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焙煎する喜び

私はコーヒーの焙煎の経験が10年ほどあります。
この経験が長いか短いかはわかりませんが、この時間の中で手網を使ったり、フライパンを使ったり、電熱を熱源とする焙煎機やガスを熱源とする焙煎機、熱風で焙煎する焙煎機などを使ってきました。一度に焙煎できる量が100グラム少々のものや一回で焙煎できる量が30㎏を超えるものもありました。いろいろ焙煎してくるとひとつのガイドラインが見えてきます。

「コーヒー豆の変化だけを見ていればいい」

焙煎では「何分で何度上昇させる」とか「ディベロップタイムがoo秒」だとか温度と時間の数字を重視してコーヒー豆の変化をあまり見ていない人がいます。焙煎機に取り付けられた温度計が表示しているものは「ドラムの中の空気の温度」です。それは変化し続けているコーヒー豆の温度ではありません。ドラム内の空気の温度の変化に合わせて火力やダンパーを操作しても室温や湿度、また生豆の状態、投入量、焙煎の回数など毎回条件が異なる「焙煎」では安定したコーヒー豆を仕上げることはできません。ましてそれが風味豊かなスペシャルティコーヒーとなればなおのこと。

「焙煎中の豆の変化を見る」とは「会話する相手の顔を見る」ということです。焙煎時間と温度の変化を重視して豆の変化をそれほど気にしていない人は、人との会話をマニュアル本通りに対応しているようなものです。一見噛み合っているようだけどどこかずれている。そんな感じでしょうか。

豆の変化を見て、豆が発する香りをチェックしていると「表面だけ水分が抜けている」「表面と内側の水分が抜けている」のほか、飲んだ時に感じられるフレーバーや甘さなどが香りで感じられます。よいものばかりではなく、そうでないものも感じ取ることができます。いつもと異なる変化も焙煎中に気づき、その場で対応することができますからミスバッチも減ります。

けどそれはただ何回も何回も繰り返しやっていれば身に着けられるものではなく、知っている人とやることで少しずつ理解できるものだと思います。ある程度理解することができるようになると、そこからは自分一人でセルフビルドできるようになります。

ですから初めのうちはできる人と一緒に焙煎し、味をチェックすることが大切だと思います。

仮にそれができる人が近くにいないなら、複数の人と同じ生豆を焙煎し、どうやって焙煎したか、コーヒー豆がどんな変化をしたときにどんなことをしたのか、という所感を話し合うことができる機会をたびたび作るとよいと思います。それは今ならオンラインでも可能でしょう。

焙煎は一人でコーヒー豆と向き合うものですが、成長するためには一人でも多くの人たちとオープンに意見を交換していくととても楽しく、また一人では気づけない発見があると思います。

焙煎、楽しいですよ。

焙煎したコーヒー豆を誰かにプレゼントして、それを「おいしい」なんて言ってもらえたたすごくうれしいですよ。自分で豆の変化を見て焙煎したものですから。

私は今でも自分で焙煎したコーヒーを「おいしい」と言ってもらえるととてもうれしいです。自分のやった成果を、誰かが喜んでくれることってとても嬉しいですね。これが私の「焙煎する喜び」です。

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ナカジ
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