【綿町ダイアリー】#543 バーテンダー時代、僕と彼女とビートルズ。
今、ビートルズ「フォーセール」を聴くと
ストレートなアコースティックロックのサウンドに
ビートルズの若さと純粋さを感じます。
僕がそんな「フォーセール」を好んで聴いてたのも
まさに僕自身がそんな時期だなぁと思うのです。
では、30年前にちょっとタイムスリップ〜
カランカラン
扉を開けると10段ほどの階段があり
そこを降りるとモノトーンのフロアが広がる。
左手にはカウンター席、右手にはボックス席、
そしてその奥にはビリヤード台が2台。
僕が青春の大半を捧げたカフェバーです。
とある日のPM7時。
カランカラン
カウンターから扉口の階段上を見上げると、
彼女の女友達の真由美が仁王立ちしている。
( ゲッ....またオレ何か悪い事したっけ? )
白地にゴールドのエルメス柄のボディコンに
ビビッドな黄緑のストール。
( この時代はこれが派手ではない )
「今からキンクイ行くけど恵子連れて行くで!」
( 当時、新神戸オリエンタルホテルにあったディスコね。そして恵子とは僕の彼女のこと )
「亮ちゃん仕事ばっかりしてたらあかんで」
僕はいつの時代もこんな風に怒られるのです。
( 一生懸命働いてるのに.... )
夜の7時を過ぎるとお店はOLが増えてくる時間。
カフェからバータイムに変わる時間帯です。
小さな店だったからカウンターはすぐに満席。
派手なボディコンのネエチャンよりは、ビジネス系スーツの女性が多かったかな。
バーテンダーの僕が19歳や20歳の頃だから、
そんなお姉様方に可愛がられる訳です。
( 自分で言う、笑 )
男性のサラリーマンが来ると、
ビリヤードの試合相手を頼まれます。
「マスター、1ゲームどう?」
それも僕の仕事のうち。
他のお客様が常連さんばかりだと、僕が1ゲーム突き終わるまで次の注文を待ってくれてたりします。
そんな平和でアットホームなお店でした。
PM9時。
ボックス席には大学生のグループ。
カウンター席はカップルが数組と常連OLさん。
カランカラン
カツカツカツ・・・
ヒールの音が何となく怒ってるように聞こえる。
( キンクイ行ったのに帰ってくるの早かったな.... )
カウンター席の端っこに座る彼女。
僕は氷をたっぷり入れたワイングラスにハイネケンのビールを注ぎ彼女の前へ。
「キンクイ楽しかった?」
僕はそう言ってビールを差し出す。
何となくふてくされ顔の彼女。
( あぁぁ、やっぱりなんか怒ってる。僕はいつの時代も女心がわかんないんだよなぁ.... )
「あら!恵子ちゃんじゃない!」
常連のOLさんがナイスアシストしてくれる。
( 僕を助けてくれるのはやっぱお客様だ )
この店は、僕のワンオペでアットホームな感じだから、最後はボックス席の大学生たちも一緒に喋ってお酒飲んで、バー全体が楽しい空間になる。
彼女の機嫌も常連さんが直してくれるし(笑)
神戸という土地柄も合ってたかな。
僕自身にも、とても居心地の良いお店でした。
そして店内には、いつも
ビートルズ「フォーセール」が流れていました。
今、綿町珈琲の店内で「フォーセール」を流すと、
あの頃の匂いのようなものが蘇ってくるんです。
いい時代だったなぁ、って。
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