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ことり

先日

保育園から帰ってきた息子(3)が
帰宅して早々
深刻な顔で騒ぎ始めた



「きのう遊んでたことりのおもちゃがない」


え、小鳥?


僕は彼が小鳥のおもちゃを
持っているのを見た覚えがない



しかも普通の鳥ではなく小鳥?
スズメとか?



彼が小鳥と鳥を区別しているとも思えない


深まる謎



ひとまず
目撃者の証言を集めるため



お姉ちゃん(6)に
それがどんなものか知っているか聞いてみる
(いろんなことをよく見ており詳しい)


知らん
と答える(6) 


僕は直感した




これは非常に厳しいヤマになると



情報は
必ずしも信用に足るとは思えない
紛失被疑者(3)の証言のみ



そもそも
小鳥のおもちゃなどない可能性すら残る


さらに

時間をかければ
わめき出すリスクもある



被疑者を刺激しないよう
慎重を期す必要があった



同日、リビングに
ことり紛失事件捜査本部を設置



麻薬取締官

通称:マトリ




のおそらく隣の席


小型玩具紛失取締官



通称:コトリ


が動くレベルの案件



(3)に対し
任意で事情聴取を実施




捜査員「どれくらいの大きさ?」


(3)「こーんなくらい」
両手で非常にあいまいな楕円を作る

直径5cmほどか


なるほど
大体の大きさは分かった


捜査員「なに色?」


(3)「グレー」

怪しい



「グレー」は彼が最近
色の名前として覚え、多用する言葉の一つ


灰色=グレー
には必ずしもなっておらず



なにかしら色の話題が出ると
とりあえずグレーと答えている節がある


この間、(6)が抱えていた
ホワイトタイガーのぬいぐるみの色を
グレーと言っていた




ご丁寧に
名前にホワイト付いてんのに


マクドナルドのポテトもグレー


しかし今
そのことを指摘すれば
被疑者を刺激し

興奮状態に陥ることで
最悪の結果を招く恐れがある


ここは穏便に捜索を進めるため
「そうか」とだけ答え

敢えて指摘せずにおく





これぞグレーゾーン



しかし必死の捜索にも
そのようなものは見つからない


すると突然、適当な事を言う
参考人(6)
「そのへんの道に落としたんちゃう?」




僕は思った
「やめろ!被疑者をいたずらに刺激するな!」




そして冷静を装い答える
「いや、家からは持って出てへんと思うで。なあ(3)」


(3)「うん」



まずい




唇がとんがり始めている


捜査員の焦りだけがつのる





レインボーブリッジ封鎖できない
織田裕二の心境を理解した





織田裕二の様な顔をしつつ
藁をもすがる思いで
室井管理官
嫁に尋ねる



捜査員「(3)が小鳥のおもちゃがないって言ってるねんけど知らん?」




心当たりのありそうな管理官は

眉間にシワを寄せ少しの間考える



大丈夫や管理官は何とかしてくれる

十中八九、
小鳥の置き場所も知ってると思われる





室井「なにそれ」


クッソ頼みの綱が



捜査が振り出しに戻った



そうこうしている間に

「ことりが無い」と
大きな口を開け
大声で泣き始める(3)


なだめようとするが不可能



室井さぁん



唇が封鎖できません





しかしこうなっては仕方ない

被害が拡大する前に
押し留めなければならない



捜査員「わかったわかった。もし頑張って探しても
どう〜しても無かったらまた買いに行こ」


少し泣き止み、うなづく(3)


「その小鳥どこで買ったん?ママと買いに行ったんか?」





(3)「しらん」


は?


ひとりでに
現場に迷い込んだ小鳥の可能性さえ浮上



嫁が夕食の準備をしている間中

見たこともない小鳥を探す

そう


「ことり」
「グレー(じゃないかも)」
「5cmの楕円」


という情報のみを頼りに
小鳥を必死に探しておきながら


実は何を探しているのかよく分かっていない



まるで真っ暗い密林を8日間
丸腰で彷徨っているかのような感覚


ターザンでも絶望するシチュエーション


そうこうしているとその時

部屋の隅でしゃがみ込み

何やらゴソゴソしていた(3)が
立ち上がって叫ぶ


「あったー!!!!!」




喜ぶ被疑者の足元には



客が購入したいブツを
スーパーなどの売人との間で
金を使って取り引きする際に用いる
専用のマシーン



以下証拠資料




Model:ANPANMAN


回収した現金を保管するための引き出しが開いている



奴め
ここに小鳥を隠していやがったのか


見つけられる訳ないやんそんなん



疲弊した捜査員をあざ笑うかの様な微笑みを見せる
アンパンの男



しかしそんなことよりも
小鳥の姿が気になる


捜査員「あぁ良かったなー。小鳥ってどんなん?見せて?」

見せてくれたのがこれ




え?


見つけられる訳ないやんそんなん
(デジャブ)


やはり長年の捜査で培った勘が的中

グレーでも小鳥でもない


しかしちょっと笑ってしまった



その時


参考人(6)が突然口を挟む



「ぜんぜん小鳥ちゃうやんけ」 




「それ、ポテラノドンやんけ」



そうこうして無事


ポテラノドンの捜索を終えることができた



解散

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N氏
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