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記事一覧
『Green Slumbers』
草色のストール揺れて図書館の隅のテーブル君はまどろむ
(竹内亮)
頬杖でささえきれないまどろみの向こうであなたは数式を解く
(鈴木美紀子)
まどろみはほほえみに似て凍りつくどこへも行けぬ夢の魚たち
(倉阪鬼一郎)
目覚めたら喉が渇いていてだれも魚の頃の話をしない
(鈴木晴香)
一日の終をまどろむわたくしに今日を生き抜くわたくしが過ぐ
(中畑智江)
肉体を疲れに浸けて眠るまで壁に
『詩歌の卵』(浮遊式鶏卵輸送法)
砂利道を全力で漕ぐ前カゴの卵パックを宙に浮かべて 自転車で行った買い物の帰り道で、パック入りの生卵が割れてしまうことがたまにある。
安売りの卵は必然的に容器も安物だから仕方がない。
仕方がないのだが、今は夏だ。
夏だから熱気に直に触れた生卵は、すぐに腐ってしまう。
腐ってしまうのはつらいから、割れた生卵をその場で飲む。
一個ならいいのだが三、四個割れるとさすがにきつい。
卵が割れてし
八月の隠しポケットから軍歌
文月の花火は咲いて散りながら葉月の加藤法子を鳴らす
父の日の父川べりに犬といる
八月の隠しポケットから軍歌
どの風も風鈴にきてよく喋る
羽抜鶏にもたぶんある盆の窪
振り向かぬためにある蜥蜴の尻尾
補陀落の見える辺りに梅を干す
話しても解らぬ人に林檎擂る
青りんご父を好きだとまだ言えぬ
加藤法子