『比叡颪』(短歌連作10首)
間違って口づけをした帰りみち月は間違いなく丸かった
凍みながら比叡おろしの風花に祝福されてほほ笑むふたり
結い上げてはる別嬪が背を向けてほどく刹那に丹頂が翔ぶ
損をする気がして五回温泉に入る性根に何も効かへん
私だけこだまが返らへん冬の比叡山には二度と行かへん
ささやかに咲いて淋しい冬の薔薇きのうの夜の些細な喧嘩
週末の京都タワーは人波に浮かぶあなたを照らす灯台
愛したらあかんあなたが棲む星と四万フィート離れて眠る
編み上げたペアのマフラー一本は彼にもう一本は彼方に
簪 ノ 蝶 ガ 春 一 番 ニ 乗 リ 烏 丸 通 七 条 上 ル