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隠しポケット

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伝えたい本音を折って仕舞っとくそこそこ目立つ隠しポケット
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『裏新人賞』#2

『裏新人賞』#2

 確実にだれも待ち望んでいない私的な賞の発表をするのは、本当に烏滸がましいのですが慣例なので、今年も裏短歌研究新人賞を発表させていただきます。

短歌研究九月号に掲載されていた全首を全身全霊込めて読んだのだけは事実ですのでどうかお許し下さい。

 今回の新人賞はあくまでも目にとまった一首のみでの選考であり、一首部門での受賞作品の決定をさせていただいております。

最終選考通過作のそれぞれの歌が素晴

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『Green Slumbers』

『Green Slumbers』

草色のストール揺れて図書館の隅のテーブル君はまどろむ

(竹内亮)

頬杖でささえきれないまどろみの向こうであなたは数式を解く

(鈴木美紀子)

まどろみはほほえみに似て凍りつくどこへも行けぬ夢の魚たち

(倉阪鬼一郎)

目覚めたら喉が渇いていてだれも魚の頃の話をしない

(鈴木晴香)

一日の終をまどろむわたくしに今日を生き抜くわたくしが過ぐ

(中畑智江)

肉体を疲れに浸けて眠るまで壁に

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小比賀 品男の東京下段 #0(2017.4.16)

小比賀 品男の東京下段 #0(2017.4.16)

いまはただあなたひとりの真っ白なカーテンとして夕焼けを待つ

(穂崎 円)

 晴れた日の午後の慕情の部屋だろう。

窓の向こう側にいる恋人を待っている心が、いちまいのレース編みのカーテンのように繊細で麗しい。

やわらかな夕陽を透かす刻が訪れたら、いっそう神秘的にそれは煌めく。

キャンバスへと丁寧に配置された言葉が詩を超えて、耽美な絵画の世界を描き上げている。

 2017年4月16日 東京歌

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『人心事故』

『人心事故』

 つい先日の日曜日に「秋の全国交通安全運動」の一環として、品川区の海岸通りと第一京浜国道あたりで、警視庁によるイベントが催された。

そこでは、ものまね芸人の福田彩乃さんが一日警察署長として、警察のパレード車輌の上から沿道に集まった高齢者や子どもたちに向かって、交通ルールの遵守を呼びかけていた。

一日署長といえば、たいていは夏に活躍したスポーツ選手や、秋の話題作の女優や、今年のヒット曲の歌手など

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『裏新人賞』#1

『裏新人賞』#1

 短歌研究の9月号をいただいた。

短歌研究新人賞発表号である。

ほとんど期待などしていなかったが、案の定あまり美味しくなかった。

相変わらずのレシピでは、味が変貌することはない。

 以前から思っていたことだが、やはり、短歌研究新人賞は賭博だ。

読者のうちの五百人が、応募票付きの冊子代の千円を出し合って用意した賞金をくじ引きで選ばれた優勝者に授与するようなイメージ。

まあ多くの歌誌はもち

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『ニトリ石狩花火大会』

『ニトリ石狩花火大会』

 幼馴染みの美帆ちゃんは、お金持ちの家のお嬢ちゃんだから、悩み事なんかひとつもなくて、子どもなのにスラっとしていて、ママと一緒にエステに行って、お肌の手入れなんかもしていたから、とっても美人だったけど、あまり賢くはなくて、天真爛漫というか、いつだって無邪気だった。

 あの日わたしたちは、ニトリモールのダイソーで盛りだくさんの花火セットと、青色と緑色の縄跳びを買った。

それなのに近くの河原にも途

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『詩歌の卵』(浮遊式鶏卵輸送法)

『詩歌の卵』(浮遊式鶏卵輸送法)

砂利道を全力で漕ぐ前カゴの卵パックを宙に浮かべて 自転車で行った買い物の帰り道で、パック入りの生卵が割れてしまうことがたまにある。

安売りの卵は必然的に容器も安物だから仕方がない。

仕方がないのだが、今は夏だ。

夏だから熱気に直に触れた生卵は、すぐに腐ってしまう。

腐ってしまうのはつらいから、割れた生卵をその場で飲む。

一個ならいいのだが三、四個割れるとさすがにきつい。

 卵が割れてし

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八月の隠しポケットから軍歌

八月の隠しポケットから軍歌

文月の花火は咲いて散りながら葉月の加藤法子を鳴らす

父の日の父川べりに犬といる

八月の隠しポケットから軍歌

どの風も風鈴にきてよく喋る

羽抜鶏にもたぶんある盆の窪

振り向かぬためにある蜥蜴の尻尾

補陀落の見える辺りに梅を干す

話しても解らぬ人に林檎擂る

青りんご父を好きだとまだ言えぬ

加藤法子

虫武一俊  第一歌集『羽虫群』

虫武一俊  第一歌集『羽虫群』

舞う虫が織り成す闇と光との秀逸な対比のレトリック

よれよれのシャツを着てきてその日じゅうよれよれのシャツのひとと言われる

鴨川に一番近い自販機のキリンレモンのきれいな背筋

この夏も一度しかなく空き瓶は発見次第まっすぐ立てる

立ち直る必要はない 蝋燭のろうへし折れていくのを見てる

虫武一俊 /『羽虫群』

実を申しますとこの第一歌集には過度の期待はしていませんでした。

何故なら私は著者の

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