キャン」において、ランをぽんこつ祭りに誘おうとした時も同様です(7巻P51)。相手を追う方法はなるの時に失敗したことがありますし、それについて、本人から得策ではないと、5組目「オペレーション!!」で言われています(1巻P110)。
ランをぽんこつ祭りに誘うシーン
引用元:浜弓場双(2015).ハナヤマタ⑦(P49) 株式会社芳文社
それでも、これを行うとするのは、やはり自分がそうしたいと言う気持ちを伝えたり、一緒にいることで楽しみを共有したいという気持ちを表現したいというのが前に出て、行動に移っているからではないでしょうか。
一方で、彼女の行動力が裏目に出ているシーンもあります。26組目「カプチーノ・スクーロ」におけるデパートのイベントの後がそれです(4巻P76)。普段の行動的である彼女の様子を想像すれば、しばらく学校を休んでいると言うだけで何かあったのではと感じてしまうはずでしょう。
このページのコマでなるが心配するかのように雨が降っている空を見上げている様子も相まって、普段行動的である彼女が休んでいるのには何か理由があるのではと考えるのもおかしくないはずです。このように、普段の行動的な彼女のイメージが先行して、逆にそうでない時を目立たせる効果を産み出していると言えるでしょう。
④日本の人間関係を学んでいく姿を見られる
アメリカ人として日本にやってきたばかりの頃と、夏の祭り直前では、けっこうハナが普段行動している様子が変わっていきます。それもそのはずです。ストーリーの中で彼女はいろんなキャラクターと触れ合っていく中で日本人の適切な距離感を学んでいきます。これについて、21組目「ガールズ・アイデンティティー」を始めとした、ヤヤのバンドが解散した時を例に出せばわかりやすいでしょう。
自分がわかってあげたいと言う気持ちを伝えることで、他人の孤独で寂しい気持ちを紛らわせればいいと思っていた彼女はこのシーンでそうではないことを知ります。このように、ハナは行動が先に出るタイプですが、それと同じぐらい他人と接していくうちに人間関係を学んでいきます。
具体的な根拠として、彼女が1巻から5巻までで他人に対してハグをする回数を計算しました。他のキャラクターがそこまで多くないことを含めても、この作品においてはだんだん正しい距離感に近づいている根拠として適切でしょう。
1巻3回 2巻1回 3巻3回 4巻0回 5巻1回
このように、3巻以降少なくなっていくのが目に見えてわかるでしょう。特に、1巻の頃はなると朝会った時など出会い頭でハグということが多かったのに対し、3巻では自分のテストの点数が低かった時など感情が高ぶった時が多い様に、その方法も変化しているので、これもその根拠として適切であると言えます。
また、彼女が距離感を学ぶと言う意味で1つ例として伝えられるのが、タミ、マチの存在です。サリーちゃん先生に対してもそこまで他の人と話す態度を変えていない彼女ですが、この2人とは打ち解けるまでけっこう他の人とは違う反応を見せます。
まずタミですが、最初に話したのは9組目「Princess×Princess」が最初になります(2巻P34)。彼女は、このシーンで珍しく噛んでしまっていますし、新しい物にすぐ関心を持つ彼女にしては珍しくここでどうしていいかわからずにいるのは、やはり気恥ずかしさが来ているからに違いありません。
それに対してマチには同じ回で恐怖心を持っているのももちろんですし(2巻P30)再会した時も緊張しているのは言うまでもないでしょう(3巻P84)。これらの感情は、やはり自分たちの行動を見張られていたということや、素直な彼女は他人から言われてしまったことを真剣に受け止めてしまうことが影響しているのだと考えられます。
マチと再会して緊張している様子
引用元:浜弓場双(2013).ハナヤマタ③(P84) 株式会社芳文社
しかし、2人ともかかわりを持って行くうちにその接し方を覚えていくことで仲良くなります。タミを例に出せば、10組目「お父様☆トールド☆ミー」において、2度目に会った時において、よさこいの話題になるまでは、ページの中にある言葉の多くをタミが占めています(2巻P60,61)。しかし、タミに踊り方を教えてもらうという形で交流を進めて行った結果、それから彼女を誘うことになります。
これは、最初から自分の気持ちだけを優先してなるをよさこいに誘おうとした時や、7組目「つぼみ」においてヤヤをほぼ初対面で誘おうとした時とは大きな変化であると言えるでしょう(1巻P146)。これはやはり、2人とも初めは拒否されたことから、いきなり距離を詰めるのはよくないと学んだからではないでしょうか。
上記のように、ハナは他人と話したり感情をぶつけながら距離感をだんだん覚えていく姿を見ることが出来ます。これのおかげで、より彼女が日本を離れなければならなくなる展開に重みをくわえることが出来ていると言えるでしょう。
⑤自分の気持ちをあまり多く語らない
ハナは他人に対してそこまで多く自分の感情を語ろうとしません。確かに、語っているシーンは多くあります。14組目「グリーン・グリーン」において自分のよさこいの目標を語るシーンや(2巻P148)、17組目「天使のスタデーソング」においてよさこい部としてイベントに出なきゃダメだと語るシーンなどが例になります(3巻P44)。
これを見て、多く語っているじゃないかというかもしれませんが、自分が言いたいのはそうではありません。自分の気持ちを語っているシーンの多さではなく、その時に使っている言葉の数が少ないというところを評価しています。
その一方で、逆に、なるは自分の気持ちを細かく伝えようとします。ハナが自分の目標を伝えようとした回の直後にある、なるがそうした回を例に出します。この中で、彼女は自分の今までの気持ちを最初に伝えてから、それからどのように今の気持ちが変わったのかというところを言います。そして、その後に結論を述べます。
なるが気分の気持ちを語るシーン
引用元:浜弓場双(2012).ハナヤマタ②(P171) 株式会社芳文社
それに対して、ハナは最初から見ている人も笑顔になれるようにしたいと結論だけを言います。これがどのように魅力的か解説します。
先に言っておくと、なるの伝え方ももちろん素敵です。彼女は自分に自信がない側面があるから、出来るだけ詳しく伝えることで自分を表現しようとしています。
これに対してハナが素晴らしい理由の根拠として、今年のアカデミー賞で作品賞にノミネートされた「ミナリ」を例に上げます。
ここで紹介したシーンは、この様子だけ見ても何のことだかわかりませんが、ずっと田舎臭くて嫌っていたおばあちゃんへこの少年が心を許すシーンになります。ですが、言葉の中身をそのまま受け取っただけでは、その意味は理解できないと思います。
でも、自分が2人の絆が深まったシーンだと言っているのは、演技だったりそこまでのストーリーの運ばれ方だったり、撮影という部分でそれが表現されているからなんですよね。ただ、これは、あくまで自分がそう思っているだけで、そうだという客観的根拠はありません。つまり、本当にそうなのかと視聴者の中で想像させる余地を残しているんです。
ハナヤマタに話を戻します。ハナは一見いつも行動が先に出ているし、何かを語ったりとかもあんまりしないから、何も考えていなさそうに見えるんですけど、決してそんなことないです。
自分の中の目標だったりをちゃんと定めてるし、行動が先に出る部分にだってちゃんと理由があってやってるということは、8組目「Girls style」において、バーガーショップでヤヤと会話した際の様子を見ていればわかるはずです(2巻P22)。このように、彼女は決して何も考えずに行動している訳ではないんです。
そして、その考えだったりをあまり多く語らないことで、先ほどの「ミナリ」の例でも出した読者の中で想像の余地を残しましています。だから、いまこの時のハナがどのような考えで行動しているのかとか、この発言って今までのどのような経験から生まれたのかという所を読者が考えることが出来る要素が残るんですね。
わからない所が多いからいつまでも幻想的で妖精さんのように見えるんです。だから、なるは34組目「マイベストフレンズ-後編-」において、ひょっこり帰ってきそうだとかんじているんです。
ハナが帰ってきそうだと考えているシーン
引用元:浜弓場双(2014).ハナヤマタ⑤(P154) 株式会社芳文社
キャラクター同士が仲良くなっていくことで、その喜怒哀楽だったり人間らしい部分が見えたり、コミカルな扱いをされていたとしても、彼女はちゃんと何かを考えていて、強い信念を持っているように感じるし、それがあいまいで形として表現されていないからこそいつまでもハナは魅力的に見えるんだと思います。
⑥まとめ
ハナは誰よりも説明が少ないキャラクターだと思っているので、おそらく読む人によって一番感じ方が違うキャラクターだと考えています。なので、ここで語った内容が必ずしも正しいとは絶対思わないし、逆に他の人の魅力についても聞いてみたいです。
ただ、個人的な意見をまとめると
①表現がとても豊かでキャラクターの内面を重く描く作品のトーンを明るくしている。
②いつも明るそうな一方で、寂しいと感じている部分がある。
③常に何か行動を起こそうとするので応援したくなる。
④人と接していく中で人間関係を学んで成長していく。
⑤多くを語らない所が幻想的で、読者に想像する余地を残している。
こんな感じだと思います。
今後もハナヤマタを中心に色んな物の魅力を語る記事をどんどん出していこうと思います。特に、引用するエピソードが1~5巻が多いので、6~8巻の魅力とかも語りたいですし、ハナヤマタ以外の持ってる漫画とか、よく引用する映画の魅力とかも語りたいですね。
もしよかったら、今後もよろしくお願いします。