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靴下の構造と機能

靴下を買う時、どんなことを考えますか?

ファッション性? 形? 値段?

様々な要因はあると思いますが、靴下も機能的なフットウェアとして認識し、靴下選びをしていることは多くないと思います。

実は、いい靴を履いていても、靴下によって足のトラブルにも繋がることあります。

靴と靴下はセットで考えなくてはなりません。




足部機能に重要な靴下の機能として、

・皮膚剪断力のコントロール
・足底圧分散、緩衝
・汗の吸収、発散
・血行促進
・抗菌作用
・体温調節

などが挙げられます。


皮膚剪断力


歩行中、靴と足の間では摩擦による皮膚剪断力が働きます。

摩擦係数が高いと皮膚剪断力が強くなり、足底の皮膚へのダメージが大きくなり、水疱形成や胼胝形成の原因となってしまいます。

摩擦係数の低い靴下を履くことで、皮膚剪断力を軽減でき、水疱や胼胝の発生確率を下げる効果があります。

しかし、摩擦係数が低すぎるのも問題です。

摩擦係数が低いということは、滑りやすいということ。

つまり、靴の中で足部が動きやすく、歩行時の快適感が損なわれる可能性があります。


足底圧分散、緩衝


歩行時、走行時など、足底圧増加により足部へダメージが蓄積され、足部トラブルの原因となります。

靴下は、そのクッション性をもって、足底圧を軽減し、ダメージ軽減する役割があります。

クッション性が高いものが緩衝作用が高く、現在ではパッド入りの靴下などが販売されています。

パッド入り靴下

また、繊維の違いもクッション性に影響を与えます。

アクリル繊維やウール繊維は、綿と比べ弾性に富み、クッション性が高いとされています。


汗の吸収・発散


活動時、1時間当たり足の汗は約200mLにもなる。約コップ1杯分ですね。

その水分は、靴下によって吸収されますが、コップ1杯分の水分を毎時吸収できるほど吸水性はありません。

ビショビショになってしまいますよね。

けど、ほとんどの場合、靴下ビショビショになった~って状況…

ないですよね?

汗を発散させているんです。蒸発ともいいます。

足底のエクリン腺から出た汗は、靴下に吸収されます。

そして、繊維の毛細管現象(繊維間の隙間を水分が浸透していく現象)や歩行などで足底への圧迫で水分は足背方向へ移動し、蒸発していきます。

この一連の流れをwickingといいます。

wickingは、ろうそくを用いて説明されます。

ろうそくは、ろうを燃やして火が上がりますが、芯となる紐は燃えることなく、ろうだけが燃えますよね?

これは、火の熱で溶けたろうが、紐の繊維間を通って先端まで浸透していき、移動したろうが燃えているためです。

靴下でも、同様に足底の汗は、靴下の繊維を伝い浸透していき、足背部へ移動し発散させます。



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また、wicking繊維の種類で影響を受けます。

例えば、綿はアクリル繊維より、吸水性に優れています。

吸水性が高いといわれると、なんとなくいい感じがしますが、

蒸発しにくいといわれています。

綿はアクリル繊維と比べ、膨張率が約9倍になるとも言われています。

そうなると、綿繊維は、wickingによる発散がスムーズにいかず、高湿度になり、かつ、水分を含み膨張した繊維は靴内での剪断力を増強させる恐れがあります。

つまり、菌が繁殖しやすく、胼胝や傷などの足トラブルを起こしやすいということです。

基本的に天然繊維(綿など)より、合成繊維(アクリル)の方が、靴下に向いていると言えます。


また、wickingは、靴のアッパーでも影響を受けます。

アッパー部分の素材に左右されます。

メッシュタイプであれば、うまく外に水気を発散できますが、革素材では発散させにくいとい特徴があります。

少し靴下の話とは逸れますが…

アッパー部分、全部メッシュにすればええやん!

って思ったあなた。

それがよくないんです笑

メッシュ生地は、通気性はいいのですが、強度は革などと比べると劣ります。

そのため、破けやすく、また甲をしっかり締める際に強度的に不足しています。

っと、これ以上話すと脱線しすぎるのでここまでで(笑)

とにかく、汗の発散を考えるときは、靴もセットで考えましょうということです。




様々な靴下


特殊加工技術が発達し、靴下にも上記以外の様々な機能を持った靴下が存在します。

一部ご紹介したいと思います。


シームレス靴下


シームレスソックス


文字通り、縫い目のない靴下です。

普通の靴下では、足趾周辺の甲側に縫い目があり、爪に繊維が引っ掛かったー!って経験ないですか?笑

縫い目がないので、そんな煩わしいことが避けれます笑

しかし!

この靴下、その快適性よりもっと画期的なことがあるんです。

それは、糖尿病患者や透析患者において本領を発揮します。

足病ハイリスクの方にとって、圧迫は致命的です。

圧迫により血流障害を招き、褥瘡のような機序で潰瘍になってしまいます。

靴下の縫い目は、圧迫を助長します。

そのため、縫い目があることで、潰瘍リスクを上げてしまいます。

実際、臨床で靴下の縫い目による圧迫で潰瘍ができた方を経験しました…


上記に書いた靴下の機能プラス!

縫い目があるかないか、ここも一つのポイントです!


5本指ソックス


5本指ソックス、履いてる人、結構いますよね?

私もその一人ですが、履き始めたら癖になるというか・・・

普通の靴下が履きたくなくなります(笑)

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さて、5本指ソックスの機能としては、主に

・足趾感覚入力向上、足趾アライメント改善によるバランス能力向上

・趾間の汗の除去

・血行促進

等があります。


論文ベースの報告は少なく、エビデンスとしては弱いですが、学会発表、雑誌レベルの報告では以下のような見解があります。

5本指Sを着用することで支持基底面が拡大し、足趾機能が働きやすくなり,動的バランスが向上したと考える。

畑迫ら,「5本指ソックスが静的および動的バランスに及ぼす影響」,中部リハビリテーション雑誌,2017,12,13-16


5本指ソックスによる刺激が、足部温上昇・足底感覚値向上を引き起こし、効果的に姿勢制御を行えるようになった可能性が示唆される。

三輪ら,「5本指ソックスが片脚立位姿勢制御に与える影響」,理学療法科学 ,29, 11-11, 2014


まとめると、

・足趾1本1本が自由に動くことで、足趾による姿勢制御ができるようになった。

・足趾が広がり、基底面が広ることで、足部から感覚入力が改善し、バランス能力向上に繋がった。

ということが言えるのかな?

まだまだ根拠としては薄いので、断言はできないでしょうが、一つの意見として知っておいて損はないでしょう。


また、趾間の汗の除去効果に関しては、白癬(水虫)の予防・治療に期待されています。

白癬菌は、高温多湿の環境で繁殖しますので、足趾間までしっかり汗の除去を行い、湿度を下げる必要があります。

5本指ソックスはまさに、その機能が備わっているわけです。



私は、5指ソックスは、基本的に足病(潰瘍など)のリスクのない方が対象と考えています。

5本指ソックスは足趾1本1本を包むため、足趾間距離は広がりますが、足趾間圧も高まってしまいます。

足病ハイリスクの方にとって、圧上昇は致命的です。

5本指ソックスで潰瘍が増えたなんて報告(そもそもそんな研究モデルできないと思いますがw)はありませんが、避けておいたほうが無難でしょう。


機能的靴下


靴下は繊維の編み方によって、伸縮性を調整できます。

部位によって伸縮性を変えることで、足部機能の補助を行うことができます。

イメージとしては、テーピングのようなイメージで、筋の収縮しやすくなりますよ~、アライメントが整いやすいですよ~くらいの感覚です。

なので、比較的症状が軽度の方が対象となるかなと考えています。


機能的靴下、メジャーなところでいうと「背屈補助靴下」ですね。

背屈補助 靴下

背屈方向へ高い伸縮性を持たせることで、背屈しやすくなる機能を備え、転倒予防に繋げる商品です。

高齢者の転倒の原因の一つとして、足趾・足関節の背屈不足による躓きが挙げられています。

そのため、背屈を補助することで、転倒リスクの軽減が図れるというわけです。





もう一つ、ご紹介します。

それが、外反母趾用の機能的靴下になります。

その靴下のこちらです。

母趾を内反方向へ牽引するだけでなく、アーチ補助、距骨下関節回外補助を組み合わせたものです。

この靴下、大学との合同開発されたもので、論文も出てたので紹介しますね。
吉田ら,外反母趾用の機能的靴下による介入効果の検証,理学療法科学 31(6), 857-863, 2016

外反母趾角20°前後と軽度の方が対象となっていることもありますが、靴下着用のみで改善が見込めるようです。

また、運動療法(この研究では、母趾外転運動、short foot exercise、下腿三頭筋のストレッチング、母趾外転ROMex)を併用することで、さらなる外反母趾改善が見込めると考えられています。


外反母趾は進行すると、改善は難しいですから、軽度の段階で、このような対策法を提示出来たら、進行を止めることができるかもしれませんね。


まとめ
・靴下は摩擦抵抗を下げ、擦れによるトラブルを軽減している。
・靴下は、衝撃を和らげるクッション作用を持っている。
・足部の汗は、靴下のwicking作用により発散させている。
・シームレスソックスは、履き心地の良さだけでなく、縫い目圧迫軽減により、壊疽・潰瘍リスクの軽減に貢献する。
・5本指ソックスは、バランス能力向上、白癬予防が期待されている。
・5本指ソックスは、潰瘍、壊疽高リスクの方へは要注意。
・繊維の編み方で伸縮性産み、それを利用し、足部機能をアシストする機能を持つ機能的靴下が存在する。



私は、フットウェア外来という、フットウェアの指導を行う外来を担当していますが、靴下をフットウェアとして認識している方は少ないです。

てか、いないです(笑)


靴下も重要なフットウェアです。

靴とセットで靴下も見てあげましょう!


それでは、ありがとうございました!


参考文献
1)坂口顕 他;理学療法士のための足と靴のみかた,文光堂,2013
2)畑迫ら;5本指ソックスが静的および動的バランスに及ぼす影響,中部リハビリテーション雑誌 12: 13-16, 2017.
3)三輪ら;5本指ソックスが片脚立位姿勢制御に与える影響,理学療法科学 29(suppl-4): 11-11, 2014.
4)吉田ら,外反母趾用の機能的靴下による介入効果の検証,理学療法科学 31(6), 857-863, 2016


ライタープロフィール
中木屋 友太
理学療法士
・Spine Dynamics療法 アドバンスコース終了
・3学会呼吸療法認定士
・フットウェア外来を担当し、足病や体の痛み、パフォーマンス向上のためのフットウェア指導、インソール作成に従事

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