ダメおやじの北海道自転車旅(5日目)
これは、50代後半のオヤジが体験した本当の話です。
5日目。帯広は雨。また雨です。ホテルを7時30分ちょっと前にチェックアウト。後輪タイヤの空気圧を見るとちょっと心もとないなあ。で、小型ポンプでがんばりました。何も食べないで5日目スタートです。
今日は単に釧路までの移動日。途中観光名所的なものはなさそう。走り出してすぐにセブンイレブンを発見したのでここで朝食。おにぎり2個(エビマヨとすじこ)とお茶。そのほか「いろはす」を2本購入し、1本をボトルに、もう1本をリュックに入れる。
このコロナ禍の影響で、北海道のコンビニではほぼゴミ箱が使えないようになっている。なので、空いたペットボトルをくしゃくしゃにして体積を減らせる「いろはす」が重宝する。
雨は小ぶりで走りも快適。「今日は楽勝!」とか思っていたけど、それが一転、最悪の一日になろうとは、この時は予想もしていなかった(ホテルのチェックインの15時より前に着いちゃうかも、とか考えてたし)。
スローパンク、再び
悪夢の始まりは、やはり後輪のスローパンクから。空気が次第に抜けているようだ。でも、予備のチューブは2本ある!(1本はししゃも屋の社長にもらった新品、もう1本はやはりししゃも屋の社長にパンク修理してもらったヤツ)。安心安心と。で、一度道端に自転車を止めて後輪のチューブを新品のヤツに交換する。セットして小型ポンプで空気を入れるのだけど、あれ? 何かおかしい。ぜんぜん空気が入っている感じがしない。よくよく見ると、リムとタイヤの隙間からブクブクと泡が出てる! これ、パンクしてます!
仕方がないのでもう一度チューブを交換。こちらはパンクしてない様子。でも小型パンプでなかなか空気を入れられず、固くならない。困った!
小降りだけど雨は相変わらず降っている。後輪の空気は充分じゃない。このまま走り続けるとパンクする可能性が高い。しかも、すでに予備のチューブはない。
時間的には余裕があるので、できるだけ慎重に慎重に自転車を走らせる。「もう、心折れそうです」というタイミングで道の駅っぽい店を発見。これはちょっと休んでいきましょう。
「道の駅うらほろ」のちょっと手前にあった「ザ・ベジタブルショップ21」に自転車を止める。ここでの収穫はゆでとうもろこしにありつけたこと。旬のとうもろこしはとっても甘くて美味しかったです。
で、店の人から情報収集。近くにロードバイクを扱う自転車屋がないか確認するも、答えは「ノー」。おじさん(といっても自分よりかなり年下っぽい)は「空気入れならガソリンスタンドにあるんじゃないかな」というので近くのガソリンスタンドに電話して訊いたけど、「普通の自転車用ならあるけどロード用はない」とのこと。そうですか。
ここでもちょっと後輪に空気を入れてから再スタートです。「後輪がパンクするともう後がない」ってことに気を取られていたせいで、ショップにリュックを置いたまま走り出していることに気がついた。500m? 1km? くらい走ってから気付く。なんてマヌケなんでしょう。いま来た道を引き返し、ショップまで戻ったらリュックありました。よかった。これで本当に再スタートです。
今日は日曜日だった!
慎重に自転車を走らせていると、音別に着いてた。ここの「味閣」で昼食を取ろうと思っていたんだった。13時。ちょっと遅くなったけど、お昼にしましょう。店に入って醤油ラーメンと餃子を注文。来ました醤油ラーメン。
うまそうです。で、うまかったです。冷えた身体が温まりました。
で、食後にスマホで近くの自転車屋をチェックしていると、あれっ? 珍しくロードバイクが映っている写真をアップしているサイクルショップが近くにあるじゃないですか! 「平山自転車店」ですよ!
「助かった」と思ったのも束の間、営業時間を見たら「月曜~金曜の9時30分~18時」だった。今日は何曜日? 日曜日かあ。やってないじゃん!
味閣を出て、一縷の望みを抱えて平山自転車店の前まで行ったけど、やっぱり休みでした。開いていれば空気入れはもちろん、予備のチューブも買えたはず。あああ。残念至極です。しかたなくまた走り始めます。釧路までまだ40km以上あるよお。
人生初の「泣きっ面に蜂」から一転…
この状況でも泣きたくなっているのに、悲劇はさらに追い打ちをかける。後輪の空気の状況がよくなくなってきたので、一度停車し、後輪に空気を入れようとしたら、小型ポンプの管が付け根からポロっと取れてしまった。ポンプおしゃかになりました。もう、この先追加で空気を入れることは出来ない。なんとか釧路までこのまま持たせて、釧路でサイクルショップを見つけるしか対策ないなあ。
ここに加えてさらなる危機が。トイレにいきたくなってしまったのでした。なるべく時間は使いたくないけど、こればっかりは生理現象。どうにもなりません。このまま走っていれば17時前には釧路に到着できそう。一方、18時を過ぎてしまうと、日曜日にオープンしている店も閉店してしまう可能性が(この状況でGoogle先生に確認して可能性を否定されるのがいやだったので、まだ釧路のショップを調べていない。この小心者があ!)。
ここで「恋問館」という道の駅の看板が目に入ってきた。時刻は15時半ちょっと前。ああ、これは寄るしかないですね。と、自転車を建物の前まで寄せていくとあれ? ロードバイクなんかを停めるサイクルラックがありますよ。これまで北海道の道の駅ではほぼ見かけていないものです。
自転車をそのサイクルラックに停め、「これはもしかして…」と期待しながらまずはトイレへ。間一髪セーフです。よかったよかった。で、館の中に入り、店の人に「もしかしてロードバイク用の空気入れ、あったりしませんか?」と訊いたら「あれ、まだ事務所に置いてあったかなあ」ですと。「ちょっと調べてくるから待ってて」と言い残し、裏に入って数分で戻ってきました。ロード用の空気入れを持って(ししゃも屋で使ったのとまったく同じタイプのもの!)。はあ、この旅二度目の「地獄に仏」です。
お礼を言って空気入れを借り、すぐさま後輪に空気を入れます。バルブに口を挿したら、現状の気圧1.1barだって(今履いているタイヤの適正気圧は7~7.5bar)。こんなので走ってたのか? よくパンクせずに保ったなあ。
後輪、前輪とも7.5barまで空気を入れ、これでひとまず安心です。空気入れを返却し、お礼の意味も込めて「白い恋人ソフトクリーム」のマーブルを買って外で食べました。気温が低いのを忘れてた。けど、おいしかったよお。走り出せば、身体は温まるから大丈夫です。
日曜の夜、釧路の街は暗かった…
16時ちょっと前。タイヤの心配がほぼ解消されたので、いよいよ釧路に入るべく走り出しますよ。もともと頑丈なタイヤを履いているので、これで多分パンクはしないだろう。そう思ったものの万が一はあるので、やはり釧路で開いているサイクルショップを探すことにします。
足の疲れは限界。なんとか釧路の街に入ったのが16時40分くらい。ここでGoogle先生で近くの自転車屋さんを調べてみるとありました。「二輪ショップ ツチヤ」です。日曜日も20時までやっている。ロードバイクも扱っていそう。早速電話をかけてみると、ロード用のチューブも小型ポンプもあるとのことで、助かりました!
店に着いて、チューブと小型ポンプを見せてもらいます。チューブは2種類あったけどパンクに強いほうを購入。小型ポンプは1種類。しかも今回壊れたものとまったく同じもの。まあ、壊れたのは経年劣化があってのことだと思い込み、こちらも購入しました。ありがとうございます。
店のおじさんとちょっと話し込んで、明日見に行く予定の釧路湿原の話題になりました。JR釧路湿原駅の方(湿原の東側?)に行くつもりでいたのだけど、店のおじさんが言うには「ここから近い西側のほうがいいよ」とのこと。うーむ「地元の人が言うことは正しい」と思うようにしているので、ちょっと検討してみようかな。お礼を言ってホテルに向かいます。
今日の宿は「天然温泉 ホテルパコ釧路」です。到着したのが17時40分くらい。とてもキレイなホテルです。このお宿、Go To キャンペーンで素泊まり1泊2691円(税込み)でした! なんてことでしょう。
チェックインして宅配の荷物(輪行袋)をまず確認します。ちゃんと届いていました。荷物は、チェックアウトして、その後午後まで預かってもらえるか確認したところ「問題ない」ということなので、一安心。軽装で釧路湿原まで走れます。
部屋に入ってすぐに最上階の天然温泉に向かいます。こちらもとってもキレイ。大きなお風呂は気持ちがいい。露天風呂も満喫しました。外は確かに寒いけど、お湯に入れば天国です。ゆっくり身体を休めます。
で、恒例の洗濯です。ランドリーは1階。洗濯は40分。終わるまで部屋でテレビを見て過ごす。終わるころにランドリーに行くと洗濯は終わっていたのだけど、乾燥機が全部埋まってる! よく見るとあと10分くらいで終わるのがあったので、ロビーで10分時間を潰し、空いたのを待って乾燥へ。これが1時間。なんだかんだと時間が過ぎる。乾燥まで終わって「さて夕食を食べに出るか」となったのが21時20分。ホテルを出てお目当ての店に向かうも、途中街が暗い。日曜の夜、釧路の街は暗かった。
たどり着いた店は大当たり!
お目当ては「鶏善」で美味しいザンギを食べる予定だったのに、店は開いていなかった。近くを散策するも、開いている店自体が少ない。ここらへんは繁華街のはずなんだけどなあ。
で、たどり着いたのが赤ちょうちん横丁。閉まっている店も多いけど、ここは何軒かまだ開いている。で、どこに入ろうか迷っていると、場にそぐわぬフレンチ(イタリアン?)バルを見つけたので興味本位で入ってしまいました。「赤横びすとろ TAKKE」です。カウンターだけ(?)の小さなお店です。
オーナーシェフのお兄さんが一人で切り盛りしている店のよう。左の奥に常連さんとおぼしき男女4人がにぎやかに飲んでいて、その手前のカウンターにカップルが一組いました。自分はカウンターの右端の席に座りました。
メニューを見ると一品料理の価格も手頃な感じで、ぼったくるような店ではなさそう。安心しました。「飲み物何にします?」と訊かれたので生ビールをオーダー。続いて料理を2品、「クジラのカルパッチョ風」と「ふらの豚のスペアリブBBQ風」も注文します。
しばらくして泡がきれいな生ビールが届く。一気に半分ほど飲んでしまいました。何も入っていない胃に直撃。すばらしい。で、お通しが出てきた。なかなか美味です。
ビールがなくなり、おかわりにデュワーズのハイボールを注文したあたりで1品目が出てきました。「クジラのカルパッチョ風」です。
中央に細かく切られカルパッチョされたクジラ肉が積まれていて、周辺を半分位切られたクラッカーが取り囲む。ふむふむ。クラッカーにクジラを乗せて食べるわけですな。
「うっ、これウマイ」。思わず声に出てしまいました。クジラ肉の美味しいところがうまく引き出されていて、とてもGOODです。次々と口に運ぶ。ハイボールが進む進む。あっという間に完食です。
オーナーシェフとの会話も盛り上がる。こちらの情報を小出しにしていくとこんな自分でも会話できるもので、釧路の話もいろいろ聞きました(地下街を作る100年計画の話とか)。クジラについても「日本では6か所の港でしか水揚げできなくて、釧路はその一つ。だから新鮮なクジラ肉が提供できるんですよ」なんて話を聞きながら、ハイボールを頂いてます。うん、楽しい。
で、続いて「ふらの豚のスペアリブBBQ風」。結構なボリュームで出てきました。
「そうでもないですよ。150gかな」「いや、150gって多いでしょ」「多いですよね」(これは奥の常連さんのお一人)なんていいながら、料理を見る。わさび、にんにく塩、マスタード、が脇に添えられていて、それぞれちょっと付けて食べるもののよう。まず、わさび。うーむ、豚の脂の甘さウマサをわさびが引き立てて、とってもウマイ。マスタードもにんにく塩もそれぞれウマイ! さらにハイボールが進みます。150gの肉があっさりと胃の中に消えていきました。
一息ついて、オーナーシェフに一つリクエスト。「シメになにか作ってくれません?」「シメってフレンチの感覚にないんですよね」って言ってたけど、無理くりお願いしたらトマトクリームのカニリゾットを作ってくれました。これまたウマイ!(写真撮り忘れた!)
「よく食べますね」って言われてしまいました。お腹すいてたから仕方ないじゃん。ハイボールも何杯飲んだかなあ。最後に一杯お願いしたら「さっきのでウイスキーが切れちゃったんで」とのこと。飲み過ぎた? 仕方がないので今日のスパークリングワインをお願いすると「じゃあ、それはぼくからのサービスで」との申し出が。そうですか、それじゃお言葉に甘えさせていただきます。
で、こちそうさまでした。会計をお願いするとあれだけ食べて飲んで6000円でした。かなり割安です。いいのかなあ。とにかく、この北海道の旅で一番満足したお店でした。
で、次どこか行くの?にみたいな話になったのだけど「釧路の日曜日の深夜は開いてる店ないよ」とのこと。「とりあえず、ぶらぶらしてみますよ」と店を出た。
やはりインデアンカレーか…
確かに開いている店が少ない。開いてるスナックも1、2軒あったけど、にぎやかな感じなのでちょっとパス。で、たどり着いたのが「BAR K」です(写真ピンぼけだなあ)。
こちらもお兄さんが一人でやってる店でした。「何が飲めるの?」と訊くと「うちはバーだから、このへんかな」と、示してくれたのがウイスキーのボトルが並ぶ棚。うーむ、いろいろあるなあ。と、最初にお願いしたのはラフロイグの10年。ああ、間違いなくラフロイグです。
で、そこからウイスキーの話をいろいろ聞けました。でオススメされたのが、ポートシャーロットの10年。「ロイズのチョコで、このポートシャーロットを練り込んだのがあるんですよ」というので、次はそれをいただくことに。ラフロイグと比べて甘い香りで飲みやすいウイスキーでした。なかなかよいです。
マスター、過去にサントリーと喧嘩した話なんかをしてくれました。なんでも、サントリーが「カシスオレンジ」を缶で出したとき、炭酸入りにしたことに腹を立てたとのこと。「カシスオレンジは本来ソーダで割ってない。ソーダで割ったらカシスオレンジソーダですよ。サントリーはバーテンダーの味方だとか言ってるけど、バーテンダーを軽視している!」と憤慨し、サントリー製品を一切使わないと決めた。「でも、はたと気がついたんだけど、サントリー製品を一切使わないと、バーできないんだよね。だから謝った」って笑ってた。わかるよわかる。
ということで、珍しいサントリーのお酒を薦めてきた。シェリー樽で熟成させた梅酒とウイスキーをブレンドした「山崎蒸溜所貯蔵 焙煎樽熟成梅酒リッチアンバー」。これをストレートでいただくことに。うむ、確かに梅酒なんだけどスモーキーな香りでまろやかになってて、これも美味しくいただきました。
そのほかいろんな話をしたのだけど、最終的に帯広のスナックで話題になったインデアンカレーの話になった。なんでもマスターは週に3回は通っているというマニアらしく、熱弁を振るわれた。帯広だけじゃなく釧路にも支店があるんですね。で、「明日のお昼なら行けるかも」と言ったら「ぜひ行ってください」と猛烈にアピールされた。で、オススメを訊いたら「ルーはインデアンルーの一択。具はエビかカツをオススメしますね」とのことだったので「じゃあカツカレー食べようかな」と。
そんなこんなで深夜も回ったのでこれにて終了。ホテルまで歩いて帰りました。今日もいろんなことがあったなあ。おやすみなさい。
教訓:日曜日は休息日。
店は原則閉まっていると心得よ!
次回「最終日」に続く