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西中島東鳥
2017年8月26日 06:16
男と女横断歩道の真ん中で落ち合い男の来た方へ歩く(吹田 エース古賀) 約束の待ち合わせ場所が横断歩道の真ん中ということは、なかなか考えにくい。そうなると様々なストーリーが浮かんでくる。本来の待ち合わせ場所に先着していたのは男だったということだろうか。果たしてどのくらい待ったのだろう。しびれを切らして帰る途中の横断歩道かもしれない。男はまた同じカフェに戻るのだろうか。メアリと魔女の花の上映時
2017年8月19日 18:11
左胸につけているけど本当にそれはあなたの名前でしょうか(東京 榛 瑞穂) 現代のネット社会では多くの人がニックネーム、ペンネーム、ハンドルネーム、アカウントネームなど、本名とは別に様々な異名を有している。ブログとツイッターとインスタグラムが、それぞれ違う名前だったりもする。区役所ならほぼ間違いないだろうが、オフ会のイベント会場のスタッフの名札だったらどうだろう。年齢や性別を超越したまま繋が
2017年8月12日 07:17
注いでと妹は笑むグラノーラ掬いし両の手を差し出して(船橋 細川遥史) 倒置された初句から察することができるのは、何らかの液体を求めていることだけだ。そして妹、グラノーラ。しかし器が出てこない。やっと出てきたのは両手。はいどうぞ、とその両の手に牛乳を注ぐことなんて出来ない。出来ないけれど歌には出来る。充分なほどミネラルや鉄分が含まれている作品だ。笑っている妹がまぶしいほどの輝きに満ち溢れてい
2017年8月5日 08:54
化粧品売り場を君と歩くとき何も知らないオレだと思う(仙台 工藤吉生) コスメフロアを舞台に男性目線で書いたロマンスのワンシーン。その心理描写は読者に委ねられている。化粧品売り場は大抵デパートの一階にあるから目的のフロアへ向かうために必然的に通ってしまう。だけどそのたびに何故か、後ろめたさを感じてしまうやっかいで不思議な空間だ。つまり男性は、どんなに綺麗な美容部員の女性がいても、どんなに甘美