商店会は地域のサポーター
町会がないことに最初はびっくり
武蔵野市には、いわゆる市民組織としての「自治会」や「町会」がないと言われています。
ボクの勝手な想像ですが、ゴミは各家庭に個別に集めに来てくれるので、ご近所同士でゴミ置き場の管理について話し合う必要がないし、地域の情報共有のための定番「回覧板」も、町会費の集金や班長決めもないので、ご近所の課題を話し合うような「ユニット」がなくてもなんとかなって来たのでは、と勝手に想像しています。
卵が先か、にわとりが先かはわかりませんが、1971年(昭和46年)武蔵野市コミュニティ構想が策定され、コミュニティを市民生活の基礎単位と位置づけ、市民による「自主参加」・「自主企画」・「自主運営」のいわゆる自主三原則に立った自律的・自発的なコミュニティづくりを目指すこととなったそうです。(※1)
もともと「自治会」や「町会」がないところに、コミュニティ構想ができたのか、それともコミュニティ構想ができて今があるのかはわかりませんが、事務所やお店のスペースを借りてスタートしたボクとしては、武蔵野市の仕組みを知れば知るほど最初は驚きました。
商店会もひとつの地域コミュニティ
当たり前のことかもしれませんが、昔は商店主がお店やお店の近くに住んでいたので、商店会自身もいわゆる「町会」の役割を果たしていたのかもしれませんね。
暮らしと商売が一体化した中で、地域の困りごとや課題を井戸端会議同様話し合いながら調整したり、解決したりしていたのだろうと想像します。
しかし時は流れ、昔から商売をされていた諸先輩方は様々な事情により商売を離れ、自分のお店だった場所を人に貸すようになりました。
中道通りもご多分に漏れず。うちの商店会の会員ベースのお話ですが、中道通りに住んでいる会員は会員全体の約2割。残りの8割の会員は中道通りとその周辺には住んでおらず、お店のスペースを借りている人。すなわちここへ働きに来ている方々となりました。
地域活動の伝統を受け継いで行く
住んでいながら商売を続けている人は少なくなりましたが、「防犯活動や犯罪対策への協力」、「高齢者や子どもの見守り」、「子育て世代への支援」、「お祭りに代表される伝統行事など地域文化の継承」など、商売を通して、この地域にお住いの方々の「日常」を支える公的な役割を果たしていく、という商店会の存在意義や会員の精神は、働きに来ている多くの会員の皆さんにもちゃんと受け継がれていると思います。
いや、もっと言うなら、働きに来ている多くの会員の方々こそが、今やこの地域を支えるサポーターのひとりになっていると思います。
自画自賛になってしまいますが、中道通り商店会の会員の皆さんは、本当に意識が高いと思います。
地域の見回りに代表される防犯活動をやろうと声を掛ければ、住んでいる会員以上に働きに来ている会員の方が手を挙げてくれるし、地域のお祭りのお手伝いをお願いすれば、お店の仕事の合間や営業前に手伝いに来てくれる。
特にお店を借りて商売している、いわゆる働きに来ている会員の皆さんは、地域に貢献することで地域に溶け込み、この地で末永く商売していくためには地域としっかり関わっていく覚悟をお持ちの方が多いのだと思います。
地域を知るということ
ボク自身、商店会の会長になって、地域の諸団体の皆さまとお会いして話す機会が増えたおかげで、中道通りを中心とする吉祥寺本町2丁目から4丁目エリアに、地域と住民を支える様々な目的を持った団体が存在し、あるときは行政と連携し、またある時は「自主」的に課題を見つけて解決していく団体が多く存在することを知り、またたくさんの学びを得ました。
例えば防災に関すること。
ボクたちが働く中道通りの周辺には、大地震などいざという時の一時避難所として、市立第一小学校と市立井之頭小学校が指定されています。
その一時避難所を行政とともに開設、運営する自主防災組織として「一小地域防災ネットワーク」、「井之頭小学校避難所運営協議会」という地域住民の方々の力で支えられている防災組織があることも知りました。(※2)
地域の仕組みを知り、その仕組みを支える方々との連携を常に意識することで、8割が働きに来ている会員で支えられている商店会を、少しでも地域のために役立つ組織にして行かなくてはならないと改めて感じています。
住んでいないからこそ、あえて目を向けないと入ってこない地域情報がたくさんあることを知り、意識の高い会員の皆さんとこうした情報をいかに共有していくかが課題であることにも気づかせてもらいました。
顕在化している課題
地域を支える多くの方々と知り合い、気づいたこともあります。
それは、多くの方々がボクよりもひとまわりもふたまわり年齢が上、ということ。つまり、地域を支えている方々の高齢化です。
市内のほかのエリアの事情はわかりませんが、ボクたちが商いさせて頂いているこのエリアは、高齢化と後継者不足が深刻化している状態だということが、関われば関わるほどひしひしと感じられます。
もちろん商店会も他人ごとではなく、次の世代にどのようにしてつないで行くかは悩ましいところではありますが、この地域コミュニティを支える多くの団体が抱える高齢化と後継者不足の問題は、喫緊の課題でもあり、商店会の悩みよりもはるかに深刻な気がしてなりません。
なぜなら、この問題を少しでも早く良い方向に解決していかないと、地域コミュニティを支える活動がストップしてしまう可能性があるから。
本当に心配です。
行政の皆さんもこの問題について手をこまねいているわけではないと思いますが、(※3)次の世代の人たちがつないで行きやすい形を模索するためにも、一度白いキャンパスから絵を書き直しても良いのではと感じているのはボクだけでしょうか?
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