見出し画像

24時間スーパー 深夜便 「行方不明」



 夜中1時過ぎ、「む、娘が帰ってこないんです!」と、オロオロと涙ながらに店に飛び込んできた御婦人。その後には、その御主人。

 「〇〇〇〇(娘さんのフルネーム)です!〇〇〇〇です!アルバイトの〇〇〇〇です!」
 
 「高校生の○○○○です!」
 
 「知りませんか!」
 
 「いつも夜10時半に駅に着く電車で帰って来るので、駅まで迎えに行ってたのに、今日に限って駅から出て来なかったんです!」
 「誘拐でもされてたら…。あぁ……。」

 親御さんの心配は最もだ。世代的には、昭和63年~平成元年にかけて起こった、東京綾瀬の「女子高生コンクリート詰め事件」をリアルタイムで知っている世代。被害者の女子高生と同世代。

 名古屋市の「大高公園アベック殺人事件」も昭和63年に起き、被害者の二人は旧大山田村(現伊賀市)の山林に埋められた。

 
 
 早口で矢継ぎ早に話す御婦人に、

 「落ち着いて下さい。落ち着いて下さい。」
 
 「御心配なのは解りますが、僕らは深夜勤なので、その子とは時間が被らないんです。ですから、その子がどんな子かわからないんです。」

 「今、僕らでは何とも出来ないので、まずは、警察の方へ行って、事情を話してもらえませんか。」

と、話すと、

 「解りました。警察へ行ってきます。」と、御主人さんが言って、オロオロする奥さんをなだめながら、店を出て行った。


 午前3時頃、警察官が到着。

 「防犯ビデオを見せて下さい。」

 「見方解りますか?」

  「ええ、たぶん。他の店で見たことあるので、解ると思います。」

との返事。

 
 その日、同じシフトのベテランさんの話だと、店長とは話が付いており、「防犯ビデオを見てもらって」、とのことだったそう。

 防犯ビデオを見終わった警察官は、午前5時前に帰った。


 数日後、シフトが被ったそのベテランさんに、事の顛末を聞いたら、「スマホの充電が切れたまま、友達の家に寄っててんて。」


 「親に連絡せんのか〜い!」



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?